2011年 11月 07日

インバウンドって何? (このブログの目的 その1)

近ごろときどき耳にするけど、「インバウンド」って何のこと? 

海外からの外国人の訪日旅行を促進し、経済効果を手に入れようという官民の一連の取り組みのことをいいます。もともと観光産業が使っていた専門用語で、日本人が海外旅行に行くのをアウトバウンドというのに対し、外国人が日本に旅行に来るのがインバウンドです。その際に生じる外国人による消費マーケットを拡大していこう。彼らの消費は日本の渋りがちな内需の成長に貢献してくれるからです。

とはいえ、インバウンドに関連する業界は、宿泊施設や運輸交通といった観光産業だけではありません。小売や流通、金融、情報通信といったサービス産業に、エンターテインメント産業、さらには製造業や不動産業、国・地方自治体まで広範囲にわたるのが特徴です。外国人が日本に外貨を落としてくれるという意味で、実は輸出産業の一形態ともいえるでしょう。来日した外国人が目に触れる日本の姿そのものが、メイド・イン・ジャパンのショーケースになっているといってもいいかもしれません。

世界にはたくさんの国・地域がありますが、とりわけ人口が膨大で経済成長著しい中国本土客の訪日に力を入れていこうという意思を込めたのが「中国インバウンド」ということばです。

中国インバウンドについて「低迷する日本経済を救う」などとおおげさに世間を煽る向きもある一方、その効果を訝しがり、受け入れを歓迎しない声もあります。それでも、少子高齢化や地方経済の疲弊で縮小する内需を補う存在として、海の向こうから日本を訪ねてくれる外来消費者をうまく取り込んでいこうというコンセンサスは、国民の間でもある程度共有されてきたと思います。なぜなら、グローバルな観光人口の動向を見る限り、日本の近隣諸国である東アジア経済圏の旅行マーケットは成長基調にあり、そこに希望を見出すのは自然の流れといえるからでしょう。

ただし、今日の問題は、いかに彼らを取り込むかをめぐって各方面で大いなる迷走が見られることでしょう。要するに、思うように成果があがっていない。現状がいまどうなっているのか。なぜ思い通りにいかないのか。関係者らの間でも、どこまでその要因が把握できているのかあやしい。また仮に取り込めたとしても、経済効果とはほど遠く、地元に利益が還元されることはほとんどないのが実情ではないでしょうか。

中国インバウンドがうまくいかない理由のひとつとして、日本式のマーケティングやプロモーションといったルーティーンな手法に頼りがちなことがあると思います。なぜなら、中国人観光客というのは、日本人と同じような旅行をするわけではないからです。我々とは異なる中国の消費マーケットの特性を理解することは簡単ではない。ところが、関係者の多くは、日本とはどこがどう違うのかについて厳密に精査することを無意識のうちに避けてきたところがあるのではないでしょうか(一部の切実に受けとめた人たちはともかく、きっと大半の人たちが本気じゃなかったんじゃないかな)。

インバウンド市場の健全な発展のためには、日本側は受け入れ態勢さえ整備すればいいという話ではないし、中国側も客を送り出せばそれですむということではありません。そもそも両国は政治体制や法制度が異なり、ビジネスの考え方も驚くほど違います。単にモノを売り買いするだけでなく、人の往来が関わってくるだけに、日中のビジネス運用上の齟齬がもたらすいろんな問題が起きています。

ここ数年、ぼくは中国インバウンドの現場やモノ・ヒト・コトの動きを観察してきました。また年に数回は中国に足を運び、中国側の関係者に会い、事情を聞いています。そこで目の当たりにするのは、中国が日本人にとって強烈なアウェイであるという現実です。

短絡的なメディア・行政・業界批判をするつもりはありませんが、表向き語られていることと実態がなぜこれほど違うのか。どうすればこの状況を少しでも変えていけるのか。関係者の声や知見を交えながら、多くの方にことの次第を理解してもらうことを第一義に考えています。

そのためには、中国インバウンドの実態面を日中双方向から見ていかなければなりません。このブログでは、複眼的な視点から中国インバウンドの行方を追いかけながら、ときに応じて発言していきたいと思います。

※実はこのエントリーを書いた当時、本ブログのタイトルは「中国インバウンド“参与観察”日誌」でした。その後、中国だけ見ていては全体像がつかめないと判断し、現行のように変更したのです。観察の対象を広げただけで、基本的なスタンスは変わっていません。
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by sanyo-kansatu | 2011-11-07 16:39 | このブログの目的 | Comments(0)


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