ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2014年 06月 04日

なぜ世界は我々に対してこんなに厳しいのか!~中国の最大の関心事はビザ緩和

今回の上海WTFを見ていても明らかなように、中国の海外旅行市場は、かつてのイケイケ感から退潮しつつあるようですが、なんといってもいまや渡航者数、消費額ともに中国が世界最大の観光大国となっているのは間違いありません。
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そんな彼らにとっての最大の関心事は、観光ビザの緩和です。

要するに、外国に行くのに、中国国籍というだけで、大使館に申請手続きを行う必要があったり、国によっては大使館の人間と面接を行わなければならない(アメリカの場合)。個人資産までやたらと調べられたり、とにかく面倒が多すぎる。他の先進国や香港、台湾の人たちは決してそんな必要ないのに、なぜ世界は我々=中国本土人に対してこんなに厳しいのか? 大いに不満である、という、話を聞けば、なるほどそうだろうなあと同情を禁じ得ない問題なのです。

中国メディアもこの問題については、ことのほか敏感なようで、海外の国々と結ばれる新たなビザ緩和報道を盛んに行っています。

たとえば、こんな感じです。

中国外交部「中国のビザ相互免除国は発展した観光先進国」(人民網日本語版2014年1月29日)
http://j.people.com.cn/94475/8525777.html

「中国のパスポートでは、ビザ(査証)なしで滞在できる国が少ないという声が多いことに関し、中国外交部(外務省)領事司の黄屏・司長は28日、記者会見で、その価値はビザ相互免除を実施している国の数だけで判断するべきでないとの見方を示した。新華社が報じた。

黄司長は、「現在、中国は81カ国とビザ相互免除に関する協定を締結している。うち、サンマリノ、セーシェル、モーリシャス、バハマとの協定は、一般パスポートを所持している中国公民にも適用される。これらの国は、貧しい国でも、危険な国でもない。バハマ、サンマリノ、セーシェルの国民一人当たりの国内総生産(GDP)はいずれも中国より上だ。さらに、モーリシャスは有名な観光名所でもある。いずれの国も景色が美しく、観光業の発展した国だ」と指摘。また、「一国のパスポートの価値は、▽そのパスポートを持っていれば容易に出国できるか▽パスポートを所持している人が国外で問題に遭遇した際、すぐに保護やサポートを得られるか---の2つの視野から測ることができる。ビザ相互免除は、ビザの面で便利な措置の1つにすぎない。現在、上記4カ国以外に、6の国や地域が、一定の条件を満たす一般パスポートを所持している中国公民を対象にビザ免除措置を実施しているほか、35の国や地域が、一定の条件を満たす一般パスポートを所持している中国公民を対象に、到着した空港で取得できるアライバルビザを発給している。そのほか、多くの国が中国と、数次査証(マルチビザ)相互発給協定を締結したり、ビザ取得手続きの簡素化、スピード化の措置を実施したりしている」と述べた。

黄司長はさらに、現在、中国とビザ相互免除協定を締結している国が少ない原因に関して、「中国国民の各国への入国数が増加し始めたのは近年で、中国人が大規模に入国するための準備ができていない国も多い。法律や法規の制定や改正は一夜にしてできることではない」との見方を示した。

●ビザ相互免除国:サンマリノ、セーシェル、モーリシャス、バハマ

●中国人を対象にビザ免除措置を実施している国:サモア、ハイチ、韓国済州(チェジュ)島、北マリアナ諸島(サイパン島)、タークス・カイコス諸島、サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島

●アライバルビザ申請可能国:モルディブ、インドネシア、グルジア、ブルネイ、フィジー、コモロ、パラオ、ミャンマー、東ティモール、バーレーン、ヨルダン、アラブ首長国連邦、ラオス、レバノン、ネパール、スリランカ、タイ、トルクメニスタン、イラン、ベトナム、エジプト、トーゴランド、カーボヴェルデ、ギニアビサウ、ガーナ、コートジボワール、マダガスカル、マラウィ、シエラレオネ、タンザニア、ウガンダ、ガイアナ、セントヘレナ島、ツバル、バヌアツ」

海外諸国の中国に対するビザ免除は、一般的にビーチリゾートを有する地域が多いようです。実際、これらの国・地域の中国で行うプロモーションもそうですし、実際の渡航者数も増加の一途をたどっています。

しかし、本当をいうと、中国がもっとビザ緩和を進めてもらいたいのは、欧米諸国に対してです。

7か国、中国人向けビザ発給手続きを続々と簡略化(2014年3月24日駐名古屋中国領事館)
http://nagoya.china-consulate.org/jpn/zgxw/t1140088.htm

「いよいよ春も本番,海外旅行のベストシーズンを迎えた.この1年,海外諸国は続々と,申請から発給までの時間短縮,申請料金の引き下げ,マルチビザ発給など,中国人向け査証(ビザ)の発給手続簡略化・要件緩和化政策を押し進めてきた.人民網観光チャンネルは,中国人のビザ申請の参考として,主要国家の具体的措置を以下の通りまとめた.人民網が伝えた.

1.フランス:短期滞在ビザの発給所要時間を48時間以内に

Jacques Pellet在中国フランス大使は今月18日,「中仏国交樹立50周年記念に際し,同大使館領事部はビザ発給政策を変更する」と発表した.具体的措置は以下の通り.

○中国人向け短期滞在ビザの申請発給手続を簡略化し,申請から48時間以内に発給する.

○居住地による申請先領事館の制限を廃止する.申請者は,中国国内の任意のフランス領事館でビザの申請を行うことが可能となる.

○就労ビザ取得のための提出書類はこれまで,全てについて英語訳またはフランス語訳のものが必要だったが,今後は就労証明書のみとなる.

○フランスを頻繁に訪れる中国人観光客を対象に,有効期間1年から5年の短期数次査証(マルチビザ)を発給する.

2.イタリア:シェンゲン・ビザ取得歴のある申請者に5日以内にビザ発給

イタリア当局は,3月から,過去にシェンゲン・ビザを取得したことのある申請者に対し,申請から5日以内にビザを発給すると発表した.また,シェンゲン・ビザを初めて申請する人は,資格を持った旅行代理店を通じて申請可能で,ビザ取得のための面接は省略される.

3.米国:オンラインビザ申請予約サービス開始

在中国米国大使館は今月16日より,中国人を対象としたオンラインビザ申請予約サービスを開始した.申請者は,この新たなオンライン予約システムを利用して,面接の予約や手続の進行状況をチェックすることができる.また,コールセンターに電話をかけて予約や問い合わせを行うことも可能で,その際の手数料は不要.新システムでは,申請者は,中信銀行の国内支店約900店の希望する店舗において,発給済ビザが刻印・貼付されたパスポートを受領することができる.また,米国大使館・領事館は引き続き,必要資格を満たし,面談する必要のないビザ更新申請者に対し,非移民ビザの更新・発給業務を行う.

4.オランダ:代理人によるビザ申請が可能に

オランダは2013年9月,中国人向けビザ申請・発給手続の簡素化に着手した.今後,長期滞在(3カ月以上)ビザを申請する中国人に限り,在中国オランダ大使館または在上海・広州オランダ総領事館に本人が赴いてビザ申請を行わなければならないが,その他ビザの申請者は,代理人による申請が可能となる.代理人は,申請者の署名入り委任状と代理人の身分証明書(原本・コピー両方)を申請時に提示するだけでよい.このほか,申請者は,面接を予約した日から5日以内に面接を受けることができるようになり,発給までの総所要時間が大幅に短縮される.申請者は,オランダビザ受付センターの公式サイトやコールセンターを通じ,ビザ申請に関するあらゆる情報を入手できる.また,在中国オランダ総領事館に認可されたビザ代行企業や旅行会社は,「橙色ルート」や「青色ルート」と呼ばれる特別申請ルートや「ADS協定(中国人の不法移民を防ぐ目的で各国と中国の間で結ばれた特別協定)」に基づく申請ルートによる申請代行手続を取り扱っている.

5.英国:ビザ申請料金を引き下げ

厳格なビザ取得条件を貫いてきた英国が,訪問ビザ(有効期間6カ月のマルチビザ)の申請料金を80英ポンド(約1万4千円)に引き下げた.また,2013年11月1日から,複数の指定旅行会社が,シェンゲン・ビザ申請フォームを使って,ツアー客に代わり英国入国ビザの申請を行うことを認めた.中国全国で「移動ビザ業務サービス」を展開,VIPへの訪問サービスを開始した.さらに,2014年夏には,「24時間ビザ発給サービス」をスタートする予定.同サービスによって,英国への出張が多いビジネスマンの申請者を対象に,申請から24時間以内の商務ビザ発給が実現する.

6.ニュージーランド:有効期間2年のマルチビザを発給

ニュージーランドは,2013年5月1日より,中国人を対象とした有効期間2年のマルチビザ発給をスタートした.

7.韓国:中国人向けマルチビザの発給対象範囲を拡大

韓国法務部は,2013年9月1日より,中国人向けマルチビザの発給対象範囲を大幅に拡大すると同時に,東南アジア諸国の観光客のマルチビザ制限も緩和した.新規定によると,中国人がマルチビザを所持している場合,その配偶者と未成年の子供も同種のマルチビザを取得することが可能.メンバーズカードの価格が3千万ウォン(約286万円)を上回る韓国国内の会員制ホテル会員も,マルチビザを取得することが可能となった.北京戸籍や上海戸籍を持つ中国人観光客および「211プロジェクト」に指定されている重点建設大学112校に在籍している中国人大学生も,マルチビザ取得の資格を持つこととなった.

上記の国家以外にも,中国とビザ相互免除協定を結んでいるモーリシャス,中国人向けビザが入国時に発給可能なヨルダン,中国とのビザ相互免除協定の締結準備が進んでいるタイなど,中国人の海外旅行がより便利となる環境が,着々と整えられている」

これによると、欧米各国はビザ免除までには至らないものの、
・申請から発給までの所要期間の短縮
・申請料金の引き下げ
・オンライン申請の導入
・査証発給対象の拡大 等による、制度緩和を行っていることがわかります。

一方、近隣アジア諸国でもビザ緩和は進んでいますが、全面的なビザ免除にまで至った例はないようです。

なかでもこの方面で積極的な韓国は、今年新たなビザ関連制度を導入しています。その特徴は、ひとことでいえば、「お金さえあれば」優遇する制度だといえます。

韓国訪問優待カード発行制度の開始(2014年3月17日施行)

○以下のいずれかの条件を満たす場合、韓国訪問優待カードを発給
・直近の5年間に韓国で3万USドル以上の消費を行った
・優待カードを発行する金融機関(友利銀行)に5000万ウォン以上の預金を1年間に渡って行っている
・領事館、KTO、文化体育観光部等の推薦を受けた(中央省庁の局長級以上の政府関係者、有名芸能人等を想定)

○同優待カード所持者には、
・5年間有効の訪韓数次査証発給が行われる他、
・出入国の際に専用ゲートを利用可能
・デパートや免税店でのショッピングにおける割引
・ショッピング補助員の支援
・観光地での通訳による案内 等のサービスが受けられる。

これを以て、韓国政府は同優待カードの申請資格を有する中国人は2000万人と予測しているそうです。

韓国内空港経由で済州島を訪問する中国人団体旅客に対する72時間以内査証免除滞在制度の拡大(2014年4月6日施行)

○済州島を目的地とする中国人団体旅客が韓国内で乗り継ぎを行う際、査証免除で72時間空港周辺地域に滞在できる同制度。
○乗り継ぎ対象空港にこれまでの仁川・金海に加えて、襄陽・清州・務安の3空港を追加。
○これにより、上記5空港を経由して済州島を訪問する場合、首都圏(ソウル市、京畿道、仁川市)及び各空港所在周辺地域の72時間以内の滞在が査証免除で可能。

以前、中国人のビザ緩和に対する関心が、彼らの自尊心や面子に直結する問題であると書いたことがあります。

世界一になったのに、なぜビザ緩和が進まないのか~中国の不満とその言い分(COTTM2013報告 その4)


そういう意味では、安倍政権になって日本のアセアン諸国に対するビザ免除が相次いで進められている現況について、いまの中国人がどんな思いでいるか、想像するに余りあります。もっとも、自国の政治状況に翻弄されるのは彼らにとって日常のことですから、これだけ日中関係が悪ければ仕方がないと割り切っている面もあるでしょう。そこは日本人の感覚とは違うはずです。

ただし、こちらがその話題を安易に振れば、食ってかかってくるだろうということは容易に想像されます。なぜ日本は中国に対してだけ厳しいのか!と。ここはそっとしておくしかなさそうです。
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by sanyo-kansatu | 2014-06-04 11:35 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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