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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 03月 24日

ドラマ『朱蒙』の物語が身近に感じられる五女山城博物館

五女山城の西門の登り口に、五女山城博物館があります。ここでは高句麗建国の歴史を中心にしたこの地域(中国遼寧省桓仁満州族自治県)の古代史を展示しています。
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紀元前37年に朱蒙がこの地に高句麗を建国し、34年に五女山城を築いたとあります。
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王宮の復元模型だそうです。韓国歴史ドラマ『朱蒙』の中に出てきた高句麗の王宮の規模や壮麗さと違ってえらく貧相なものです。五女山城の山頂で見た城門や住居跡の遺跡も解説しています。
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五女山城周辺では鉄の武具が多数出土しています。ドラマに出てくる朱蒙に最後まで忠実だった鍛冶頭モパルモを思わせるような蝋人形が展示されていました。高句麗の2番目の都である集安(中国吉林省)にある古代の墓室の復元模型も展示されています。
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五女山城博物館がオープンしたのはわりと最近のことで、2008年5月。『朱蒙』の放映より後のことです。五女山城の遺跡の発掘も1990年代の後半に始まったそうで、山頂までの石段を造り、遺跡跡を有料で公開するようになったのも2000年だとか。その後、2004年に五女山城は世界遺産の一部になります。

蓮池薫さんは『私が見た、「韓国歴史ドラマ」の舞台と今』(2009 講談社)の中でこう書いています。

「韓国で高句麗ブームに火がついたのは、もう一つの理由があった。

2002年から2007年にかけて中国社会科学院の辺疆史地研究センターが行った『東北辺境の歴史と現状系列研究工程』(以下、『東北工程』)と呼ばれる5ヵ年プロジェクトが韓国人を刺激したのだ。(略)中国人研究者たちは古代歴史に関する研究の結果として、『高句麗は独自の国ではなく、中国の一部であった』という結論を出したのだった」。

「高句麗が中国の一部だったという中国の公式見解は、漢民族と55の少数民族からできている多民族国家の現代中国の構図をそのまま過去に当てはめたもの、つまり少数民族を『大中国』の構成要素と考える現代の骨組みを遠い昔にそのまま適用したものなのだ。多くの学者たちは中国の『東北工程』が純粋な研究というより『中国が自国の領土と安定を維持するための行動』だったと考えている」。

このように韓国で歴史ドラマが盛んに制作された背景に、中国の「東北工程」への強い反発があったことを蓮池さんは指摘しています。

現地の旅行会社によると、五女山城のふもとにある桓仁には、毎年2~3万人の韓国人が観光に来るそうです。ドラマで朱蒙を演じた俳優のソン・イルグクも、この地を3回訪れたとか。それだけならいいのですが、2011年に高句麗史の研究者や運動家たちが来て、講演会を開き、会場で「東北工程」に反対するスローガンを掲げるという計画があり、それを事前に知った市の安全局が取りやめさせたということもあったそうです。

ぼくには中韓いずれも似た者同士で、「現代の骨組みを遠い昔にそのまま適用」しようと争っているようにしか見えません。北東アジアのナショナリズムは、古代史とのからみで火がつくところが特徴といえそうです。正直そんなことどうでもいいとぼくなどは思ってしまいますが、蓮池さんも書いているように、彼らの独特の歴史観に対して「相手の主張に従うということではなく、相手の主張に耳を傾け、その背景を知ろうとする姿勢が相互間に必要だろう」ということなのでしょう。

そのうえで、「相手の歴史観を知る上では、韓国の時代劇ドラマが素晴らしい『材料』になる」と蓮池さんは書いています。今回、五女山城を訪ねて、『朱蒙』の物語が身近に感じられたのは確かなので、本当にそのとおりだなと思ったものです。
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五女山城博物館 http://www.wnsjq.com

by sanyo-kansatu | 2013-03-24 11:27 | 日本人が知らない21世紀の満洲


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