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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 05月 31日

中朝国境のまち、丹東は今ハマグリBBQの季節まっただ中!

中朝両国をつなぐ最も重要な国境ゲートである遼寧省の丹東。最近、ときどき日本のメディアでも登場するようになったのですが、場所柄ゆえとはいえ、中朝間で緊張が高まるような事件(?)が起きたとき、テレビカメラを抱えた日本の報道陣が押しかけて、さもたいそうなことが起きているがごとく、報道番組で紹介されることが多いまちです。
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まあそれは北朝鮮がこれだけ騒動を引き起こしている以上、ある程度仕方がないと思うのですが、ふだんはわりと静かで過ごしやすいまちです。

かつて安東と呼ばれたこのまちでは、5月が終わろうとしている初夏のこの時期、鴨緑江下流で採れたハマグリほか貝類の網焼きBBQ屋台が街中あちこちに出没します。近年、中国の大都市では屋台の営業が軒並み禁じられて姿を消すなか、それは解放感あふれるほのぼのとした風物詩といえるでしょう。

ぼくもこの季節、丹東に何度か行ったことがあるので、BBQ屋台は経験済みです。昔韓国によくあったポジャンマチャ(韓国風屋台)の感じに似ています。
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丹東市内には、海鮮BBQの店がいくつもあります。なかでも「金龍涮烤大全」という店は、丹東に行くと必ず訪ねる店のひとつです。丹東駅前と鴨緑江沿いにあります。
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店に入ると、まず水槽の中の各種貝類や魚介、肉などを選びます。屋台と違って、現代風の網焼きスタイルですが、炭火を使っています。地ビールの鴨緑江ビールは、北京や上海あたりでよく飲まれる燕京ビールや青島ビール、サントリービールと違って、そこそこコクがあるので悪くありません。

ところで、BBQにされるハマグリやアサリはいったいどこで採れるのでしょうか。地元の知り合いに聞くと、「鴨緑江の下流のほうですよ」とのこと。ぼくはその知り合いの運転する車で一度、鴨緑江の下流方面を訪ねたことがあります。2011年5月のことでした。
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ちょうど昼下がりの干潮の時刻らしく、中朝国境を隔てる鴨緑江下流域一帯から水の流れが消え、国境を歩いて渡れるんじゃないかというほど泥地で満たされるという不思議な光景が出現しました。

そこで車を停め、河沿いに近付づくと、潮干狩りに興じる地元の女性の姿が見えます。ジャージ姿で泥だらけになって、けっこう楽しそうです。
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カメラの望遠を使ってはるか対岸の北朝鮮側に目を凝らすと、案の定、こちらでも潮干狩りをしている姿が見えました。それにしても、あえて“潮干狩り”だなんていってみたものの、鴨緑江の場合はちょっとスケールが大きすぎますね。
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しばらく車で進むと、ハマグリやアサリをその場で買いつけると思われる業者のバイク軍団に出会いました。みなさん、バイクの後ろに発砲スチロールの箱を積んでいます。自転車で乗り付けるおばさんもいました。ここで水揚げされたハマグリたちが、丹東市内のBBQ店やら食堂やらで食べられることになるのでしょう。
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中国の国土は果てしなく広いですが、主な大河の最下流は激しく汚染物質がたまっていそうで、仮に干潟があってもそこで採れる貝類を口にする勇気はありません。鴨緑江には、これまで見てきたとおり、一部北朝鮮側の旧式の工場があるくらいです。そうしたことから、丹東はおそらく中国最大の貝類の産地といえるでしょう。上海のそこそこ有名なイタリアンレストランチェーンでも、ボンゴレに使うアサリは丹東産だと以前、取材先で聞いたことがあります。

このアサリが中国産か北朝鮮産かをめぐって、日本のスーパー業界でひと騒動起きたことがありました。北朝鮮への経済制裁に抵触するからだというのですが、この地を訪ねてみれば、中朝どっちで“潮干狩り”したところで、それにどれほどの意味があるのか。はっきり言ってしまえば、その大半は北朝鮮の鴨緑江沿いの貧しい村人や漁民たちが“潮干狩り”して、中国側に売りつけたであろうことは間違いないでしょう。

【追記】
この文章を書いたのは5月下旬のことですが、それ以後、鴨緑江の水質が中国側で問題化され始めました。

朝日新聞2013年7月11日朝刊に以下の記事があります。

「北朝鮮の核実験
中国首相が不快感

韓国の朴槿恵大統領は10日、6月の訪中時の会談で、中国の李克強首相が『北朝鮮の核実験後、(中朝国境の)鴨緑江の水質検査結果が悪くなった』と述べ、北朝鮮に不快感を示していたことを明らかにした。李氏が放射能物質の検出を示唆していた可能性もある。朴氏によると、李氏や習近平国家主席はともに、北朝鮮について『核は絶対だめだ』と強い口調で語っていたという」

地元中国遼寧省や吉林省の住人も北朝鮮の核実験で水質を懸念していると、今回もまた韓国の瀋陽領事が中国に代わってコメントしている記事も配信されているようです。
http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2013/07/14/0300000000AJP20130714000300882.HTML(聯合ニュ―ス)

これじゃ丹東のハマグリBQQも安心して口にできないということでしょうか。やれやれ、大気汚染に水質汚濁に加え、核実験による放射能汚染とは、中国という国の安心・安全はどこにあるんでしょうか?(2013.7.14)

by sanyo-kansatu | 2013-05-31 20:41 | 日本人が知らない21世紀の満洲


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