ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2012年 12月 30日

北朝鮮 羅先観光の現在

「週刊東洋経済」に書いた北朝鮮・羅先(羅津・先鋒)経済貿易特区訪問記(2012年6月下旬)の補足情報。その2。

今回参加した朝鮮国際旅行社による延辺発羅先行き1泊2日ツアーの訪問地は以下のとおり。基本的に中国人客も我々その他外国人も同じルートをたどることになる(中国のマイカー軍団も同じルートを自家用車で走る)。

【1日目】
●国際商品展示会(北朝鮮産品の外国人観光客向け臨時販売所となっている。常時開かれているわけではない。日本海の蟹や昆布などの海産物、地酒、工芸品、平壌医科大学の漢方薬のブースあり)

●金日成花温室(ベコニアを改良した金日成花の植物園)

●羅津駅(1935年開通。ただし、車で駅舎の前を通り過ぎるだけ。正面に金日成の肖像画あり)

●羅津港(1936年開港。3つの埠頭がある。ここ数年、中国は石炭2万トンを上海に向けて数回積み出したが、羅先市内の道路事情や中朝間の鉄道輸送に支障があり、今春以来再開されていない)

●羅先市美術展覧館(朝鮮労働党のプロパガンダポスターや風景画などを展示販売)

●外国文書店(外国人向けに朝鮮事情を紹介する書籍や地図類を販売。日本語版もある)

●南山旅館(旧羅津ヤマトホテル。1939年開業。昭和モダンの風格)

●羅先劇場(地元少年少女による歓迎の舞踊公演。公演前には金日成主席の前でお約束の記念撮影がある。その日、羅先を訪問した外国客約400名全員が集められた。大半が中国人で日本人以外はフランス人グループのみ)

●琵琶旅館(宿泊先。以前金日成・正日親子が別荘とした客室あり)

【2日目】
●エンペラーホテル&カジノ(香港資本で99年開業。2004年延辺の地方政府幹部が公金を使い果たす事件が発生。カジノが一時撤去されたが、07年再開。顧客の99%は中国人。従業員の多くは北朝鮮人だが、一般人民は入館禁止。ミャンマーやベトナムの国境地帯にある中国人専用カジノと同様の存在のようだ) 

●琵琶島遊覧船クルーズ(オットセイの棲息地へ。遼寧省から来た中国団体客と同乗)

●琵琶島海水浴場(夏場に極東から訪れるロシア庶民向けリゾート地)

短い日程だったが、いくつかの発見があった。1987年に解禁された北朝鮮観光の当時の様子について、作家の関川夏央は「銅像やら革命史跡やらがある点から点へと『団体旅行』で引きまわされる」(『退屈な迷宮-「北朝鮮」とは何だったのか』(1992))と書いているが、今回そのような場所には行かなかった。なにしろ金日成率いる朝鮮人民解放軍上陸を記念した先鋒革命事績館が国際商品展示会に転用されていたほど。現在、先鋒に中国資本の観光客向けショッピングセンターが建設中だ。

朝鮮戦争や古代史をめぐる中朝の歴史観の確執から、中国客は北朝鮮側の展示を好まない(中国側の旅行業者の話)というが、革命史跡をあえて外すという北朝鮮ツアーの変質は、97年以降海外旅行が解禁された中国人の大量入国の影響もあるのではなかろうか。

その数、年間2万人という(あくまで観光客。ビジネス渡航は別)。実は、ヨーロッパからの観光客もほぼ同じ数だけいるらしい(これは後日、北京の高麗旅行社に確認したところ、誤りと判明。ヨーロッパ客は年間約4000人とのこと)。

なにしろヨーロッパの大半の国は北朝鮮と国交を結んでいる。主要国で結んでいないのは日本とアメリカくらいか。北京にある英国人経営の旅行会社が催行するツアーが人気だという。やはりヨーロッパからみると、安全保障は現実問題として遠い話であり、純粋にツーリズムの観点から「神秘の国」というイメージがあるのだろう。この点については、今度調べてみたい。

前書記の死去にともなう政権交代を機に、2012年上半期において多くの日本のメディアが北朝鮮入りを促され、平壌を中心とした同国の改革開放の進展ぶりを報道したが、ミサイル発射騒動で事態は逆戻りするのか。今後の成り行きが気になるところだ。

上から国際商品展示会、中国人マイカー軍団、金日成花温室、羅津駅、羅津港、羅先市美術展覧館、外国文書店、南山旅館、羅先劇場前の記念撮影、舞踊ショーと終演後、舞台に乱入する中国人観光客、琵琶旅館、琵琶島遊覧船クルーズ、エンペラーホテル&カジノ、琵琶島海水浴場。撮影は佐藤憲一さんです。
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by sanyo-kansatu | 2012-12-30 06:41 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)


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