ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2014年 05月 26日

バンコクや台北に比べて地味だった上海旅行博(上海WTF2014報告その1)

2014年5月9日~11日に開催された上海旅游博覧会(WTF2014)に行ってきました。実は、WTFに行くのは2004年以来なので10年ぶりです。

日本政府観光局(JNTO)の5月23日付けプレスリリースによると、2014年4月の訪日外客数は3月に続き単月で過去最高の123万2000人。市場別では、中国が第3位(1位は台湾、2位韓国)で前年度比90.3%増の19万600人、昨年9月から8カ月連続で各月の過去最高を記録するという勢いだそうです。

これだけ日中関係が悪化し、南シナ海でも紛争が起こるという政治的な異常事態が続くなか、まるでこの程度のことは慣れっことばかりに、中国客が日本に押し寄せているという状況は、とても興味深いというほかありません。その最大の送客地はもちろん上海です。昨年11月に訪ねたばかりでしたが、中国の海外旅行市場にどんなことが起きているのか、あらためて旅行博の様子を視察してみたいと考えたのです。
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小雨まじりのどんよりした曇り空の5月9日午後、会場に到着しました。以前はWTFといえば、上海市郊外にある浦東の新国際博覧中心で行われていましたが、数年前から市内中心部・静安寺にある上海展覧中心で行われています。

今回のイベントは、上海市旅游局が主催する16回目の旅行博覧会で、海外旅行市場も含めた博覧会としては11回目になります。以下は公式データです。

出展者数:50の国と地域より570団体が出展(合同出展含む)
出展面積:約15000㎡(前回比16.5%増)※販売エリアの面積は前年比24%増
業界関連来場者(業界エリア来場者数):のべ7948人
一般来場者(一般エリア来場者数):のべ約3万8300人※業界エリア入場者の重複カウントはせず

上海では毎年5月にWTFが開催されますが、2年に1度11月に中国国際旅游産業博覧会(CITM)も開催され、今年の秋はCITMがあります。後者は中国国家旅游局が主催するイベントで、浦東の新国際博覧中心が会場です。国家旅游局主催のイベントだけに、全国から業界関係者が集まるぶん、規模的には後者がはるかに大きいですが、逆にいえば、WTFはローカルなイベントだけに、上海の旅行マーケットの現状が見えやすいともいえます。
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会場入り口には、展示場内で催される各国政府観光局のPRイベントや旅行商品の即売会、オークションなどの各種イベントのスケジュールが告知されています。
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会場は、上海万博を機に相次いでつくられた展示会場に比べると、こぢんまりとしたコンパクトなスペースです。建物の前身は1954年に建てられた「中ソ友好大廈」で、展示場として使われるようになったのは1984年。上海で最も古い展示場ですが、スターリン時代に特徴的な中心に高い尖塔を置いたユニークなデザインがひときわ目立っています。
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正面入口から入ってみましょう。中央部の丸いドームの鶯色の天井とそこから吊り下げられたシャンデリア、正面の華麗な透かしとレッドスターといった時代がかったデザインが実に魅力的な空間です。
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向かって正面左手に陣取るのは、韓国観光公社のブースです。この博覧会で最も良いポジション取りはここ数年、韓国の定位置となっているそうです。
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おなじみの韓流スターを総動員させたプロモーションです。あとで訪ねる日本のブースと違っているのは、韓国が「be Inspired」というワンテーマかつオールコリアでPRに取り組んでいることです。
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韓国の観光PR写真では、桜も躊躇なく使われます。なにしろ東日本大震災の年には、「桜を見るなら韓国へ」と堂々とPRしていたくらいですから。
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スキーリゾートのPRも韓流タレントの映像を見せています。

中韓関係の蜜月化が訪韓中国人観光客を急増させています。新華網も「中国の旅行会社は引き続き韓国への大規模な送客計画を執行する」と報じているようですから、これは既定路線というわけです。中国ではいかに政治が観光と直結しているか、よくわかります。

我国旅行社继续执行大规模向韩国“送客计划”(新華網2014年4月6日)
http://finance.china.com.cn/roll/20140406/2314165.shtml

海外からは他にも、タイやバンコク市、フィリピン(中国との関係悪化はここでは関係なしか)、マカオなどのアジア各国・地域、欧州方面ではスイスやエジプトなどが出展していました。
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海外からの出展者がずいぶん少ない印象です。
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とりたてて目立ったブースはありませんでしたが、目についたのは、中国人の観光ビザが免除となったサイパンでしょうか。どおりで最近のサイパンは中国客だらけなわけです。
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いちばんにぎわって見えたのが、台湾のブースだったように思いました。さまざまな懸賞やプレゼント企画を実施していて、ブースの周辺には人だかりが絶えません。
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台湾観光のひとつの売りが「農業観光」です。実は、香港からも多くの観光客が農業体験をするために台湾を訪れていますが、香港同様高層ビルが林立する上海でも、自然体験は大きな魅力となることでしょう。
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これはここだけの話ですが、台湾ブースの中に中華民国国旗が目立たぬように掲げられているのを見つけてしまいました。やりますね。

それにしても、最近の上海WTFというのはこの程度のイベントなんですね……それが正直な印象でした。昨年、タイのバンコクや台北での大盛況な旅行博を見てきただけに、とても地味に見えてしまいます。会場には中高年が多く、若い人はいないことはありませんが、比率はあまり高くないと感じました。

もちろん、これは上海市ローカルのイベントですし、今年で11回目ということもあり、飽きっぽい上海の人たちは、展示ブースが並ぶだけのイベントにそれほど大きな期待感を持たなくなったこともあるでしょう。海外旅行の情報だけなら、ネットでもっと詳しく知ることができると考えられているかもしれません。

こうしたこともあってか、WTFでも数年前から、タイや台湾と同じように、会場での旅行商品の即売会が始まっています。上海の大手旅行会社が、会期中限定の割引商品の販売を行っていました。さすがに、展示ブースに比べ、販売ブースは熱気にあふれていました。

公式発表によると、旅行商品及び旅行関連商品、美食などの現場販売金額:約1801.6万元(前年比33.7%増)といいます。

以下、上海錦江旅行社、上海中旅国際旅行社、上海青年旅行社のブースです。
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上海錦江旅行社 http://www.jjtravel.com/
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上海中旅国際旅行社 http://www.ctish.cn/

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上海青年旅行社 http://www.scyts.com/
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これはネット旅行社の驴马马旅游网(http://www.lvmama.com/)です。中国ネット大手のC-Tripのブースは見当たりませんでした(ただし、特設ステージでのPRイベントには参加していたようです。ブースを出すことに意味はないという合理的な判断からでしょうか)。
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日本ツアーの即売も多数見つかりました。これだけ「立減(値引き)」しているぞ、と強調されています。
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販売ブースの中で最も活気があったのが春秋旅行社でした。スペースも最大規模で、中央に旅行即売コーナーを置き、その周辺にビーチリゾート、クルーズ、春秋航空などの展示ブースを並べており、人のにぎわいも他を圧しています。
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春秋グループといえば、昨年日本の国内LCCとして春秋航空日本を設立するなど、訪日旅行に積極的に取り組んでいることで知られています。今年3月には上海・関空線も就航。夏には関空線を大幅に拡大し、天津、重慶、武漢からの就航も予定されています。彼らの訪日旅行に対する考え方については、関係者に話を聞くことができたので、別の機会で紹介したいと思います。
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※訪日路線の加速と国内線拡充で訪問地の分散化を図る~春秋旅行社日本部インタビュー
http://inbound.exblog.jp/22743078/
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by sanyo-kansatu | 2014-05-26 12:21 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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