2013年 12月 04日

実際、商談はどれほど進んでいるのか?(トラベルマート2013報告 その2)

トラベルマートの会場は、日本の出展ブースが海外バイヤーのテーブルを取り囲むような構図で配置されています。B2Cのイベントではないため、出展ブース自体は地味なので、天井が高いぶん、ちょっと殺風景に見えなくもありません。
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それでも海外から招致した304社の内訳をみると、タイ20社、ベトナム30社、フィリピン29社など東南アジアの旅行会社が多く、参加国も21カ国とバラエティ豊かです。会場にはひと目でそれとわかるアジア系の人たちと商談を進める日本の関係者の姿があちこちで見られます。
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今回ぼくはアジアFIT向けの商材として面白いものはないかという観点で日本側のブースを見て回りました。海外の旅行博に出展するのはハードルが高くても、トラベルマートなら比較的低コストで参加できますから、まだ見たことのないどんな新しい出展者がいるか、興味があったのです。会場で拾った話をいくつか紹介します。

面白かったのが、「フェリーさんふらわあ」の関西と九州を結ぶナイトクルーズです。これは大阪⇔別府、大阪⇔鹿児島(志布志)、神戸⇔大分間を最安1万円で往復できる格安プランで、現地0泊、船中2泊でリーズナブルに旅行が楽しめることから、「弾丸フェリー」として知られています。
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フェリーさんふらわあ
http://www.ferry-sunflower.co.jp/

同社の営業担当者によると、2007年~08年頃、韓国で関西&九州周遊ツアーがヒットしたことから、外客利用は当時がピークで、今年は中国客の利用も減り、国内客がメインになっているそうです。しかし、最近は海外のバックパッカーの利用も見られるようになったとか。近隣国に比べ国内移動が割高な日本ですが、これからは海外のFITにもっと利用してほしいものです。ナイトクルーズでは見ることのできない瀬戸内海の美しさを知ってもらうためには、昼間の航路でも外客向けの格安料金を打ち出す必要があるかもしれません。

もうひとつは、六本木にある大型和風ニューハーフショーレストランの「香和」です。先日、新宿歌舞伎町の「ロボットレストラン」を訪ねて以来、東京にはもっと外客向けのナイト・エンターテインメントが必要とされていると感じていました。
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香和
http://www.kaguwa.com/

同社の営業担当者によると、「香和」のコンセプトは「歌舞伎ほど高尚でなく、気軽に和風エンターテインメントを楽しめるショーレストラン」だそうです。外客の来店は1割程度で、半数ははとバスの東京ツアーなどで来店する国内のおばさま族だとか。「東京は世界一ナイトライフの種類があふれる街だと思いますが、これまで外国人に対しては閉鎖的でした。言葉の壁が大きかったのでしょう。まだまだ海外のお客さんを楽しませることのできるスポットは少ないと思います」。

その担当者も欧米客であふれる「ロボットレストラン」の評判を知っていて、なんとかしたいと考えているようですが、どうやって外客にPRすべきか、まだ妙案は見つかっていないとのこと。トラベルマートへの出展は今年で4回目だそうです。外国人にとって、日本の何がウケるのか。やはりそれは「Japan is amaging!」ということではないかとぼくは思っていますが、では何がamagingなのか。もう少し考えてみる必要がありそうです。

自治体のブースでは、島根県隠岐観光協会が目を引いていました。というのも、PRスタッフが2名の外国人女性だったからです。
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隠岐観光協会Facebook
https://www.facebook.com/okikan

おふたりは隠岐在住のオーストラリアとニュージーランド出身の現地観光職員で、ニュージーランドの方は地元の日本人男性と結婚されているそうです。隠岐では「島ガール旅」という若い女性向けの観光キャンペーンを繰り広げていることを今回初めて知りました。やはり、PRに外国人を起用するといった意外性は有効ですね。取材していたのは、ユネスコの支援する「日本ジオパーク」のひとつに選ばれた隠岐の活動を紹介するために来たNHKの地元局だったそうです。

隠岐スタイル☆島ガール旅
http://www.kankou-shimane.com/mag/12/09/geo.html

あと気になったのは、福島県のブースでした。「Welcome to Fukushima!」という英語の大きなメッセージが印象的でした。今年、東北の国内旅行はほぼ回復されたとされるなか、外国客はまだ戻っていないといわれています。
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では、どうやって外国人観光客を呼び込めばいいのか。これは地元の人たちがただちに望むことではないのかもしれませんが、日本の事情を知らない外客相手には、正攻法の観光PRではなく、海外でも多くの事例のある「被災地ツーリズム」の手法を開発しなければならないのではないかと思います。

その点に関して、評論家の東浩紀さんの提唱する「ダークツーリズム」は参考になると思います。

福島原発事故、観光でイメージ回復を-東浩紀・石川和男対談
http://blogos.com/article/70569/

さらに、東氏は「福島第一原発観光地化計画」なるプロジェクトも推進しようとしています。実に興味深い動きです。

福島第一原発観光地化計画
http://ch.nicovideo.jp/fukuichikankoproject

さて、前回紹介したキム記者から聞いた最近の韓国のインバウンド市場の話も興味深いものでした。話を聞き出すには、相手を持ち上げるのもひとつの手ですから、キム記者にぼくはこう切り出しました。

――日本からみれば韓国はインバウンド先進国。日本は韓国から学ばなければならないことがたくさんあります。今年は中国からの訪韓客が450万人になりそうだとか。すごいですね。

「でもね、10月から施行された新旅游法の影響が徐々に出ていますよ。韓国の土産店は次々に倒産しています。同法では、ツアー客の土産店への連れ込みを禁止しているのですから。中国客を専門にしていたランドオペレーターも倒産しています。もちろん、中国のツアーが正常化していくのはいいことですが、韓国政府もジレンマに陥っています。

特にひどいのが済州島です。あそこは中国人のビザを免除している関係で、ツアー客も多いですが、中国からの投資で土産物店などもたくさんつくられ、結局、地元にはお金が落ちないんですから」

――日本も同じようなものですよ。それはともかく、日韓の観光客の往来もともに減少していますね。

「これは社会心理による影響が大きいと思いますよ。私も韓国から日本へお客さんをもっと送るため、あの手この手を考えていますから、日本からも韓国へ送客してくださいよ。やはりギブ&テイクでしょう。そうでないと、このままでは先行きが見えません。韓国の観光業者も頭を痛めていますよ」

こういう本音がもっと率直かつオープンに語られるべきだと思いますが、キム記者によると、最近韓国観光公社のある幹部が日本寄りだとの理由で降格されたといいます。こういうのは本当にくだらないですね。

さて、トラベルマートは、外客を呼び込みたい日本の関係者と日本に送客したい海外の旅行会社の、いわば“集団お見合い”ともいえるイベントです。実際のところ、どれほど商談が進んでいるのでしょうか?

実は、来年開催予定の「ツーリズムEXPOジャパン」に統合されることになったトラベルマートの今後についてこんな声がありました。

そもそも旅行博との一体化は、商談会の出展者にとって有益なのか、疑問だというのです。

ある出展者は言います。「現行のトラベルマートのブース出展料は5万円。だから、これまで出展してきたが、一体化によって料金が高くなるなら出展は難しい」。

国際的な旅行博としてグレードアップしたい主催者側の思惑はともかく、出展者にとって、これまでトラベルマートは商談会としてどれほどの収穫があったのか。これを機に、検討し直す動きが出るかもしれないというのです。このあたりの認識は民間事業者と自治体では当然違うでしょうが、より本格的な商談会として機能させていくためには何が必要か。あらためて議論することは意味があると思いました。
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by sanyo-kansatu | 2013-12-04 10:45 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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