ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 01月 20日

ベトナムの「反中」、日本語学習ブームとインバウンドの関係

訪日ベトナム客の特性を考えるうえで参考になりそうな記事(昨年9月に配信)2本を紹介します。いずれも、南シナ海における中国との確執を契機に、ベトナム国内でこれまでの依存し過ぎた対中関係にバランスを改めようとする動きといえそうです。

ベトナム冷めない「反中」 政治的な対立は沈静化(朝日新聞2014.9.5)

南シナ海のベトナム沖から中国が石油掘削施設を撤収して1ヵ月半がたつが、ベトナム国内の「反中国」ムードが収まらない。伝統的なお祭りを前に「海を守れ」と書かれたランタンが大流行。政府も寺院などには「中国風の獅子像を撤去せよ」との指令を出した。

ハノイ旧市街では8日の中秋節を前に、祭りで使うランタンや玩具が数多く売られている。今年目立つのは、ベトナム国旗や巡視船のイラストが描かれ、「島の主権を守れ」「がんばれ海軍」などのメッセージが入ったものだ。

セロハンで巡視船そのものの形をデザインしたランタンも登場した。一つ4万~5万ドン(約200~250円)。小学生の子どもに「海と島が好き」と書かれたランタンを買った女性アイさん(34)は「子どもたしに領域を守る大切さを教えておかないと、中国に取られてしまうでしょ」。

店員によると、愛国デザインのランタンはホーチミン市の業者が今年新たに製造し、「一番の売れ行き」だ。昨年までは、アニメの主人公をあしらった中国製のランタンや玩具が主力だった。「(中国製のものは)きっと売れないと思ったので、できるだけ排除した」という。

中国は5月から100隻以上の船団を引き連れ、南シナ海・パラセル(西沙)諸島近海で石油掘削活動を展開。ベトナムの巡視船と洋上で激しく対立した。7月半ばに中国が立ち去り、8月下旬にはベトナム共産党書記長の特使が中国を訪れるなど政治的な対立は沈静化している。

だが、全土に広がった国民の反中感情は収まっていない。国営テレビは中国の連続ドラマの放送を打ち切り、観光業者による中国へのツアーの多くも中止されたままだ。

さらに、文化スポーツ観光省は最近、全国の寺院や商業施設に、門前に縁起物などとして飾る中国風の獅子像の撤去を求める省令を出した。「ベトナム文化を尊重するため」とし、洋風のライオン像なども対象としているが、反中機運を受けての政策だ。

中国は、ベトナムにとって最大の輸入相手国。極端な中国離れは経済的にマイナスとの意見もあるが、著名な経済学者のレ・ダン・ズアン氏は「ベトナムはこれまで中国に依存しすぎていた。中国離れの影響は一部に出るが、長期的にはバランスを改めるチャンス」と前向きに捉えている。


次の記事は、バランスを改める動きが日本に対する関心に向かっているという内容です。

ベトナム、日本語熱沸騰(朝日新聞2014.9.9)

ベトナムで空前の日本語ブームが起きている。昨年度の日本への語学留学生は前年度の4倍で、日本語試験の受験者も東南アジアで断トツだ。

午後6時半、ハノイのオフィスビル20階の教室に学校や仕事を終えた若いベトナム人が集まる。

「謝るときのペコペコと空腹のペコペコは同じですか」「グズグズとノロノロの違いは何ですか」

5人の生徒が日本語の本を読み、気になった表現を質問していく。日本企業への就職や日本留学を目指した私塾だ。リクルート出身の阿部正行さん(66)が2005年に立ち上げた。

これまで約180人を日系企業に「正社員」として送り出した。エンジニア志望のニャンさん(23)は「3Dプリンター技術に興味がある」と日系企業への就職を目指す。

ブームの背景にあるのは、国際環境の変化だ。日中関係の悪化で中国からベトナムへ拠点を移す日系企業が増え、商工会の加盟数は1299社(14年4月)と、5年で約1.5倍も増えた。いまや学生にとって日本語習得が「就職への近道」になっているのだ。

南部ホーチミンで91年に開校した老舗のドンズー日本語学校では、12年に約3千人だった生徒数が13年に4千人を突破。日本語能力試験のベトナムの受験者数は昨年2万6696人で東南アジアで1位。2位のタイ(1万6800人)を大きく引き離している。

留学生も増えている。ベトナム北西部のディエンビエンフー高校では今年、初めて日本への留学生を出した。貧困層が多い地方からの日本留学はまれだ。ラム校長(56)は「東日本大震災の際の冷静な対応、サッカーワールドカップでゴミを拾う姿に感動した。知識はどこでも学べるが、人格教育なら日本」と学生に日本留学を勧めている。

日本語教育振興協会(東京都渋谷区)によると、02年度に日本国内の日本語教育機関で学ぶベトナム人は198人で全体の0.5%。ところが13年度には前年度比4倍超の8436人になり、2386人の韓国を抜いて2位となった。

一方で、トラブルも目立ち始めている。「日本で簡単にアルバイトができる」と誘われて留学したが、バイト先が見つからず、万引きなどの犯罪組織に引き込まれたりするケースが報告されている。


ベトナム人の日本語能力試験の受験者数が東南アジアで1位。さらに、国内の日本語学校の生徒数も2位なんですね。確かに、最近都内の居酒屋でベトナム人アルバイトの姿をよく見かけるようになったと感じていました。

これは1980~90年代に急増した来日中国人と似た状況がベトナムで起きているということでしょう。人員不足に悩む業界関係者にとっては朗報かもしれませんが、ベトナムの若い人たちを見ていると、彼らは中国人とはまた違った意味で、とても自尊心の強そうな印象があります。

「人格教育なら日本」というのはありがたいお言葉ですが、現在は「反中」機運が作用して日本が選ばれている面が強いと考えられます。そんな彼らの心情を理解し、大切に扱わないと、同じ歴史を繰り返すことになってはたまりません。

こうした動きとインバウンドの関係についていうと、あるベトナム人旅行関係者の話では、ベトナム人が日本に旅行に来ていちばんガッカリするのは「メイド・イン・チャイナ」の商品があふれていることだといいます。彼らは日本に来て「メイド・イン・チャイナ」は見たくないというのだそうです。そう言われても困ってしまいますが……。

ベトナムからの日本ツアーは6泊7日1600ドルが相場(アセアン・インドトラベルマート2014その1)
http://inbound.exblog.jp/22756970/

こうしたことからホテルの客室の振り分けも、中国客とベトナム客がいたらフロアを別にするなど、これまで必要とされなかった細かい配慮も求められそうです。
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by sanyo-kansatu | 2015-01-20 11:19 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)


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