ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 05月 14日

丹東の抗美援朝紀念館とあやうい愛国主義「歴史」教育について

5月上旬、中国が北朝鮮の国営銀行の口座を閉鎖したニュースが伝えられました。そのときふと思い出したのが、3年前に訪ねた中国遼寧省丹東にある抗美援朝紀念館のことです。
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ひとことでいえば、朝鮮戦争(1950~53年)でどれだけ中国が北朝鮮を支援したか、これでもかと宣伝する「歴史」施設です。1958年10月に建て始められ、朝鮮戦争休戦協定の調印40周年記念日である1993年7月27日に開館しています。いわゆる「愛国主義教育基地」のひとつです。
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場所は丹東駅の北西の高台にあります。高さ53mの記念塔が立ち、そこから鴨緑江が見渡せます。丹東には、中朝間をつなぐ最大の口岸(イミグレーション)があり、両国の最も太い人的交流が見られるまちです。
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館内は歴史的な資料を展示する陳列館とパノラマ館に分かれています。陳列館に入ると、まず「抗美援朝、保家衛国」のレリーフを背景にした毛沢東主席と彭徳懐将軍の彫像があります。
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ちょうど大連から高校生が見学に来ていました。中国の高校生はたいていジャージ姿で、校名がひと目でわかります。
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朝鮮戦争の経緯を、中国から見た視点で解説する展示も豊富にそろっています。1950年10月から53 年7月の休戦までに投入された人民志願軍は約300万人、戦闘による 死傷者だけでも36万6000人いたといいます。
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なかでも興味深い展示は、金日成が毛沢東に援軍を乞う手紙です。「この展示のせいで、いま丹東に駐在している北朝鮮ビジネスマン(その数常時約3000人)や旅行で訪れる北朝鮮客はここには来ない」と、丹東在住の中国人の知り合いは話していました。
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なぜ北朝鮮の人たちはここに来ようとしないのか?

ここでの展示は、北朝鮮で教えられた朝鮮戦争の「歴史」観とはさまざまな点で矛盾し、対立が起きそうですからね。それにしても、せっかく大きな犠牲を払って助けたつもりの中国が北朝鮮からさほど感謝されていないのだとしたら、なんてことでしょう。でも、そうなってしまうのは、そもそも両国の「歴史」観に起因しているのだと思います。

陳列館はともかく、パノラマ館は少々やり過ぎの感じがしました。冒頭で写真を見せたように、朝鮮戦争の巨大なジオラマがあるんです。こういうリアルなジオラマは、訪れた子供たちを喜ばすのかもしれませんが、そこに政治が絡む以上、配慮が足らなすぎると思います。
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記念館の外には、当時使用された空軍機や戦車、掃射砲などが置かれています。大連の高校生たちはそこで記念撮影を楽しんでいます。
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それにしても、中朝関係に対する中国国民の懐疑心や不満がこれほど高まっている今日、この「愛国主義教育基地」はこのままで大丈夫なのでしょうか。中国が「歴史」を振りかざせばかざすほど、自縄自縛になってしまう気がします。
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「我的祖国 愛国主義教育基地網上展館」(中国宣伝部)の紹介する抗美援朝紀念館
http://big5.cctv.com/gate/big5/space.tv.cctv.com/page/PAGE1246345067229151

【追記】
抗美援朝紀念館は、その後、2014年12月29日に改修のため閉館しています。現地の友人の話では、17年夏にはリニューアルオープンする予定だったそうですが、公式サイトをみるかぎり、開館には至っていないようです。中朝関係の悪化が、これまでこの博物館が提示してきた歴史認識に変更を迫っているのではないかと思われます。それが明確にならないうちは、開館にはならない気がします。

抗美援朝纪念馆
http://www.kmycjng.com/
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by sanyo-kansatu | 2013-05-14 18:00 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)


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