ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2013年 12月 20日

富裕層旅行には先進国型と新興国型の2種類ある(ILTM2013 セミナー報告)

11月22日、青山学院大学IVY HALL「バンケットルーム・サフラン」で観光庁主催の「ジャパン・ラグジュアリー・トラベル・フォーラム 2013 セミナー~今、富裕層旅行市場を捉えるためには~」がありました。やまとごころの取材で、セミナーに出席し、関係者の話を聞くことができたので、報告します。

やまとごころ http://www.yamatogokoro.jp/event_report/index12.html

今年3月、日本初の富裕層旅行に特化した商談会「ジャパン・ラグジュアリー・トラベルマーケット(ILTM Japan)」が京都で開催されました。会場のザ・ソウドウ東山では、日本の富裕層旅行マーケットの開拓を目指し、国内外のバイヤーと出展者が商談を繰り広げました。次期開催は、2014年3月17日~19日に決定しています。では、富裕層旅行とはどのようなものなのか。今回は、国内外の有識者による富裕層旅行セミナーを報告します。

※京都で日本初のラグジュアリー・トラベル商談会「ILTM JAPAN2013」開催
http://inbound.exblog.jp/21590385/

目次
セミナー報告
講演「富裕層旅行市場の現状と今後の動向」
講師:Alison Gilmore(Reed Travel Exhibitions社)
「アジアにおける富裕層旅行市場の中の日本」
講師:Stephen Junca(Seactet Retreat社)
パネルディスカッション「日本の地域性から見る富裕層旅行市場への取組み」
パネリスト:Alison Gilmore(Reed Travel Exhibitions社)
       Stephen Junca(Seactet Retreat社)
       遠藤 由理子(JTBグローバルマーケティング&トラベル ブティックJTB事業室長)
      Jens Moesker(シャングリ・ラ ホテル東京総支配人)
モデレーター:福永 浩貴(株式会社アール・プロジェクト・インコーポレイテッド)
Alison Gilmore 氏インタビュー
ILTM Japan 2014概要
<編集後記>


セミナー報告
「富裕層旅行市場の現状と今後の動向」 (Alison Gilmore/Reed Travel Exhibitions社)他
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今日の世界の富裕層が好むのは、必ずしもプライベートジェットやクルーズ客船、ファイブスターホテルのスタイリッシュな客室などにイメージされる豪華な旅というわけではありません。では、「ラグジュアリー旅行」の定義とは何でしょうか。

「ラグジュアリー旅行」には、クラシックモデルとニューモデルの2つのタイプがあります。以下、それぞれのキーワードを書き出してみます。

●クラシックモデル
High level of comfort(ハイレベルの快適性)
Status symbol(ステイタスシンボル)
The best service(ベストなサービス)
Privacy Guaranteed(プライバシーの確保)
Exclusive location(独占的なロケーション)

これは従来型の「ラグジュアリー旅行」のイメージです。一方、今日主流となっているのは以下のようなものです。

●ニューモデル
Experiential travel(体験旅行)
Authentic experiences(“本物”の体験)
Ecotourism(エコツーリズム)
Voluntourism(ボランティア旅行)
Sustainability(持続可能性)
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両者を比較すると、以下のようなキーワードで対比できます。

クラシック   vs ニューモデル
Product(製品)   Experience(体験)
Place(場所) Everyplace(どこでも)
Price(価格)     Exchange(交換)
Promotion(プロモーション)Evangelism(福音主義)

今日の富裕層が求めているのは、“本物”の体験です。インドやブラジル、中国といった新興国ではまだクラシックモデルが一般的かもしれませんが、日本をはじめとした先進国ではニューモデルの旅が求められています。

日本には“本物”があります。日本のラグジュアリーのDNAと私が呼ぶキーワードは以下のようなものです。

Heritage(遺産)
Culture(文化)
Craftsmanship(熟練した職人の技能)
Service(サービス)
Prestige(信望)
Privacy(プライバシー)
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こうしたDNAをすべて兼ね備えた日本には、富裕層旅行マーケットとしての大きな可能性があります。でもまだ海外ではよく知られていません。ILTM Japanは、こうした日本の魅力を世界にアピールする場となるはずです。
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“本物”の体験の重要性については、Seactet Retreat社のStephen Junca氏も「アジアにおける富裕層旅行市場の中の日本」と題された講演の中でも指摘されました。

パネルディスカッション「日本の地域性から見る富裕層旅行市場への取組み」の中で、JTBグローバルマーケティング&トラベル ブティックJTB事業室長の遠藤由理子氏は、同社の富裕層旅行者の受け入れ実績を通じて、彼らが求めるのは日本の文化や歴史に関する“本物”の体験であること。すべて顧客一人ひとりのリクエストに応じたテーラーメイドな旅程が組まれていること。今後重要となるのは、富裕層に“本物”の体験を提供してくれる日本各地の多様なサプライヤーとのネットワークであると述べています。


Alison Gilmore 氏インタビュー
「文化や伝統に富んだ日本は魅力的なディスティネーション」

ILTM Japanエキジビション・ディレクターのAlison Gilmore 氏は、過去20年間、富裕層旅行マーケットの現場で経験を積んできました。Gilmore 氏に話を聞きました。

――日本の富裕層旅行マーケットをどう捉えていますか。
「日本のポテンシャルはとても大きい。世界の富裕層旅行マーケットの潮流は、かつてのような豪華さを追求するだけでなく、本物志向の体験を大事にする旅行に変わりつつあります。文化や伝統に富んだ日本は魅力的なディスティネーションです」。

――日本では大手の旅行会社でも富裕層というセグメントを意識した顧客の取り込みを手がけたのは最近のことです。ヨーロッパでは富裕層旅行にも歴史がありますね。
「ヨーロッパでは19世紀にすでにグランドツーリズと呼ばれる富裕層旅行の歴史があります。富裕層旅行はもともとクローズドなマーケットなので、海外でも実際に手がけているのは、プライベート・コンシェルジュと呼ばれる、特定の顧客を持った小さなエージェントが多いです。ILTMはそうしたバイヤーたちが出会うプラットフォームを提供しているのです」。

――日本の富裕層旅行マーケットの現状についてどうお感じですか。
「日本の知名度はまだ低いと感じています。これまであまりインバウンドのプロモーションをしてこなかったこと。国内旅行客へのアピールが中心で、海外に対する情報発信ができていなかったと思います。しかし、世界の富裕層旅行のトレンドが豪華型から体験型に変わってきたため、日本の魅力が注目されています」。

――今春、日本でILTM Japanを開催した目的、経緯は?
「世界の富裕層旅行を扱うエージェントの多くが日本に興味を持っているのに、なかなか入っていくのが難しいマーケットと考えられていました。今回、京都市がとても協力的で、実現にたどりつけました」。

――手ごたえはどうでしたか。
「大成功だったと思います。今回参加いただいた海外のバイヤーの多くがすでにお客さまを日本に送っていただいています。何より彼らが日本について知ることができたのが大きいです。やはり、彼らに実際に日本を見てもらうことが重要です」。

――アジアからのバイヤーもいましたね。
「シンガポールや中国などですね。今回は初の開催でしたから、日本に近いアジアの国々のバイヤーが多かったですが、次回からは欧米諸国などもっとバランスをとることができると思います」。

――海外の富裕層は日本のどこに興味を持っているのでしょうか。
「やはり日本の文化や伝統です。海外から見て、日本は神秘的な国です。もっと誇っていいと思います」。

――海外に向けてプロモーションをするうえでのポイントは?
「言語は障害ではありません。日本は旅行のインフラも整っています。簡単に旅行できる国であることをもっとPRすべきでしょう。富裕層というとお金持ち相手というイメージが強いですが、ただ単にお金持ちをターゲットにしているわけではありません。日本には魅力的な素材がたくさんあるので、もっと映像やイメージを使って海外に情報発信すべきです。これ以上、なにか新しいものをつくるというのではなく、既存のものをアピールすることです」。

――商談会に参加するにあたって何か基準はあるのでしょうか。
「ILTMには独自の審査基準があって、それを満たした方のみご参加いただけます。それはこれまでの弊社の経験からその商品が富裕層にアピールするかどうかを判断するというものです。自分たちの商品に誇りをもってお話いただければ、ご相談に乗ります。私たちも商談に参加していただけるにふさわしいサプライヤーを独自で探しています」。

――来年のILTMについて教えてください。
「商談会の会場は今年と同じザ・ソウドウ東山ですが、パーティは来年2月にオープンするザ・リッツカールトン京都で開く予定です。もしこれから富裕層マーケットを手がけたいと考えていらっしゃる方は、ぜひ参加していただきたいです」。

ILTM Japan 2014概要

日時 2014年3月17日~19日
会場 ザ・ソウドウ東山(京都市)

ILTM Japanは、富裕層旅行の知識やネットワーク、ビジネスなどを国内外のバイヤーと出展者に対し提供する、日本で唯一のイベントです。来年で2回目の開催となります。

ILTM Japan日本事務局(株)アールプロジェクト内 
http://www.iltm.net/japan

※ILTMについて
International Luxury Travel Market (ILTM)は、毎年カンヌ(12月)と上海(6月)で開催され、主催者によって厳選された、世界の富裕層旅行のバイヤーやサプライヤーが一堂に会する商談会です。カンヌでは1300社以上の出展者と1300名のバイヤーが参加、上海でも500社以上の企業と500名のバイヤーが集います。出展者は高級ホテル、レストラン、リゾート、プライベートジェット、リムジン、クルーズ、カジノなど極上のラグジュアリー体験を提供できる上質なサプライヤーが選ばれています。

<編集後記>
これまで日本の旅行業界はマスツーリズムに傾注し、クローズドな富裕層旅行マーケットについてはPRも含め、経験不足だったことは否めません。こうしたなか、観光庁やILTM Japan関係者らが富裕層旅行マーケットの促進に取り組むのは、外国人富裕層がもたらす経済効果はもちろんですが、世界の旅行トレンドを先取りする富裕層の影響力に期待しているからでしょう。

日本人はどうも自分たちの魅力をよくわかっていないところがあるようです。価格に捉われず“本物”を追求する富裕層旅行者への取り組みは、日本のよさを再認識するいい機会にもなると思います。ILTM Japan事務局の福永浩貴氏によると、来年の開催に向けて、旅行会社やホテルだけでなく、伝統工芸の関係者からの問い合わせも増えているそうです。

今回のセミナーはかなりコンセプチュアルで啓蒙的な内容でしたが、今後は実際に富裕層の受け入れを行っている関係者の生の声を聞いてみたいと思いました。そういった方々こそ、海外の富裕層に喜ばれるポイントをいちばんご存知だと思うからです。
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by sanyo-kansatu | 2013-12-20 07:41 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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