2014年 04月 19日

ガイドブック『一人でも行ける日本の旅』をめぐるタイ人留学生との問答集

昨年夏、バンコクで開催されたタイ国際旅行フェアの会場で購入した1冊のタイ語の旅行ガイドブック『一人でも行ける日本の旅(Japan ญี่ปุ่น คนเดียวก็เที่ยวได้)』は、とても楽しい本です。
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タイ人女性カメラマンのBASさん(バス:ペンネーム、本名:オラウィン・メーピルン)が執筆した実践的な旅行案内です。同書は2タイトルあり、彼女が実際に訪ねた日本全国31か所の観光地について見どころや食事、宿泊施設などを詳しく紹介しています。彼女自身が撮影したユニークな写真(タイ人には、日本がこんな風に見えるのかという新鮮な発見も多数あり)や女性らしいイラストを多用し、日本語がわからないタイ人でもひとりで旅行を楽しめるような情報が満載なのが特徴です。

またこの本は、2013年2月12日に在タイ日本国大使公邸で開催された“Reception for Japan-bound Tourism Promotion”において、訪日旅行の促進に貢献した旅行ガイドブックとして「Japan Tourism Award in Thailand」を受賞しています。

もっとも、タイ語が読めないぼくには、詳しい内容はお手上げです。そこで、知り合いのタイ人留学生にこの本を読んでもらい、読後の感想やこの本の特色について話を聞きました。その結果、見えてきたのは、タイ人の日本旅行にとってどんな情報が有用なのか。彼らが日本で何を気にし、何に困っているのか。彼らの旅行意欲を掻き立てるポイントは何か、といったことです。それを理解すれば、タイ人に対する“おもてなし”にも役立つはずです。

以下、タイ人留学生ジャムジュン・モンティチャーさんとぼくとの同書をめぐる問答集です。ちなみに、モンティチャーさんはタイのペチャブリー出身で、都内某大学院で観光学を学んでいる方です。

―『一人でも行ける日本の旅』は面白かったですか。

「はい、この本はよくできているなと思いました。最近、タイで元留学生が日本の体験を綴ったエッセイが出版されています。日本でのアパートの借り方やアルバイトなど生活のエピソードや、国内旅行の話などいろいろ書かれています。私も留学生のひとりなので、よく理解できる内容なのですが、基本的に長期間日本に滞在し、日本語ができることが前提になっています。でも、『一人でも』は、日本語はもちろん、日本のことがよくわからないタイ人でも旅行できるよう、いろいろな工夫がされています」。

―それはどんなことですか。具体的に教えてもらえますか。

「まず四季の解説です。タイには日本のようなはっきりした四季がありませんから、何月から何月までが冬という基本的なことから、それぞれの季節に何が見られるかなど、わかりやすく説明しています」。
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―タイ人に人気があるのはどの季節ですか。

「いちばん人気は春ですね。桜の季節です。タイ人にとって満開の桜は憧れです。次は冬。タイ人は一度は雪を見てみたい。触ってみたいと考えているんです。日本旅行にいつ行くべきかを決めるためには、まず四季を理解しなければなりません」。

―行く時期を決めたら、次はどうやって行くか、でしょうか。

「最近、タイの旅行会社はたくさんの日本ツアーを販売しているので、そこから選ぶのもいいのですが、いまは観光ビザも免除されているので、若い人たちほどツアーに参加せず、個人旅行をしたいと考えています。
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ただし、日本を個人で旅行しようとするとき、いちばん大変なのは移動手段です。交通運賃がタイに比べて高いので、JRパスのような外国人向け割引券の情報は欠かせません。成田や関空から都市圏へのアクセスや、新幹線に乗って日本各地に行く場合の大まかなルートや所要時間も知りたいです。また東京の地下鉄は複雑なので、うまく乗りこなすためには、自動販売機やスイカの使い方などを知っておくと便利です」

―確かにこの本では、交通の利用法についてたくさんのページを割いているようですね。HyperdiaやJorudanのような乗換サイトの使い方も詳しく説明されています。
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「ホテルについても、五ツ星クラスからビジネスホテル、ゲストハウス、旅館、民宿と分けて解説しています。日本に住むタイ人家庭にホームステイする方法も書かれていますよ」。

―これは持ち物チェックリストですね。日本の旅行ガイドブックにもよくあります。右のページは何でしょうか。
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「季節ごとの衣服のコーディネイト例です。タイ人には日本の寒さや暑さがよくわかりませんから、季節ごとにどんな衣類を用意し、何枚くらい重ね着すればいいのかという目安をイラストで説明しています。

またこの本の筆者はカメラマンなので、撮影器材やバッグの収納法なども写真付きで解説しています」

―タイ人は写真を撮るのが好きだそうですね。それぞれの観光地で、どのポイントから写真を撮ればいいか、そういう情報が重要だといいますね。

「タイ人は真似するのが大好きなんです。日本旅行に行った友達のFacebookを見て、自分も同じ写真が撮りたいと。その点、この本はカメラマンが書いているので、撮影のポイントについて細かく触れているのが人気の理由ではないかと思います」

―後半には、コンビニの商品紹介や自動販売機の使い方の解説などもありますね。

「タイにも日本のコンビニはあるのですが、日本でしか売られていない商品も多いので、タイ人はすごく気になるのです。飲み物やアイスクリームの自動販売機も使ってみたくなるんです。

それからこれはタイ人に限らないかもしれませんが、個人旅行する外国人にとって役に立つのは、コインロッカーの使い方でしょうね。駅に荷物を置いて観光したり、買い物したものを置いておいたり、すごく便利ですから。それと、日本語のわからないタイ人が何より知っておきたいのは、ウォシュレットの使用法です」。

―確かに、ボタンがいろいろあってわかりにくいですよね。ここではボタンごとに機能を説明しています。
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「いまタイ人がいちばんほしいのはウォシュレットといわれるくらいなんです。ようやくバンコクの新しいショッピングモールなどで導入が始まっていますが、まだまだ一般的でないので、ウォシュレットと一緒に記念撮影するタイ人もいるほどです。Facebookによく出てきます。あと日本の和式トイレの座り方がわからないタイ人も多い。実は、日本と逆に座るので…」

―そういえば、タイでは便座のないトイレの場合、扉のほうを向いて用を足すけど、日本の和式トイレは背を向きますものね。なるほど、トイレの使い方の情報は重要ですね。

ところで、2冊目のJapan 2には、日本語旅行会話がありますね。これを見て面白いと思ったのは、限られた誌面にタイ人にとって重要なアイテムを網羅しようとしていることです。たとえば、食べ物は全部で34個出てきます。こんな感じです。

お茶、日本酒、ラーメン、すき焼き、しゃぶしゃぶ、そば、焼きそば、そば・うどん、おでん、焼き鳥、お好み焼き、たこ焼き、幕の内弁当、かっぱ巻き、玉子、さけ、いくら、えび、かに、いか、たこ、まぐろ、かつお、さば、あなご、牛肉、とんかつ、天ぷら、丼もの、かつ丼、親子丼、牛丼、天丼、うな重

タイ人の多くは日本に来て、こういうものを食べているのだなあと。やはり、お寿司の光ものは食べないんですね。たこも気味悪がって食べたがらないという話を聞いたことがありますが、そうでもないのかな。

「タイ人は日本食が好きですからね。お寿司もそうだし、最近は日本のケーキがおいしいと評判です。私の友人も日本でケーキを食べたら、タイのケーキは食べる気にならないなんて言っています」。

―それから、温泉に入る作法や浴衣の着方などもイラストでわかりやすく解説していますね。
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「水着はNGとか、お湯につかる前に掛け湯をするといいとか、お風呂の中で日本酒を一杯というのはダメですよと」。

―この本にはたくさんの特色がありますが、まとめるとどういうことになるでしょう。

「この本の書体は若者向けのフォントを使っています。手書きに近いやわらかいフォントで、私が高校生のころ流行っていました。それがかわいいイラストとマッチしています。若い世代向けのガイドブックだと思います」。

―そういう意味でも興味深いのが、この本に紹介される場所です。書き出すとこうなります。

Japan
東京、横浜、鎌倉、富士五湖、箱根、金沢、高山、名古屋、大阪、京都、広島、熊本、指宿、別府

Japan 2
  青森、弘前、田沢湖、盛岡、角館、乳頭温泉、鳴子温泉、仙台、山寺(山形)、蔵王、日光、東京、京都、奈良、神戸、大阪

これを見て思うのは、最初の巻こそ代表的な観光地が網羅されていますが、Japan 2は東北に偏っていて、日本人の感覚からいうと、ほかにもっと王道の観光地があるだろうに、と思ったりもします。また最近タイ人の増えている北海道もありません。

でも、考えてみれば、日本人にとっての王道が必ずしも外国人から見て魅力的とは限らない。それぞれの国の人たちが自分たちの王道を決めればいいことでしょう。震災のあった東北にこの本を読んでたくさんのタイ人が訪ねてくれたらうれしいですね。

「やはり面白い旅行のルートが知りたいのです。どこにどう行けばいろいろ楽しめるか。Japan 2の最後に3つのモデルコースが紹介されています。こういう情報がもっと知りたいです」。

最初のコースが、4泊5日の関西周遊で京都と奈良を訪ねるもの。ふたつ目が9泊10日で、東京から仙台、鳴子温泉、日光をめぐり、そこから急に京都に向かい、奈良と神戸を訪ねて関空から帰国するコース。最後が13泊14日で、東京、弘前、田沢湖、青森、角館、鳴子温泉、仙台、山寺、日光、そしてここでも急に大阪に向かい、京都や奈良をめぐって関空から帰るコース。

おそらく最後のコースは、Japan 2の内容に合わせたルートですね。これを見て思うのは、タイ人にとって京都や奈良の魅力は絶大なのだなということ。仏教国のタイ人にとって古いお寺を訪ねることは大切なんですね。

タイ人が本当に行きたいところだけ行くと、こういう自由な旅になるのでしょう。こういう旅をもっと多くのタイ人が体験できたらいいですね。
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by sanyo-kansatu | 2014-04-19 10:52 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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