ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2014年 05月 06日

中止からはや6年。韓国から入る金剛山ツアーと残されたインフラについて

前回、2013年8月下旬の金剛山登山について報告しましたが、その日の午後は三日浦という湖を訪ねました。
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三日浦は周囲5.8kmの海跡湖で、カメラで風景を切り取ると額縁に描かれた絵画のような世界が現出します。湖の真ん中に浮かぶのが、臥牛島という松に覆われた島です。この三日浦とその東に広がる海岸線の絶景が「海金剛」と呼ばれています。残念ながら、今回は海金剛を訪ねる時間はありませんでした。
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さて、前回紹介した金剛山の登山コースは実によく整備されていました。それには理由があります。

1998年から2008年まで、軍事境界線を越えて陸路で韓国から北朝鮮に入る金剛山ツアーが催行され、延べ約200万人の韓国人、2万人の外国人(そのうち日本人は1000人ほどという話)がこの間、金剛山を訪れていたからです。金剛山近隣の出身だった現代グループの故鄭周永(チョン・ジュヨン)会長が北朝鮮政府と直接対話し、実現にこぎつけたのです。つまり、現在の金剛山観光のインフラをつくったのは、韓国資本だったというわけです。
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金剛山から三日浦に向かう道路は韓国の軍事境界線に向かう道路につながっていて「束草まで68km」とあります
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同じく、「高城港(左上)金剛山ゴルフ場(左下)九仙峰CIQ(右)」と書かれた道路標識

当初は船で入域していましたが、2003年よりバスでの往復が可能になりました。07年から内金剛の観光も許可されたのですが、2008年7月以降、中止になってしまいました。韓国人の女性旅行者が北朝鮮兵に射殺される事件があったこともありますが、その年李明博政権になり、対北関係が悪化したこともあるでしょう。

それ以降、外国人観光客は平壌からバスに乗って元山経由で1日かけて金剛山に来るのが一般的になりました。ちなみに平壌から元山までは約200km、元山から金剛山までは108kmです。

とはいえ、現在も韓国が投資した観光インフラは残っています。それについては、ツアーが催行されていた当時の状況を伝える以下の韓国のオンライン旅行会社のサイトに紹介されています。
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金剛山ツアーパーフェクトガイド(Konest)
http://www.konest.com/contents/spot_hot_report_detail.html?id=1871

同サイトによると、ツアーは2泊3日。スケジュールは、初日は入国とホテルのチェックインまで。2日目午前中に、前回紹介した「九龍淵(クリョンヨン)登山コース」、午後は「三日浦(サミルポ)コース」や「温泉($12)」「サーカス観覧($30)」、夜は「歌舞団公演観覧($10)」。3日目午前中にもうひとつの登山コースである「万物相コース」か「三日浦(サミルポ)&海金剛(ヘグムガン)コース」を選んで参加し、午後には帰国するというものです。

今回三日浦に行く途中、バスからそれらの施設を見ることができました。
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遠くに見える白いドーム状の建物がサーカス場です。
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これは免税店です。
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韓国客が大勢来ていた時に使われていたと思われる韓国製バスが駐車されていました。いまは北朝鮮のホテルなどの従業員の通勤に使われているそうです。
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この建物は、2002年4月~5月にかけて行われた韓国と北朝鮮の第4回離散家族再会以降、金剛山で実施されるようになった常設面接会場として使われたそうです。その後、何度も中断と再開を繰り返しています。

こうしてみると、金剛山は北朝鮮では他にない国際的な水準の一大リゾート地だったことがわかります。今回訪ねていませんが、ゴルフ場もあります。
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さて、金剛山には温泉もあります。金剛山ホテルなどの宿泊施設がある温井里地区の「金剛山ホットスパ」です。
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広いロビーの現代的な施設です。もちろん韓国資本です。
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入浴料は20元でした。フロントで支払います。
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マッサージも出来ます。
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お風呂は個室になっていて、それぞれ内風呂と露天風呂があります。
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なぜかぼくにあてがわれた浴室は、大風呂でした。サウナもあります。
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露天風呂はないぶん、外にはオープンエアのデッキチェアが置いてありました。

浴槽が空だったので、お湯を入れ、しばらく待つことにしました。ところが、お湯の熱いこと。とてもじゃないけれど、入ることができない熱さなのです。水の蛇口がないので、お湯をぬるめることもできません。いったいこれはどうしたことか?

あとで個室風呂に入った人に聞いたところ、やはりお湯が熱くて入れないので、お湯をかき出し、露天に運んでそちらで浸かったそうです。個室風呂は浴槽が小さく、露天風呂もあったので、そういうこともできたようですが、大風呂のぼくは結局、ゆっくりお湯に浸かることができませんでした。

う~ん。思うに、韓国客が来なくなって以来、当然スパの運営も韓国ではなく、北朝鮮側が行うようになったため、ノウハウがきちんと伝わっていないのではないか。こんな熱くちゃ誰も入れない。客が来なけりゃ浴槽にお湯をためること自体減っていることでしょうし。せっかくの温泉が台無しです。

登山の疲れを癒そうと来た温泉でしたが、なんとも心残りの結果となってしまいました。

仕方なくホテルに戻ると、夕食は宿泊している金剛山ホテルではなく、外金剛山ホテルに行くことになりました。

さて、金剛山にある2つのホテルを簡単に紹介しましょう。

●金剛山(クムガンサン)ホテル
1981年にオープン。2004年に現代グループが客室などを改修しています。1階にはバーとダンスフロアもあるカラオケがありますが、ぼくらが泊まった夜は欧米ポップスのかかるクラブと化していて、欧米客と朝鮮の女の子たちが一緒に踊っていました。こんな光景は北朝鮮で初めて見ました。
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もっとも、従業員は北側のスタッフがほとんどです。12階にはもうひとつ渋いカラオケラウンジがあります。そのカラオケの様子は「北朝鮮のナイトライフ~地元ガイドがカラオケで歌った意外な曲は?」参照。

●外金剛(ウェクムガン)ホテル
1984年より「金正淑休養所」として党幹部に利用されてきたホテル(金正淑女史は金日成主席の妻)で、2006年7月に現代グループが内装を改修、「外金剛ホテル」として再オープンしたものです。ロビーにはカフェラウンジや中国料理レストランがあります。ぼくらはそのレストランで夕食をとりました。
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ホテル内には中国人民元や米ドル、ユーロ、日本円の通貨レートが掲げられていました。

金剛山には、他にも2002年にオープンした海沿いの海金剛(ヘクムガン)ホテルがあるそうです。海水浴場が近いそうです。
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韓国客の姿が消えたいま、インフラだけが残された金剛山ですが、こんなミネラルウォーターが生産されているのも、きっと韓国の投資のおかげなのでしょう。韓国の人たちにとっては、なんとも残念というほかありません。
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by sanyo-kansatu | 2014-05-06 00:04 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)


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