ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 05月 04日

北京の朝鮮万寿台創作社美術館のアーティストたち

朝鮮万寿台創作社は、1959年に設立された北朝鮮の美術制作会社です。北朝鮮の水彩画や油絵、壁画、陶磁器などの美術品を制作しています。平壌にある主体思想塔や金日成銅像、万寿台大記念碑などを設計、制作したのもこの制作集団です。
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彼らは平壌美術大学の卒業生など、北朝鮮で最高レベルの芸術家集団とされていますが、実のところ、金一族の偶像化やプロパガンダのための美術品を日夜制作しています。そしてもうひとつの役割は、北朝鮮の外貨獲得。同集団には、彼らの作品を韓国など世界各地に販売する海外事業部門(万寿台海外開発会社)があります。

近年、彼らはセネガル、ナミビアなどアフリカの独裁国家の権力者の記念碑などを建設する仕事に動員されているといいます。さらに、高麗白磁や高句麗時代の陶器の模造品を大量に製造して中国、ロシア、香港、マカオなどを介して海外で販売しているそうです。それらの美術品を密輸して、韓国で販売しようとしたところ、逮捕された中国朝鮮族もいました。これだけ四方八方から経済制裁された彼らが、あらゆる手を使って外貨稼ぎをしようとするのも無理もない話かもしれません。
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海外販売のためのひとつの拠点が、北京の798芸術区の中にある朝鮮万寿台創作社美術館です。オープンは2009年9月。レンガ造りの2階建てで敷地面積1650㎡というそこそこ大きな美術館です。

朝鮮万寿台創作社美術館
http://www.korea-stamp.com

館内は広く、たくさんの北朝鮮の美術家たちの作品が展示されています。
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金剛山や白頭山といった北朝鮮を代表する風光明媚な名所を描いただけの、たいして面白味もない風景画や、労働者をさも立派そうに描いた、改革開放以前の中国の社会主義的な絵画がほとんどですが、いくつか“西側好み”の作品も散見します。
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それは、洪成光という美術家の作品です。美術館の公式サイトによると、朝鮮万寿台創作者朝鮮画創作団室長の洪成光は1960年生まれで平壤美術大学卒。金一族を偶像化した作品で輝かしい成果を遂げた美術家に与えられる最大の称号「功勲芸術家」を有しています。

ほかにも、作者名を控えるのを忘れたのですが、意外に現代的というべきか、若い北朝鮮の女性をポップ(?)に描いた作品もあったりします。
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美術館の外には、縮小化された千里馬銅像もあります。その隣のトラの像に中国の観光客の女の子がまたがって写真を撮ったりもしていますが、ここは中国。問題はなさそうです。
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美術館の2階に、北朝鮮観光の資料が販売されています。そこには、北朝鮮側から登る白頭山(長白山)観光の案内書や、中国ではこっぴどく批判されている朝鮮民族の祖、檀君陵の絵葉書や案内書(檀君の出土品の写真入り)が売られています。
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「平壌歴史遺構」という平壌近郊にある歴史遺構の絵葉書があったので購入したのですが、あまりに貧相なものばかりで、これじゃ中国人が彼らを馬鹿にしたがるのもしょうがないという気もしました。朝鮮戦争で多くの歴史的文物が破壊されたこの地で、檀君陵を建設しなければならなかった彼らの思いを推し量るのはかなり辛いものがあります。

ただ、この美術館に展示されている作品を描いた北朝鮮の美術家たちは、こうして自分の作品が、将軍様のお眼鏡にかなうかどうかとは別の基準で、海外の市場で取引されていく機会を与えられていることをうれしく思っているだろうことは理解できます。
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美術館の外に駐車している外国車は、同集団海外開発会社のものでしょう。北朝鮮の人たちも、祖国に金を上納することを条件に、海外では相当自由に金儲けにいそしんでいると聞きます。そういうインセンティブがなければ、もはやこの国をコントロールできない時代を迎えているに違いないだろうことは、最近中国で見かける北朝鮮の人たちの様子からうかがえます。
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by sanyo-kansatu | 2013-05-04 21:53 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)


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