2014年 01月 20日

中国の文革系サブカル雑貨は日本の1970年風?

池袋にできた華人経営の「文革レストラン」の店内ディスプレイやポスター、標語の数々について以前、ぼくはこう書きました。

「これらに見られるように、「文革レストラン」に散りばめられた一見政治的かつノスタルジックな文化的意匠は、実のところ、当時への郷愁ではなく、むしろ2000年代の中国の都市部に多く現れた文化雑貨屋で売られていた他愛のない流行商品やキャラクターグッズのたぐいと変わらないものです。パロディーといっても、そこは用意周到毒抜きされています」(「池袋の「文革レストラン」再訪。紅衛兵コスプレ美女に会う」)。

では、ここでいう中国で商品化された「文革系カルチャー雑貨」とはどんなものでしょうか。

北京の人気観光スポットである南羅鼓巷と798芸術区にある文化雑貨屋で売られているものをいくつか並べてみましょう。そこは地方から北京に遊びに来たおのぼりさんでにぎわっているという感じのスポットです。2008年ごろから2014年1月くらいに撮ったものです。

南羅鼓巷
http://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g294212-d2008082-Reviews-Nanluogu_Lane-Beijing.html
798芸術区
http://www.tripadvisor.jp/Attraction_Review-g294212-d1793347-Reviews-798_Art_Zone-Beijing.html
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これが池袋の「文革レストラン」で見られた文革時代のポスターや標語をパロディー化した雑貨群です。「80后」というのは、中国の1980年代生まれの世代を指します。彼らがこれらのサブカル雑貨のメインの消費者だったというわけですが、もはや本来の政治的な文脈は毒抜きされているので、パロディーとも呼べそうにありません。単なるファンシーグッズです。
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「毛沢東語録」も「愛情語録」に変換されているくらいです。借りているのは、図柄や意匠だけで、当時の陰惨な歴史の記憶はすっかり忘却されています。そう考えると、これらのファンシーグッズがいかにグロテスクな存在であるかを思い知らされるのですが、そんなことを彼らに言っても始まりません。
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なにしろ紅衛兵人形も「可愛的(かわいい)」キャラクター商品です。

ところで、これらの文革系サブカル雑貨は、1990年代の中国現代アート界を一斉風靡したポリティカルポップと呼ばれた作品群が原型となっているはずです。しかし、当時すでにそれらの作品の政治性は「虚勢」されてしまっているとも指摘されていました。中国の高度経済成長によって現出した消費社会が、これは日本でも同じだったのでしょうが、本来もっていたはずの批評性をなし崩し的に無為化してしまったからです。中国では、毛沢東グッズがみやげ物やお守りになる時代を迎えているのです。

そんなわけですから、ファンシーグッズと化した文革系雑貨について、いまさらあれこれ言っても始まりません。そこで、今度は文革がらみではないグッズも見てみましょうか。それは、いつぞやの日本を思い出す光景だったりします。
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これなど1970年代に流行った「幸福駅」の切符を思い起こさせます。
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中国の人気漫画キャラクターの脱力感あふれるコメント付き雑貨も定番です。
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学生たる者「よく食べ、よく飲み、好色(セクシー)であれ」
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若者の流行語を書き並べたパネル。「宅女」は、わかりますね。
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いまでもたまに見かけますが、数年前まで中国ではこんなマスクが流行ってました。2000年代らしいのどかな風景といっていいのかもしれません。でも、最近はPM2.5による大気汚染が深刻化している時代です。いつまで彼女たちがしゃれっ気や遊び心で日本の1970年代風ファンシーグッズの世界で戯れていられるのか。ちょっと気にならないではありません。

もしかしたら、2000年代というのは、中国の激動の現代史において民衆がつかの間のほっと息をつける安定した時代だったと、後世になっていわれるのかもしれません。
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by sanyo-kansatu | 2014-01-20 18:48 | のんしゃらん中国論 | Comments(0)


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