2014年 11月 29日

大連現代博物館の近代史の展示は台湾に似ている!

今年7月下旬、大連を訪ねて足を運んだいくつかの場所の中でとても興味深かったのが、大連現代博物館でした。
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大連現代博物館は2002年、いわゆる「愛国主義教育基地」としてオープンした博物館です。当初は改革開放以降の大連市の発展を紹介するプロパガンダ施設としかいえない代物でしたが、07年市政府はリニューアルを決定。13年4月に再オープンされました。その目玉常設展が「近代大連」です。ここではアヘン戦争の1840年から1949年の新中国建国に至る大連の歴史を扱っています。
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もともと小さな漁村にすぎなかった大連の誕生は、19世紀後半にロシア帝国がこの地に進出し、自由港とするべく港湾施設を建設したことに始まります。
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その後、日露戦争(1905)の勝利によって大連建設の主導権が日本に移ります。
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その遺構である「関東都護府」などの石碑も展示されます。
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大連港の建設や満鉄の設立、市街地の発展、路面電車の敷設など、見事に発展していく大連の近代史を豊富な写真や遺品で紹介していきます。
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この展示はいくつかのコーナーに分かれていて、中国ではお約束ともいうべき「人民反抗闘争」のコーナーもあります。
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しかし、何より驚いたのは、もうひとつのコーナーです。1840年~1945年の日本統治期を含めたその期間を「多元文化的交流与融合」の時代と位置づけ、当時の街の様子や人々の日常の暮らしを紹介していることでした。以前、旅順にある歴史博物館をすべて訪ねましたが、そこでの展示は、日本帝国主義の侵略と人民の抵抗だけの内容でした。それに対し、「多文化的交流と融合」の時代とは……。今日の中国では稀有ともいうべき斬新なコンセプトといえます。
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面白いのは、日本統治期に「浪速町」(現在の中山広場から旧ロシア人街に通じる通り)と呼ばれた繁華街のジオラマや、現在では跡形もない大連神社の太鼓(どこに保存されていたのでしょう?)の実物など、当時の市民生活の実像を紹介する展示がいくつもあったことです。
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そこには、中国の他の都市では決して見られない、戦前の日本と関わる史実を「歴史」として公平に扱おうとする姿勢があるのです。日本の記憶をすべて否定の対象とするのではなく、「多文化」の融合した時代の象徴として展示すること。そこには日本統治期を相対化しようとする視点があります。以前訪ねた台湾の歴史博物館の展示に似た印象を持ちました。

しかし、それはふつうに考えてみれば当然のことだ思います。なにしろ大連で都市建設が着手されたのは19世紀末のこと。自らの歴史を史実に沿って語ろうとすると約100年という短いスケールの中で日本の記憶を除き去ることができないのは無理もありません。それは上海の歴史博物館が西洋列強の租界を自らの歴史として取り込んでいるのと同様だからです。日本が占めた時間の意味をことさら誇張するつもりはありませんが、逆に政治的な意図があったため、これまで中国の歴史展示はそれを無視してきたといえます。

大連現代博物館の「近代大連」は、日本による侵略一色に塗りたてられていた中国東北地区の歴史展示を、固有の地域史として市民の実感に即して描き直そうとする野心的な試みではないかと思います。

しかし、ここは2010年代の中国。習近平体制以降、過去へと時代が逆行するような時勢の中で、このままずっとこの展示が許されるのだろうか。正直なところ、心配になったほどです。

ですから、あまり騒ぎ立てたりすると中国当局が反応してはまずいので、皆さんそっと足を運んでいただきたいと思います。実は、ぼくはこの博物館の館長と面識があるのですが、名前も伏せておこうと思います。その方に迷惑がかかると申し訳ないからです。中国とはどうしようもなく、そういう国だからです。

大連現代博物館の意欲的な取り組みは、近代史の展示だけではないようです。ちょうど訪れたとき、別の展示室で中部アフリカの民族文化の企画展も開催していました。アフリカへの莫大な投資を進める今日の中国が、市民に対して異文化理解を深めることを目的とした企画という意味であれば、これも興味深いといえます。
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さらにいうと、日本のアニメ文化の企画展なんてのもあったようです。
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大連現代博物館
沙河口区会展路10号
http://modernmuseum.dl.gov.cn
星海広場の北端にあります。
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by sanyo-kansatu | 2014-11-29 15:15 | 北東アジア未来形:満洲の今 | Comments(0)


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