2013年 02月 14日

定点観測ツアーバス調査のまとめ(中間報告)

2月13日、「二水会」という観光関連の交流会で、お話をすることになりました。幹事の方から「中国インバウンドの話をしてください」といわれていたのですが、日中関係が政治的に緊張するさなか、大局的な意味での今後の展望などぼくにはできるわけありませんし、そもそも3月の習近平政権の本格的始動で、再びどんな揺り戻しがおこるかわかりません(いまは北朝鮮核実験の直後で、中国政府も日本に対する挑発を一時的に緩めているだけかもしれません)。

その一方で、昨年秋の尖閣問題再発以降、新宿5丁目に現れるバスはめっきり姿を消していたものの、1月下旬ころから徐々に姿を現わし始めていました。中国からの団体ツアーは数は少ないながらも、動き始めていたのです。さらに春節期間中、とくにそのピークと思われる13日、新宿5丁目および歌舞伎町界隈にはインバウンドバスを多く見かけました(さすがに、2012年、11年、10年とこの3年間の春節に比べるとその勢いは控え目だったとはいえますが)。

いうまでもないことかもしれませんが、中国の民間レベルでは、政治向きの話とは違った動きが起こるものだということをあらためて実感します。

さて、そんなわけで、「二水会」では、日中間の大局の話とは真逆のミクロな世界――再び姿を現し始めた中国ツアー客の動向や実態についてお話しすることにしました。そのうえで、ふだん定点観測している「新宿5丁目中国ツアーバス路駐台数調査」の2011年11月~13年2月までのデータをこの機にまとめてみようかと考えました。以下、「定点観測ツアーバス調査のまとめ(中間報告)」ということで、お話しをするために用意したレジュメとメモを記すことにします。

新宿5丁目ツアーバス路駐スポットから見る中国インバウンドの現在   2013.2.13

ぼくの事務所は、東新宿にあります。そのすぐそば、新宿5丁目にある伊勢丹パークシティをはさんだ明治通り沿いは、中国客を中心にアジアからの団体ツアーが歌舞伎町散策と夕食をとるために訪れる、知る人ぞ知る「インバウンドバス路駐スポット」です。

仕事帰り、ぼくは毎日そこを通るので、以前からたまにバスが何台停まっているか、カウントしたりしていました。暇なときには、運転手さんに声をかけて、中国のどの省から来た人たちか。何人くらいのどんなツアーなのか、尋ねることもあります。

2011年11月以降、ツアーバスの路駐台数をカウントしてブログに載せることにしました。実際、中国客が大挙して来日した2010年、12年の夏は多い日には5~7台も停まっていましたが、尖閣問題が再発した2012年の秋以降はほとんど見かけません。

こうしたミクロな世界から見えてくる中国インバウンドの現在を、今回は報告します。

【MEMO】
●調査のきっかけ(定点観測-新宿5丁目中国ツアーバス路駐台数調査)

・2010年4月東新宿に事務所移転。通勤途上の横断歩道で中国団体客に遭遇。いったい彼らは何者か?
・伊勢丹パークシティ前――ツアーバスの路駐スポット(都心の駐車場不足問題と関連) 
・東新宿という場所――都内におけるホテル集中地区のひとつ。ただし、西新宿と違い、宿泊特化型ホテルが多い。近年新規オープン多し。実際、欧米系、アジア系のFITの姿を多く見かけるエリア。 
・中国客専用中華食堂の存在(「林園」「馥園」) 

一般にメディアでは中国インバウンドの話題は小売店で中国客が見せる購買実態と結び付けられて語られることが多かったが(とくに2008年以降)、彼ら旅行者の視点に立てば、滞在中のすべての「体験」が「日本」を評価する対象になる。リピーターもそこから生まれる。そこで、この定点観測では、ひとまず日々の路駐バス台数をカウントするのを基本としながら、ときに運転手やガイドなどにも話を聞くことで、日本ツアーの実態を探ることにした。

●経過 2011年11月~13年2月

震災の影響未だありか(ツアーバス路駐台数調査 2011年11月)
回復の兆し見える(ツアーバス路駐台数調査 2011年12月)
春節つかのまのバスラッシュ(ツアーバス路駐台数調査 2012年1月)
すっかり姿を消す(ツアーバス路駐台数調査 2012年2月)
あいかわらずバスは来ず(ツアーバス路駐台数調査 2012年3月)
花見のピークにバスも過去最多(ツアーバス路駐台数調査 2012年4月)
ついに中国専用食堂に潜入(ツアーバス路駐台数調査 2012年5月)
ほぼ毎日バス来訪(ツアーバス路駐台数調査 2012年6月)
バスの数目立って増加(ツアーバス路駐台数調査 2012年7月)
都心に駐車場がない問題(ツアーバス路駐台数調査 2012年8月)
尖閣問題再発(ツアーバス路駐台数調査 2012年9月)
国慶節もバス現れず(ツアーバス路駐台数調査 2012年10月)
昨年に比べさびしすぎる(ツアーバス路駐台数調査 2012年11月)
ちらほら現れる(ツアーバス路駐台数調査 2012年12月)
南湖国旅のバス現る(ツアーバス路駐台数調査 2013年1月)
春節くらいはこうでなくちゃ?(ツアーバス路駐台数調査 2013年2月)

●中間報告(わかってきたこと・考えたこと)

・この1年数か月の日中関係の変転とツアーバス台数には、当然のことながら、強い相関関係がある。
・12年4月(桜シーズン)と8月(夏休み)は過去最多→12年の訪日中国人数143万人はこの時期稼いだことがわかる。
・ここに来るのは初来日のゴールデンルート組。ツアーの実態は「弾丸バスツアー」→中国旅行会社のHPでツアー造成状況がチェックできるため、検証可能(やまとごころ連載18回で報告します)。
・ここには市場の成熟度が進んだ上海客はいない(と思っていたが、そんなことはないようでした→ツアーバス調査2013年2月参照)。多くは、広東省を筆頭に一級都市かたまに二級都市の住民。そのせいか、ある友人が新宿5丁目で中国客に遭遇したときのことば―「なんだ、(連中、金持ってるというけど)ただの田舎モンじゃないか」―も一般の日本人の目から見れば無理もない面もある(中国人は一般に海外旅行だからと着飾ったりしないし、そもそも「弾丸バスツアー」の乗客である。ファッションにうとい中高年が多いので、洗練された印象はまずない)。

(参考)
一級都市:北京、天津、沈阳、大连、哈尔滨、济南、青岛、南京、上海、杭州、武汉、广州、深圳、香港、澳门、重庆、成都、西安
二級都市:石家庄、长春、呼和浩特、太原、郑州、合肥、无锡、苏州、宁波、福州、厦门、南昌、长沙、汕头、珠海、海口、三亚、南宁、贵阳、昆明、拉萨、兰州、西宁、银川、乌鲁木齐

訪日中国客とひとくちで言っても、143万人のうち、商務・公務旅行や親族訪問、留学生など、観光以外の目的の渡航者も3~4割はいる。また観光目的でも、近年個人ビザ取得者が増えている。

それでも、全体でみれば団体ツアー客の比率はまだ高いといえる。中国にはまだたくさんの潜在的な「初来日組」がいることは確か。

である以上、もし訪日客数を稼ぎたいのであれば、この層を増やすのが手っ取り早い。でも……それでいいのか?

なぜなら、中国からの団体ツアーが抱えるふたつの問題があるからだ。これが、今回の「まとめ(中間報告)」の結論である。

①低すぎる日本ツアー価格の相場観の定着 ……中国では日本ツアーの価格は5000元くらい、という相場観が定着。「安かろう悪かろう」ツアーが蔓延した結果、日本という旅行先は、中国からみて実情以下に低く見積もられてしまった。残念である。

②ツアーのマンネリ化 ……現状では、定着しているコースは東京・大阪ゴールデンルート+北海道しかほぼない。

今後の課題は、それをいかに打破するか。

そのためには、こつこつとツアーのバリエーションを増やすことだろう。安いツアーがあってもいいが、現状のように「それだけ」では困る。なんとしても、従来にはない高価格のツアーを造成することで、価格帯の幅を広げることだろう。これからは単なる地域の観光PRではなく、どうやったら価格帯を上げることができるか、具体的な方策を考えなければならないと思う。
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by sanyo-kansatu | 2013-02-14 07:55 | 定点観測ツアーバス調査 | Comments(0)


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