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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2014年 04月 12日

タイ最北端の町からミャンマーへ~国境越えのタイムスリップ感に酔う半日観光

タイ最北端にあるメーサーイは、わずか10mほどの小さな川を隔てたミャンマーとの国境の町です。対岸はタチレイといいます。ここでは、外国人もミャンマーのビザがなくても入国可能で、最大14日まで滞在できます(※後述しますが、いまではこのまま陸路でヤンゴンまで行けるようになっています)。そこで、多くの外国人はミャンマーのイミグレーションでタチレイとその周辺地域に滞在可能な入域許可書を取り、1日だけのミャンマー観光を楽しみます。
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これはタイ側のイミグレーション。なかなか立派な建物です。ゲートの周辺は、国内外の観光客も多く、タイ名物の屋台がたくさん出ています。
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ここではタイ・ミャンマー両国民が通勤や通学、買い物などの日常生活の一部として日々往来しています。
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赤ん坊をそれぞれ抱えたふたりの女性が4人乗りでバイクに乗って国境を越えていく光景もごく普通の世界です。
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これが両国の間を流れるサーイ川です。右側の建物はタイのレストランバーです。夜は騒々しそうです。
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タイの出国手続きを終えると、両国の緩衝地帯に入りますが、ここにはミャンマー側の屋台が出ています。観光客が喉を潤すためジュースやフルーツを買っていくからでしょう。のどかです。
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これがミャンマー側のイミグレーションのゲートです。入国は向かって右側から。出国は左側からです。
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ミャンマー(北側)に向かって左側にパゴタが見えます。タイの寺院とは造形が違っています。
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ここで入国許可証を発行してもらいます。その場で写真を撮られ、500Bほど払います。これはミャンマーの辺域に位置する地方政府にとっての重要な収入源だと思われます。毎日入国して来る外国人の数はかなりのものですから。
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これが入国許可証です。

実は、このとき(2013年8月)、ミャンマーの入国係官に「来月から外国人も、ここから陸路でヤンゴンまで行けるようになる」と告げられました。これまでは、外国人がミャンマー国内に陸路で入国したまま、自由に移動することは許されていなかったのですが、この国の対外開放はこんなかたちで進んでいるのです。

それにしても、入国管理官たちがやけに陽気でフレンドリーです。それは前述したように、外国人が地方政府にとっての上客であるからには違いないのでしょうが、ミャンマーの人たちはこれから自分の国がだんだん自由になっていくことを、身をもって感じているのかもしれない。それが彼らの精神状態をハイにしているのでは、そんな気がしてなりませんでした。これは1980年代の中国や90年代のベトナムなどにも見られたように思います。

もっとも、ここではいかにもアジア的な場面に遭遇します。イミグレを出ると、すぐに入国係官の制服を着た若者に日本語で声をかけられました。「あれっ、あなた、また来たの? この前来たばかりでしょう」。

「えっ、…それ人違いじゃない(だって、前来たのはずいぶん昔)」と、一瞬慌てて否定すると、彼はくるっと振り向き、行ってしまいました。これ、タチレイのミャンマー人が日本人相手によくやるおちょくりの一種らしいです。

昔、アジア各地で日本人の背後から「落ちましたよ」と声をかけるという悪戯が大流行していました。そう言うと、日本人は必ず振り向くので、彼らからすると、おかしくてしょうがないのです。まったく「この野郎」と思うのですが、大人から子供まで遠慮なく仕掛けてくるので、これも彼らの悪意のない親しみの表現であると受け入れるしかありませんでした(タイではもうないと思います。でも、ミャンマーなら…)。

おそらく、その若い入国係官も、たいした理由があったわけでなく、ふらりと現れた日本人を軽くからかってみたかったのでしょう。人のいい日本人の中には、声をかけられるとついて行ってしまう人もいたかもしれない。別に詐欺に遭うとか深刻なケースはほとんどなかったとは思われますが、こういう人を脱力させるお出迎えは、久しぶりのことでした。これも、古き良き(?)アジアというべきでしょうか。
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さらに、ここはかつてのアジアだと強く感じさせたのが、イミグレの外に広がるタチレイの町の空気感でした。タイから数百メートルしか離れていないのに、なにやらけだるい熱気や土埃を多く含んだ空気に包まれているのです。赤茶けた粘りのある日差しの感じもそうですし、すくすくと育った熱帯の大樹も、メーサーイの町中ではほとんど見られなかったものです。

わずか100mの空間移動で時空を超えたタイムスリップ感が味わえるのが、タイ最北の町からのミャンマー訪問の面白さといえます。
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通りをまっすぐ進むと、ロータリーが見えてきました。「City of Golden Tryangle」というプレートが見えます。ミャンマー側のゴールデントライアングルを代表する町ということなんですね。
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周辺の建物には、さまざまな広告が貼られていますが、国境の町らしいのは、少数身族たちを登場させたミャンマービールの広告でしょうか。
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タイの「おいしい」ブランドの緑茶の広告もありました。
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実は、イミグレを出たすぐ右側にマーケットが広がっています。通りを埋め尽くすように張り出された傘の下には、さまざまなミャンマー土産が売られています。
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欧米人観光客の姿も多く見られます。
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売り子の中にはムスリムの娘たちもいます。彼女たちの顔に塗られたおしろいのようなものは、ミャンマーではごく一般的な女性の日焼け止めで「タナカ」といいます。彼女たちにとって、これはお化粧ではなく、日焼け止めという認識ですから、塗り方がずいぶんぞんざいに見えますが、これもご愛嬌というか、ミャンマーに来たという気分にさせられます。
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もちろん、こういういま風の女の子たちもいます。お手本はタイなのでしょう。
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海賊版DVDもいろいろあるようです。タイや香港、韓流もあります。日本のドラマもきっと見つかることでしょう。
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高名なお坊さんの読経のDVDも並んでいて、さすがは仏教に篤い国です。
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1時間ほど歩くと少し疲れたので、ひと休みすることにしました。見つけたのは、オープンエアの食堂のような店です。店内から海外のポップミュージックが聞こえてきて、「ミュージック・バー」と書かれています。
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そこはMTVのビデオを放映する食堂でした。せっかくですから、ミャンマービールを注文。
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英語のメニューがあったので、フライドヌードルを頼むと、チェンマイあたりでよく食べるカオ・ソーイに似た濃厚な味付けのやきそばが出てきました。スープ付きです。

昼間からビールを飲んだせいか、食事を終えると、突然ひどい睡魔に襲われました。しかし、その底なし沼に引き込まれていくような感じがなんともいえず心地よいのです。身体がとろけるようなまどろみ感。ここ数日の旅の疲れが出てきたのかもしれませんが、タイやラオスでは感じることはありませんでした。

気がつくと、30分ほどその場に寝てしまいました。別に薬を盛られたとか、そういう話ではありません。思うに、すべてはこの国の、あるいはこの辺境の町の空気感がそうさせたのでしょう。

ふと周囲を見回すと、客はほとんどいなくなり、ウエイトレスの子たちも食事中でした。寝ぼけていたせいか、ピンボケですいません。彼女もタナカを塗っています。
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アジアに来ると、自分の知り合いによく似た女の子がいて、びっくりすることがあります。写真の写りが悪くて彼女には申し訳ないですが、この子もそうでした。「大学時代のゼミの○○さんにそっくりだ。これはどうしたことか」なんて思ってしまうのです。すごく不思議で、おかしな気分です。いったい彼女はいまどこでどうしているのやら?

傍から見ると、そんなことを夢想しながらニヤニヤしている日本人は怪しすぎますが、ミャンマーあたりでは、彼女たちも笑顔で受け流してくれるのはありがたいことです。こういう感じは、もうアセアン第二の経済大国の首都であるバンコクあたりでは感じることはほとんどありません。

それにしても、いったいぼくは何しにミャンマーに来たのだろうか。自分なりに考えた答えは、昼寝をしに、です。これは自分ながら気に入りました。こういう時間がときには必要なんです。
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ミャンマーに来てもうひとつ面白いと思ったのが、車のプレートでした。これホンダ車ですが、この子供の落書きのような文字がミャンマーの数字のようです。かわいくて、なんとも脱力感たっぷりです。

※参考:ミャンマーの数字

夕方が近づいてきたので、そろそろタイに戻ることにしました。再びイミグレで出国手続きをし、タイ側に向かいます。途中、ミャンマー側が経営する免税品店がありました。中を覗くと、ちょっとしたブランド品やワインなどが売られていました。
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急に現代に呼び戻されたような気分になりました。
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タイ側のイミグレに向かう途中、学校帰りなのか、小学生の女の子3人が歩いていました。彼女たちはタイ人なのか、ミャンマー人なのか。どちらの学校に通っているのか? もしタイ語がわかれば聞いてみたいものですが、詳しくはわかりません。
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これが入国管理所です。外国人たちが入国のための書類を書いています。ぼくも書きました。
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タイに戻ると、今度は小型トラックに乗せられミャンマー側に帰っていく中学生くらいの制服姿の男の子たちを見かけました。

タイ最北端の町からミャンマーへの半日観光。しかし、そのわずか100mの国境越えのタイムスリップ感に酔いしれた1日でした。

by sanyo-kansatu | 2014-04-12 13:01 | ボーダーツーリズム(国境観光)


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