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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 01月 18日

「怖いほどの韓国の中国への接近」の最前線、済州島の投資移民

今朝の朝日新聞に、韓国済州島への中国の投資移民に関する以下の記事が掲載されていました。

(波聞風問)中韓急接近 済州島が映す異なる視座(朝日新聞2015.1.18)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11557071.html

「韓国の「ハワイ」とも呼ばれる済州島(チェジュド)。世界自然遺産の韓国最高峰、漢拏山(ハルラサン)のふもとに、高級チャイナタウンが姿を現しつつある。

「熱烈歓迎参観」。ハングルではなく、赤い漢字がおどる。中国の不動産大手「緑地集団」が手がけるマンション「漢拏山小鎮」。1戸約200平方メートルが、約9億ウォン(約9800万円)する。

「お客は中国人です」。ショールームの中国人社員は、明言する。微小粒子状物質PM2・5の数値を北京や上海と比べた広告で、環境の良さも強調している。2013年から400戸を売り出し、8戸を残すのみという。

島に住む翻訳家の男性(40)はこぼす。「高台の高級マンションから、中国人に見おろされている気分だ」。娯楽施設など周辺であいつぐ開発計画をめぐって、環境破壊を懸念する声もあがる。

韓国紙中央日報によれば、中国人が所有する済州島の土地面積は、14年6月までの4年半で約300倍に。外国人全体の43%を占め、国別では米日を抜いて首位。5億ウォン以上投資すれば永住権につながる居住権を得られる制度も、中国人をひきつける。ホテルや店舗への投資もさかんだ。

観光が重要な収入源の島で、外国人客の9割近くが中国人。中国語が飛び交う免税店のそばで、「罰金」を示す看板に目がとまった。

信号無視は2万ウォン、たんをはいたら3万ウォン、あたりかまわず大小便をしたら5万ウォン――。中国語と英語、ハングルで記されている。近くの店員は「中国人観光客を意識したものです。マナーが良くない人もいる。でも大事なお客様ですからね」。

中国経済が急減速したり、関係悪化で中国政府が観光や投資を抑えたりしたら、島はどうなるのか。人口約60万人の済州島は、複雑な思いを抱きながらも中国依存を強める韓国の「最前線」にみえる。

訪韓外国人の4割強が中国人で、14年も前年比4割増の勢い。中国からの直接投資(申告ベース)も2・5倍に膨らんだ。成長を輸出に委ねるなか、中国との貿易額は日米との合計を上回る。金融面でも、外貨預金に占める人民元の割合は11年の1%弱から3割に急増し、いまやドルに次ぐ存在である。

経済に歴史認識……。日本からみると怖いほどの韓国の中国への接近ぶりを、木村幹・神戸大学教授(朝鮮半島研究)は「現政権の志向ではなく、構造的なもの」と指摘する。安全保障面でも、韓国は米中関係を「共存」と認識しており、「対立」を軸に考える日本とは外交の前提となる国際環境が異なる、と。

視座を変えて相手が見ている風景を想像してみる。正否ではない。そこに、対話の糸口があるかもしれない」

昨年5月、上海浦東空港の出国ロビーで、この記事の指摘する「高級チャイナタウン」の宣伝ブースを見かけていたので、なるほどそういうことになっていたのかと思いました。これが「漢拏山小鎮」のイメージ地図です。
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いまや中国全国の不動産ショールームならどこでも見かけるジオラマも展示されていました。
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販売を手がけるのは、中国第2の不動産会社「緑地集団」です。
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緑地集団について(百度)
http://baike.baidu.com/view/2291611.htm
緑地集団は、2014年の「フォーチュングローバル500」で268位にランキングしている不動産企業。14年の不動産販売面積は、前年比で30%拡大。14年の販売収入総額は2408億元(約4兆6664億円)となる見込み。

最近の中国では海外旅行と投資移民の話が不可分の関係で語られていることは、以前本ブログでも指摘したことがありますが、ニューヨークやオーストラリアの不動産物件の買収話だけではなく、身近な投資先として済州島がここ数年注目されていたのです。

中国の海外不動産投資ブームをいかにビジネスチャンスとするべきか(COTTM2013報告 その5)
http://inbound.exblog.jp/20520343/

これは投資移民のためのサイトの済州島のページです。

济州岛汉拿山小镇 - 韩国投资移民
http://www.jejuvip.com/forum-39-1.html
物件の紹介だけでなく、韓国では50万ドルの投資が必要なことなど、移民のノウハウを解説しています。いまの中国人の投資移民熱には、「いつでも逃げられる海外の拠点を用意しておきたい」という彼らの正直な願望が背景にあると思います。

それにしても、済州島を訪れる「外国人客の9割近くが中国人」という状況にはビックリですが、韓国政府の施策でこの島に限って中国パスポートでもノービザなのですから、当然かもしれません。先日東京を訪れていた中国瀋陽の旅行会社の友人も、最近の中国人の韓国旅行先はソウルか済州島のどちらかで、後者の人気が高いと話していました。ツアー料金が驚くほど安く、ノービザなのがいちばんの理由といいます。

2014年に600万人を超えた訪韓中国人数は、今年も増加し、700万人を超えるといわれています。問題は、以前も指摘したように、地元では「中国客が増えても大歓迎とはいえない」事情があることでしょう。

中国客が増えても大歓迎といえないのは韓国、台湾でも同じらしい
http://inbound.exblog.jp/23872141/

記事の主張(韓国の視点から東アジア情勢をみることが対話の糸口にならないか)は、中国の韓国への投資移民の話を日韓関係に結び付けようとするところに少々無理を感じますが、こうした複合的な視点は常に必要なことだとは思います。

もっとも、いま済州島で起きていることは、専門家も指摘するように「現政権の志向ではなく、構造的なもの」でしょう。歴史的にみて、かつて起きていたことのひとつの再現なのだと思います。

気になるのは、記事でも指摘するように「中国経済が急減速したり、関係悪化で中国政府が観光や投資を抑えたりしたら、島はどうなるのか」。おそらくこれも、歴史的にみれば再現するかもしれません。その日にどう備えるのか。すなはち、済州島のチャイナタウンが中国全土に増殖する鬼城になる日にです。なぜなら、済州島で起きていることは、中国国内で起きていることにそっくりに見えてしまうからです。

by sanyo-kansatu | 2015-01-18 12:45 | 気まぐれインバウンドNews


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