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2013年 07月 21日

アジア系観光客の買い物先が百貨店とアウトレット、量販店だけだとしたら…【2013年上半期⑥小売業】

2013年上半期、日本の宿泊業や飲食サービス、一部の小売業の景況感が回復しているようです。

「宿泊・飲食業 景況感プラス 訪日客が押し上げ 小売業は横ばい」(日経MJ2013年7月3日)

「流通業やサービス業の景況感の改善が進んでいる。日銀がまとめた6月の企業短期経済観測調査(短観)によると企業の景況感を示す業況判断指数(DI)は大企業・非製造業でプラス12だった。2四半期連続の改善となり、3月調査から6ポイント上昇した。プラス12はリーマン・ショック前の2008年3月調査と同じ水準。宿泊・飲食サービスの回復が目立った」

背景には、訪日外国客の増加の影響があるようです。

「宿泊・飲食サービス業の改善を後押ししているのはこのところの円高修正だ。訪日外国人観光客の増加による押し上げ効果は大きく、京王プラザホテル(東京・新宿)は5~6月の外国人宿泊客の比率が前年同期の50%台から60%台まで上昇。タイやインドネシアなど東南アジアからの旅行客の伸びが目立つという」

※宿泊業の動向については「東京・大阪のホテル稼働率は震災前を大きく上回る水準に【2013年上半期①ホテル】」を参照。

ところが、外国人観光客の買い物による地域経済への波及効果を期待する声は多いにもかかわらず、実際には「小売業は横ばい」と宿泊や飲食サービスに比べ、景況感の回復は見られないようです。

なぜなのか。ひとことでいえば、外国人客が買い物に訪れる場所は限定的だからです。

たとえば、「百貨店では海外高級ブランドなどの高額品に加え、訪日外国人向けの販売も好調。大丸松坂屋店では6月の免税売上高が2.5倍となった」とのこと。

「百貨店の外客売上120%増」(週刊トラベルジャーナル2013年7月8日)

「日本百貨店協会が発表した5月の外国人観光客の売上高・来客動向によると、調査対象44店舗の総売上高は前年同月比122.7%増の33億1615万円となった。(中略)今年2月以降、拡大基調が続いている。伸び率は、中華圏の旧正月時期に当たった2月(115.2%)を上回った」といいます。

ところが、「所得の本格回復が遅れているため、日常的な買い物が中心のスーパーは苦戦が続く。日本チェーンストア協会がまとめた5月の全国スーパー売上高(既存店ベース)は前年同月比1.2%減」(日経MJ2013年7月3日)だったのです。

つまり、訪日外国人の4分の3以上を占めるアジア系旅行者の増加によって恩恵を受けるのは、百貨店とアウトレットモール、各種量販店に限定、といえるかもしれないのです。

実際、訪日外国客の増加を背景に、不動産デベロッパーらのアウトレットモール開発の動きは盛んになっています。

「アウトレット2強 訪日外国人に照準」(産経新聞2013年4月20日)

「売れ残ったブランド品などを格安で売るアウトレットモールで、不動産大手2社の競争が激しくなっている。三菱地所が19日、千葉県酒々井町に新たな施設をオープンしたのに対し、ライバルの三井不動産は同県木更津市のアウトレットの増床を決めた。両社とも成田空港を利用する訪日外国人らを主要ターゲットに集客に工夫を凝らす」

同紙によると、両社の主なアウトレットモールの店舗は以下のとおり。

●三菱地所 
御殿場プレミアム・アウトレットと関西空港に近いりんくうプレミアム・アウトレットほか9施設
http://www.mec.co.jp/j/service/shopping/

●三井不動産
三井アウトレットパーク木更津ほか12施設
http://www.mitsuifudosan.co.jp/shopping/

日経MJ2013年5月13日では、今年4月中旬にオープンした「成田の近く 外国人客誘う 酒々井プレミアム・アウトレット」について次のように報じています。
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「三菱地所・サイモン(東京・千代田)が4月19日に開業した酒々井プレミアム・アウトレット(千葉県酒々井町)。成田空港からバスで20分ほどと近いため、外国人客を意識した工夫を凝らした。アウトレット施設の飽和感が指摘される中、リピート客を取り込むためのテナント構成にも気を配るなど他にない特徴を打ち出している」

「通常、アウトレットの主役はアパレル店で、全店舗の5割程度を占めるが、酒々井は5割を切る」「その分、リピート率が高まる雑貨店などのライフスタイル関連の店を充実」「フードコートも集客の目玉だ。アウトレットの中でも最多の800席で飲食テナントは8店が入る」「このほか、国内のアウトレットで初めて外貨両替所を設置。米ドルのほか、中国元やタイバーツといった主要な通貨を扱う」「外国人に親しみやすいテナントも入れた。カジュアル衣料の『ユナイテッドアローズ』やバッグなどのブランド『サマンサタバサ』、時計の『セイコー』『シチズン』は外国人客の評判が良いという」

タイや中国などのアジア系観光客の多くが現状では「弾丸バスツアー」による団体客である以上、百貨店とアウトレットモール、各種量販店に買い物先が限られてしまいがちなのは、ある意味無理もない面があります。ツアー形態が買い物先をある程度固定してしまうからです。最近オープンするアウトレットモールの多くが外国人観光客の一般的なツアーコースの動線に沿った場所に立地しているのもそのためです。

その結果、北海道や九州などでは、いくらアジア系外国人が大挙して来ても、地元の商店街にはお金がまったく落ちないという声が以前からずっと聞かれています。

これはツアー形態の問題だけではなく、アジアの新興国の場合、中間層以上の人たちの日常的な買い物先が自国の巨大なショッピング施設で行われているという実態からも説明できそうです。彼らはショッピングモールのような空間で買い物をすることに慣れているのです。エアコンの効いた場所でのんびり過ごすというのが、週末レジャーの過ごし方であり、それが便利で気が利いていることだと信じているのです。そういわれると、返す言葉がありません。

こうしてみると、訪日外国人客がいくら増えても、その多くがアジア系の新興国の人たちであるとしたら、地域にまんべんなく経済効果をもたらすというものではないことをそろそろ知るべきかもしれません。この点については、すぐに簡単な解決策はありませんが、考える必要はありそうです。
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by sanyo-kansatu | 2013-07-21 20:06 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)


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