ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2014年 06月 14日

日本法人設立の目的は中国への国際線就航です(春秋航空日本市場開発部インタビュー)

先頃、日本で4番目のLCC・春秋航空日本の国内線就航開始が6月末から8月上旬に延期となったことが報じられました。それ以前に他のLCCも減便を迫られる事態がつたえられていたばかりでしたから、日本のLCCの抱える課題が浮き彫りにされた面がありましたが、その一方で今年3月同社の母体である春秋航空の上海・関空線が就航し、その後も日本路線を積極的に拡大する動きが伝えられています。日中関係が最悪といわれるなか、春秋グループでは日本におけるLCC設立をどう位置づけているのか。日本への路線拡大の目的は何なのか。

春秋航空日本、8月に就航延期、高松線減便も-最大1万席に影響(トラベルビジョン 2014.6.8)
http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=61885
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昨年11月上旬、春秋航空日本市場開発部の孫振誠部長に話を聞きました。場所は、上海紅橋空港のそばにある同社オフィスビルです。

―中国の旅行会社で自前の航空会社を持っているのは春秋旅行社だけだそうですね。なぜ航空会社を持とうと考えたのですか。

「航空会社を設立する前から、春秋旅行社ではチャーター便ビジネスを積極的に手がけてきました。中国は団体客も多く、ツアーコストを下げられるチャーター便利用のツアーは人気があるのです。1997~2004年までの7年間で約3万便です。こんなに飛ばせるなら、自社で航空会社を持ったほうがいいと考えるようになるのは当然です。ドイツの旅行大手のTUI が航空会社を持っていることから、我々も学んだのです。

国内線の申請は2004年、就航は05年6月18日からです。最初は便数が多くないため、運営は苦しかったです。1日10機以上飛ばないと赤字になる。それでも、コストを下げるためのあらゆる工夫をして1年目から黒字となりました。中国では、それまでLCCの運営は不可能だろうと言われていましたが、我々は不可能を実現したのです」

―黒字になった理由をどうお考えですか?

「以下の5つの理由があります。
①チケットはすべてネット販売
②1機あたりの1日の運航時間を11時間とすること(通常は9時間)
③座席数は180とする(通常は157)
④オフィスビルは質素にするなど、できるだけ余計なコストをかけない
⑤搭乗率が高い(05年以来、平均95%を維持)

春秋航空の方針は、これまで飛行機に乗ったことのない人に乗ってもらおう。バスのように気軽に使ってもらおう、というものです。だから、席が余ったら1円でも乗ってくださいと。それをやったら、2012年秋の上海・茨城線で失敗しましたが(笑)。中国国内で反発が出たんです。発売後、3日目で中止となりました」

春秋航空、佐賀・高松~上海の「1円航空券」中止(2012.10.19)
http://www.j-cast.com/2012/10/19150671.html

―御社の考え方は、世界のLCCと共通していますね。むしろ、日本のLCCより国際標準に近いともいえる。中国国内にいくつかのハブを設け、展開していくという路線拡張戦略もそうです。確か、春秋航空のハブは上海と瀋陽、石家庄だそうですね。瀋陽は東北地方の中心都市ですからわかりますが、石家庄がハブとなった理由は何ですか?

「新規路線やハブをつくるには条件があります。現地の協力や誘致の熱心さによるところが大きい。特に現地政府が承認するとやりやすくなります」

―石家庄は北京に近いからでしょうか。

「北京空港には我々は乗り入れすることができないんです。何年も前から申請していますが、認められない。石家庄は北京から200kmあります。北京からいちばん近いのは天津で、近いとはいえない。でも、石家庄の政府が非常に協力的でした。石家庄空港は春秋航空就航以後、他社便の乗り入れも増え、空港利用者が大幅に増加しました。潜在的なマーケットはあったんです。ただ、そこを開拓しようとする航空会社がなかった。我々が最初に乗り入れたことで市場が生まれたのです」 

―北京のような主要空港は国営航空会社の既得権があるからでしょうね。そして、いよいよ国際線就航にも着手しました。最初の国際線は2010年7月の茨城。なぜ日本を最初の就航地に選んだのですか。

「国際線は2008年頃から計画を始めました。これから中国は海外旅行客が増大するだろう。弊社が使うエアバスは運航効率から考えて5時間圏内だったので、東南アジアの一部や韓国、日本の中からどこに最初に飛ばすか考えました。

なかでも当時は日本からの訪中人口が多かった。経済交流も進み、双方の国の人の往来が頻繁でした。また中日路線は利益率がいいという経済的な理由もありました」 

―確かに、2007年は訪中日本人が過去最高の400万人近かった年ですものね。いまは中韓間のほうが多そうですが。そのとき、日本線開拓のために尽力されたのが孫さんだったのですね。

「はい、そうです。当時、日本の都道府県の半分くらいの関係者が誘致のために弊社にいらっしゃいました」

―ここに来たんですね。

「はい、うちのオフィスは古くて、会議室も少ないのですが…。なかでもいちばん熱心だったのが、茨城県でした。県知事からも強く誘致を呼びかけられました」
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―航空会社から見て、路線を決めるうえでどんな協力がありがたいですか。

「第一は、LCCですからコスト引き下げにいかに協力していただけるか。もちろん、現地の人口規模や経済発展の状況も関係あります。茨城県は首都圏にあり、人口もある。在日中国人は東京在住者が多く、家族の里帰りやビジネス客など、日本と上海を行ったり来たりする人も多い」

―以前、私も春秋航空が茨城空港に就航したばかりの頃、同路線の客層について御社の関係者に話を聞いたことがあるのですが、上海・茨城線は「在日中国人の生活路線」だと知りました。就航当初は週4便でしたが、いまは週6便ですね。

※LCC、海外ドラマを呼び込め!めざすは「東アジアグローバル観光圏」! 地方空港サバイバル奮戦記
http://inbound.exblog.jp/16713389/

「これまで震災などもありましたが、この路線の乗客は減っていません。2010年当時は、まだ日本にLCCが存在していなかったので、時期が良かったと思います。春秋航空はいまもそうですが、日本でほとんど広告をしていないのですが、メディアが扱ってくれたのはありがたかったです」

―以後、高松、佐賀と就航地が増えました。

「高松も県の方が熱心でした。国の指導者の力も影響がありますよ。当時は民主党政権で、元鳩山総理から高松線を就航してほしいという話が弊社に直接あったことも大きいです。その半年後、佐賀も決まった。佐賀から福岡まで1時間です。福岡空港は市内に近く、滑走路が1本しかないため、これ以上の新規乗り入れは不可能だったのです。また長崎はすでに東方航空が飛んでいて競合するので考えられなかった。いちばんかわいそうだったのは、12年9~10月、鳥取へのチャーター便が領土問題でキャンセルとなったことです。鳥取県との間で手続きが全部終わっていたのに、とても残念でした。

いま最も誘致に熱心なのが北海道です。先月(13年10月)、視察に行きましたが、そのとき聞いたのは、北海道のほとんどの空港で利用者が減少しているという話です。ところが、北海道の関係者と話したとき、彼らは北海道には観光的な魅力がたくさんあるので、心配はありません。ぜひうちの空港に就航してほしいと言いました。でも、私はその思いはだめですと答えました。いまは新千歳空港だけ利用客が増えているそうですが、就航するためには、上海でもっと宣伝しないといけないし、どんな協力をしていただけるのか、具体的な内容がないと困ります。いずれにせよ、すでに中国の航空会社が就航している地方航空に飛ぶことは考えていません」

―今後、日本路線の新規就航先は決まっていますか?

「いまのところ、関空(すでに2014年3月15日就航)への就航を考えています」

―そして、10月に春秋航空日本株式会社を設立されました。その目的は?

「日本で航空会社を設立したメインの目的は、現状では中国からの乗り入れの難しい成田や羽田から国際線を中国に飛ばすことです。以前は関空も難しかったが、いまは乗り入れしやすくなりました。関空の利用者目標は2500万人で、現在は約1300万人。余裕があります。

春秋航空が北京に乗り入れできないのも同じ理由からです。でも、日本の航空会社になれば、成田や羽田も利用できる。これは茨城線就航後、すぐに考えたことです」 

―まずは成田から広島、高松、佐賀への国内線から始めるわけですね。

「新しく設立した航空会社は、すぐには国際線を飛ばせません。国内線で実績を積んでからです。でも、来年末くらいには飛ばしたいのですが…」

―国内線が就航すれば、佐賀と高松は上海からの国際線が飛んでいるので、成田へ接続し、茨城から帰国するというルートができますね。いまの中国客は東京・大阪ゴールデンルートに集中しているので、ツアーコースにバリエーションができる。これは日本側にとってありがたいことです。

「今後は中国の地方都市から日本路線を増やす予定です。中国は人口が多いので、1%でも1300万人、大きいですよ。最近、中国人は年に何回も海外旅行に行きます。私の娘もそうです。日本は近いし、1990年代からたくさんの中国人が日本に留学したり、仕事をしたり、つながりが多い。日本のよさを良く知っている。韓国は1回行けばいいでしょう(笑)」

春秋航空、関空拠点化へ-7月に武漢、天津、重慶線開設、上海線増便も(トラベルビジョン 2014.5.28)
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=61719
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―でも、今年(2013年)は韓国に行く中国客は450万人になるそうですよ。

「それは中国と日本が喧嘩しているからです(笑)」

―そういう難しい状況にありながら、春秋グループは日本で航空会社と旅行会社を設立し、旅行市場の拡大のために奮闘しているのですね。

「うちの会長は昔から日中友好のためにいろいろやっていますよ」

―王会長と日本との縁は?

「1988年から鹿児島の修学旅行生の受け入れをやっています。息子さん(次男)も日本に留学し、いまは春秋航空日本の会長です。

日中には長い友好の歴史があります。それに比べれば、戦争の歴史は短い。日中はときどき喧嘩しながらも、友好的にやってきた。夫婦も同じでしょう。これからもトラブルはあると思います。でも長い目で見たら、友好的にやるのがいい」

―春秋グループの歩みを見ていると、国際標準に沿った明確な戦略を持ち、一つひとつ市場を着実に開拓していけば、結果がついてくることを教えられます。こうした民営企業が中国にあることを我々はもっと知らなければならないと思いました。そもそも新規路線の就航のための努力は、中国でも日本でも基本的に変わらない。これまでずっと国内で経験してきたことの積み重ねなのですね。こういう経験を持っているのは中国では春秋航空だけでしょう。中国ではLCCは春秋以外にはないのですか? 最近、関空に就航した吉祥航空は?

「中国では吉祥航空はLCCとは思われていません。日本でいうとスカイマークみたいな存在です。安いイメージはあるが、LCCほど安くない。最近、西北航空(海南航空)や東方航空がLCCを設立するという話がありますが、どうでしょう。

―こうしてみると、春秋グループはいつも時代の先駆けといえますね。

「強みは母体の春秋旅行社です。中国国内で15年間連続、取扱数と売上がナンバー1の旅行会社です」

春秋旅行社の創立は1981年。最初はスタッフ10名ほどの小さな会社だったそうです。87年に国際旅行業務を申請。海外客の受入を開始しました。孫振誠部長は、92年春秋旅行社に入社し、当時は訪中日本客担当(インバウンド)でした。2009年、茨城路線開設のために、春秋航空に移籍しています。

経営コストの切り詰めのため、ずっと古いオフィスに拠点を置いていた同社も、今夏ようやく上海市内に新本社ビルができる予定だそうです。これから同グループがどんな訪日旅行の世界を切り開いていくのか、大いに注目したいと思います。
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上海浦東空港で見かけた中国人団体ツアー客
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by sanyo-kansatu | 2014-06-14 13:12 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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