ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

inbound.exblog.jp
ブログトップ
2014年 02月 05日

外国人ツーリストにとってうれしい地図とは?

前回、ラオスのルアンナムターという小さな少数民族の町をケーススタディとしながら、外国人ツーリストにとって居心地のいい町の必要十分条件とは何かについて考えました。

ひとことでいえば、ツーリストのストレスをできる限り軽減させてくれる施設やサービスがどれだけ揃っているかどうか、です。ルアンナムターはまさにそういう条件を兼ね備えたツーリストタウンでした。

では、はたしてそのような環境が日本で実現できているだろうか。そうぼくは疑問を呈したわけですが、まだまだ実現できているとは思えません。たとえば、最近、外国人向けゲストハウスが急増している台東区周辺や欧米客の多い北海道や信州のスキーリゾート地の一部のように、ある程度実現している地域があるとは思いますが、少ないと言わざるを得ません。

自分の町はツーリストタウンにふさわしい要件をどこまで満たしているだろうか。それを見極めるために有効なのが、わが町のタウンマップの中身の検討です。

ルアンナムターには外国人ツーリスト向けのこんな地図があります。
b0235153_14245642.jpg

これは、あるカフェレストラン兼ゲストハウスが制作したものです。どんな印象をもたれたでしょうか。意外にそっけないな、とお感じになったかもしれません。

確かにこのタウンマップは、パッと見、とてもシンプルにできています。でも、よく見てください。こんな小さな街にも関わらず、ホテルやゲストハウスが27軒、レストランが24軒も載っています。たいした情報量です。さらに、ツーリストオフィス(観光案内所)や銀行、ビザの更新のための入国管理局、警察所、博物館、病院、バスターミナル、空港行きバス乗り場など、ツーリストに必要と思われる情報はほぼ落とされています。

これはあくまでツーリストのための地図であって、地元の人間のためにつくられたものではありません。そうである以上、地図に落としてある情報は、厳選された情報だけに絞り込まれています。

この地図の特徴を整理してみましょう。

①外国人ツーリスト目線で必要最小限な情報に絞り込まれていること。
②掲載する物件の大半は数字とアイコンで記されて、見やすくなっていること。
③縮尺はないが、すっきりとしたシンプルなデザイン。自由に書き込めるスペースがあること。

そのため、外国人ツーリストの目から見て、手っ取り早く町の概要をつかむことができるのです。

初めてその土地を訪れた外国人にとって大事なのは情報量ではありません。むしろコンパクトに厳選されているほど使い勝手がいい。

さて、ここで考えたいのが、日本でつくられた外国人向けの観光マップとの比較です。この地図に比べ、日本の地図は一般的に、情報過多なうえ、肝心なことが抜けていたりするのが目につきます。いったい誰のための地図なのか? 特に無料のマップは広告クライアントの要請でつくられている関係上、ツーリストの利便性より、見かけの広告の訴求効果を重視してしまいがちです。これでは本末転倒といわれても仕方がありませんし、これで本当に広告が読まれているのか、実のところあやしいものです。

広告に頼ったビジネスモデルである以上、ある程度それは致し方ないとしても、工夫のしようはあるはずです。というのも、一般に市販されている日本の旅行ガイドブックの地図はよくできているものが多いからです。それは作り手が、日本人のニーズをよく理解しているからでしょう。ところが、訪日外国人向けになると、とたんにわからなくなる。たいてい日本人用の地図を流用してお茶をにごすケースが多い。そこに問題があるのだと思います。

なぜなら、日本人の好む旅のストーリーを外国人ツーリストに押し付けても仕方がないからです。本来ツーリストマップというのは、自分の目と足で歩いて地域の魅力を発見するための橋渡しであればいい。白地図のように自由に書き込める余白があるくらいがいいのです。

もちろん、ルアンナムターのような小さな観光の町と東京のような大都市では、ツーリストの動線やニーズは違うところがあるでしょう。でも、基本的にツーリストに必要な情報は大きく変わりません。

最近、都内でも外国客の多いホテルでは、自前の周辺マップを用意しているところも多いようです。それらの地図には、ルアンナムターのタウンマップに落とされていたようなツーリストが必要とする情報がすべて記載されているでしょうか。たとえば、怪我や病気、盗難に遭ったときのための病院や警察署、入国管理局などは、欠かせない情報です。  

ホテルはツーリストにとってのベースキャンプです。ツーリストの行動は、すべてホテルが起点となります。それだけに、ホテルを中心に描かれたタウンマップは、ツーリストのストレスを軽減し、旅の面白さを倍増させる重要なツールなのです。こればかりは、いかに通信技術が進んでも、地元を知悉した人の手による地図にはかないません。

せっかくつくっても、それが価値を生むかどうかは、外国人目線でつくられたかどうかで決まります。

外国人目線を理解するためにも、海外の小さなツーリストタウンを訪ねてみることをおすすめします。ツーリストにとってどんな情報があると重宝するか、肌身で実感することができるからです。
b0235153_14254280.jpg

[PR]

by sanyo-kansatu | 2014-02-05 14:25 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


<< 2013年 年末年始の海外旅行...      外国人ツーリストにとって居心地... >>