ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2011年 11月 16日

中国政府が知らないアニメ消費の実態 (国際マンガサミット北京大会2011報告 その6 )

これまでマンガやアニメの作り手や産業側の事情ばかり見てきましたが、そもそも中国のマンガとアニメの消費者とはどのような人たちなのでしょうか。

その主役は、ズバリ「80后」「90后」世代です。そろそろぼくをアニメフェアに誘ってくれた北京の友人を紹介しましょう。

彼女は1986年北京生まれ、日本アニメファンの劉陽さんです。北京語言大学日本語学科卒で、今年で社会人3年目。学生時代からアニメイベントに参加し、声優のアフレコ大会で優秀賞に選ばれたこともあります。
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劉陽さん

彼女の勤める中国企業の上司が日本人で、その縁で知り合ったのですが、初めて会ったとき、いかにもアニメおたくといった雰囲気に苦笑したことを思い出します。本人も自分のことを「宅女」(日本でいう腐女子)といいます。好きなアニメは『夏目友人帖』(白泉社 テレビ東京)だそうで、日本のかわいらしいお化けの存在に興味を持ち、大学の卒論のテーマは「21世紀の日本アニメにおける妖怪観-『夏目友人帖』を中心として」というものでした。彼女の卒論を一度読ませていただいたことがあるのですが、しっかりした日本語で、さまざまなシーンに登場する妖怪の特徴を分析したものです。もともと『ゲゲゲの鬼太郎』も大好きだというので、今回一緒に鳥取県のPRブースを訪問しました。
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劉陽さんの好きな『夏目友人帖』。中国のお化け(鬼)は怖いものと決まっているのに、なぜ日本のお化けはかわいいのか? という疑問が卒論テーマを決めるきっかけだったとか

実は、彼女以外にも何人かぼくに付き合ってくれる若い友人が中国にはいるのですが、彼らとの交流を通して見えてくるのは、前述の国際会議などでは語られない中国のマンガ消費の実態です。概ね以下のようなことがあると思います。

①日本マンガの正規の翻訳本がかなりマニアックなものまで出版されている
②中国のアニメファンの間で日本の声優が人気
③すでに民間でコミケの活動が始まっている
④日中文化交流を掲げるファンが運営する民間イベントも開催されている
⑤中国にもおたくが急増中

最近、中国の書店のマンガコーナーに行くと、日本マンガの正規の翻訳本をよく見かけるようになりました。なかにはかなりマニアックと思われる作品まであります。なぜそのような翻訳本が出版されるかといえば、中国の若者たちが違法ダウンロードサイトを通じて日本の深夜アニメを視聴しているからで、ネットがPR効果を生んでいる面は確かにあるといえそうです。
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「四畳半神話体系」(2010年 上海人民出版社)

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「鴨川ホルモー」(2010年 上海人民出版社)

ネットによるリアルタイムで大量の日本マンガ&アニメ情報が流通することから生まれたもうひとつの面白い現象として、日本の声優人気があります。おそらく日本語学習と関係があるかと思いますが、中国のアニメ雑誌では日本の声優の人気ランキングもあるほどです。とかく顔が見えないといわれる日本人ですが、雑誌のインタビューやブログなどで語られる声優の生のコメントを通して、日本の最新の流行や生活文化が中国の若者に伝わっているという面があります。日本でも同じですが、きっと中国のアニメファンにとっても声優は芸能人に比べ身近な存在に思えるのでしょう。
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アニメ雑誌では声優の人気ランキングもある

こうした人気から、日本の声優を中国に呼ぼうという中国のファンが主催する民間アニメイベントも、北京や上海などではよく行なわれています。たいてい日中文化交流を掲げる大学の自主サークルが運営するもので、日本人留学生が支援している場合が多いようです。日本の俳優やアーチストを呼ぶギャラは用意できないけど、声優ならなんとか呼べそう、という経済的な事情もあるようです。
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日中アニメ漫画文化交流団体の「次世代文化と娯楽協会」のイベント


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北京の清華大学の日中友好アニメ漫画文化祭


定番メニューは、日本から呼んだ声優との交流会やアニソン歌合戦などです。今回のアニメフェアは政府主催によるイベントだったせいか、同人誌販売はあまり見られませんでしたが、民間主催のコミケは規模はぐっと小さくなるとはいえ、2004、5年頃から各地で開かれています。

こうして日中の若者の文化的な距離が縮まることで、当然というべきなのか、中国にもおたくが急増しているようです。中国のおたくの世界については、彼らが掲示板でやりとりしている話題を紹介した百元龍羊さんの『オタ中国人の憂鬱-怒れる中国人を脱力させる日本の萌え力』(2011 武田ランダムハウスジャパン)に詳しいですが、日本のおたくとはまた一味違う独特の世界があります。

以下は、同書の帯のコピーです。

オタ中国人(中国宅)激増中。「孫がウルトラマンばかり見ている。せめて中国製アニメを見てくれ…」と嘆く温家宝首相。オタ中国人は語る。「日本は大嫌いだけど、オタク文化は大好き!」「日本には三種の神器がある。それはスクール水着とブルマ、セーラー服だ!」。
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by sanyo-kansatu | 2011-11-16 10:31 | アニメと「80后」の微妙な関係 | Comments(0)


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