ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2014年 03月 29日

2013年、九州に寄港する外国クルーズ船はなぜこんなに減ったのか

台湾発のクルーズ客船「スーパースター・アクエリアス」は、毎年4月から10月下旬まで毎週1回、那覇港と石垣港に寄港します。同船は、日本で唯一の外国からの定期クルーズ船です。同船の寄港日に上陸する約1500人の台湾客は、那覇の風景を大きく変えています。
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※沖縄に寄港する外国クルーズ船と乗客の動向については、以下の記事を参照。
【前編】台湾発クルーズ客船、那覇寄港の1日ドキュメントhttp://inbound.exblog.jp/20363867/
【後編】台湾発クルーズ客船、那覇寄港の1日ドキュメントhttp://inbound.exblog.jp/20365044/
沖縄には欧米客を乗せたクルーズ客船も寄港しますhttp://inbound.exblog.jp/20366268/

「スーパースター・アクエリアス」は、今年も4月6日からやって来ます。那覇港に寄港する国内外を合わせたクルーズ客船の予定は以下を参照ください。

那覇港管理組合
http://www.nahaport.jp/kyakusen/nyuukouyotei2014.htm

では、沖縄以外の国内の港ではどうなのでしょうか。先ごろ、大型客船のクイーン・エリザベスが干潮時に横浜ベイブリッジを潜り抜け、横浜港に寄港したニュースがありましたが、今年も全国各地に外国クルーズ船は寄港する予定です。各港の予定は以下のサイトが参考になります

一般社団法人日本外航客船協会
クルーズ船寄港地
http://www.jopa.or.jp/port_detail/port.html

上記2サイトで調べる限り、沖縄県(那覇、石垣)は国内最大級の外国クルーズ船の寄港地といえます(国内クルーズ船を入れたトータルの2013年のクルーズ寄航数では、横浜、神戸に次ぐ3位。那覇港は外国客を乗せたクルーズの比率がいちばん大きい)。

では、今年沖縄以外ではどこの港に多くの外国クルーズ船が寄港するのか。ざっと調べてみると、以下の4港が多そうです。

横浜/「ダイヤモンド・プリンセス」(英)、「コスタ・ビクトリア」(伊)ほか
神戸/「コスタ・ビクトリア」(伊)、「サン・プリンセス」(米)ほか
博多/「コスタ・アトランティカ」(伊)、「ダイヤモンド・プリンセス」(英)、「ボイジャー」(英)ほか
長崎/「ダイヤモンド・プリンセス」(英)、「セレブリティ・ミレニアム」(米)ほか

横浜港クルーズ客船寄港予定 
http://www.city.yokohama.lg.jp/kowan/cruise/schedule/2014.html
神戸港クルーズ客船寄港予定 
http://www.city.kobe.lg.jp/culture/leisure/harbor/passenger/schedule/
博多港クルーズ客船寄港予定
http://port-of-hakata.city.fukuoka.lg.jp/guide/cruise/index.html
長崎港クルーズ客船寄港予定
http://www.jopa.or.jp/port_detail/nagasaki.html

調べていくうちにわかったことがあります。

九州では、2012年空前の外国クルーズ船の寄港ラッシュに沸いたこと。ところが、13年に入ると大幅な減少が見られたことです。

※クルーズ船寄港回数(国内クルーズ船も含む総数)
博多港 2012年:112回→13年:38回
長崎港 2012年78回→13年:48回

なぜこんなに九州に寄港する外国クルーズ客船が減ってしまったのか。

上記2港の関係者に電話取材したところ、2つの理由が見えてきました。まず、2012年秋以降の日中関係の悪化により大型客船「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」「レジェンド・オブ・ザ・シーズ」(米)、「コスタ・ビクトリア」(伊)などの中国発チャーター・クルーズ船の寄港が途絶えたこと。もうひとつは、2011年末に韓国初のクルーズ船会社として創業されたハーモニー・クルーズ社が、12年2月より博多や長崎に多数寄港させた「クラブ・ハーモニー」(韓)が営業悪化のため、13年2月からあっさり運休したことです。

博多港の2012年のクルーズ船の寄港実績をみると、この年の大半の外国クルーズ船が前述した中国発および韓国発だったことがわかります。これが一気に寄港しなくなったわけですから、激減するのも無理はありません。長崎港でも状況は同じでした。

国土交通省が2012年11月に作成した外国クルーズ誘致を促進するための資料に、以下のような統計があります。

外国船社クルーズ船寄港回数上位10港(国内クルーズ船は含まない)

2005年 1位那覇29回/2位石垣29回/3位長崎24回/4位平良22回/5位横浜11回 計199回
2006年 1位長崎50回/2位広島23回/3位神戸18回/4位萩15回/5位宇野14回 計251回
2007年 1位長崎37回/2位那覇26回/3位石垣25回/4位神戸19回/5位鹿児島16回 計281 回
2008 年 1位那覇51 回/2位石垣37回/3位鹿児島30回/4位博多25回/5位長崎25回 計318回
2009年  1位那覇50回/2位長崎45回/3位石垣32回/4位博多28回/5位神戸22回 計348回
2010年  1位博多61回/2位那覇46回/3位鹿児島45回/4位石垣45回/5位長崎39回 計338回
2011年 1位石垣46回/2位那覇37回/3位博多25回/4位長崎17回/5位横浜13回 計186回
2012年 1位那覇73回/2位博多63回/3位長崎55回/4位鹿児島37回/5位石垣33回 計459回 ※ただし、これは2011年12月時点での予定。

これからの観光とクルーズ
http://www.marine.osakafu-u.ac.jp/~lab15/society/PDF/soukai/04.pdf

これをみると、もともと外国クルーズ船は沖縄や九州に多く寄港していましたが、2008年頃より急増しています。中国や韓国からのクルーズ船がこの時期に増えたためです。東日本大震災の2011年はいったん減っていますが、翌12年に大幅にアップしました。これが空前の九州クルーズラッシュとして話題となったのです。当時の状況について、観光庁長官も以下のように明るい展望を語っていました。

観光庁の井手長官、“黒船”来航でどうなる今後のクルーズ振興
http://www.cruise-mag.com/news.php?obj=20120619_01

ところが、その盛り上がりもわずか1年で萎んでしまったのでした。関係者の落胆ぶりが思いやられます。

それでも、2013年の秋頃から、少しずつ上海発のチャーター・クルーズ客船が九州各港に寄港するようになっています。ただし、その勢いは12年には到底及びませんし、実は九州の港湾関係者も、以前のように積極的に中国からのクルーズ船の寄港をメディアに対してアピールしていないようです。その背景には、2012年秋の尖閣事件直後の中国クルーズ船の熊本港寄港が中国国内でバッシングに遭ったことに対するトラウマがあるからに違いありません。日中関係が好転していないいま、あまり騒ぐとかえって中国世論を刺激し、逆効果を生むのではないか。九州のクルーズ関係者の間にそんな複雑な思いが共有されているようなのです。

東京にいると、航空便による中国客の大幅回復が強く実感されますが、九州では少し事情が異なるようです。

※もっとも、九州在住の帆足千恵さんが最近、「九州は日本のクルーズ先進地になれるか? 福岡クルーズ会議から」というコラムを書いていて、九州がいかに熱心にクルーズの誘致に再び取り組もうとしているか、報告されています。要注目です。

※2014年に入り上海発のクルーズ船は再び博多港を訪れるようになりました。寄港状況は以下参照ください。

博多港クルーズ客船寄港予定
http://port-of-hakata.city.fukuoka.lg.jp/guide/cruise/index.html
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by sanyo-kansatu | 2014-03-29 12:53 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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