2015年 04月 02日

台湾で日本のクスリと美容商品が人気の理由

台湾のドラッグストア研究家の鄭世彬さんから聞いた話の続きです。前回、どうして彼が日本の医薬品や化粧品のガイド書を書くに至ったかについて、また彼の全著作も簡単に紹介しました。今回は「台湾で日本のクスリと美容商品が人気の理由」について話を聞こうと思います。

台湾で売れてる日本のドラッグストア購入ガイドが面白い
http://inbound.exblog.jp/24310398/
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『東京藥妝美研購』(2012年11月刊)p22-23より。


―鄭さんの本の中には日本のOTC(市販の)医薬品と美容商品がたくさん紹介されていますが、なぜ台湾の人たちの間で人気なのか、オススメの理由も含めてそれぞれ教えてもらえますか。そもそも無数にある日本の商品の中から、なぜこれらが選ばれているんでしょうか。

「ぼくが日本に遊びに行くとき、家族や知り合いから必ず頼まれるものがあって、それを中心に選んでいます。台湾では、日本の薬をお土産として配る習慣があるんですよ」。

―台湾の人たちは、どんな薬をよくお土産に買って帰るんですか?

「胃腸薬や虫刺されの薬でしょうか。たとえば、虫刺されでは『ムヒ』や『ウナクール』。台湾は日本に比べて暑いですから、虫は当然多いです。ところが、虫刺されのいい薬がそれまでなかったんです。メンソレータムの軟膏はあったけど、『ウナクール』のほうがかゆみによく効くことを誰かが発見し、すぐに爆発的な人気になりました」。

ウナクール(興和)
http://hc.kowa.co.jp/otc/359

―いつごろからのことなんですか?

「ぼくが初めて『ウナクール』を買ったのは10年ほど前ですが、当時から知られていたので、もっと前から人気だったと思います」。

―胃腸薬はどうですか?

「胃腸薬といえば『太田胃散』が有名ですが、台湾では『キャベジン』のほうが人気です。ぼくの母は胃腸が悪いので、いつも『キャベジン』を買ってきてほしいと頼まれます。台湾の田舎のおばさんたちの間では『キャベジン』はすごい薬だという噂が口コミで広がっているんです」。

キャベジン(興和)
http://hc.kowa.co.jp/otc/562

―でも、台湾には伝統的な漢方などいい薬もたくさんあるでしょう。

「漢方はあくまで体質の調整に役立つもの。症状が出たときには漢方では直らない。そのため、救急薬を家に常備しておきたいのです」。

―台湾には市販薬はないのですか。

「台湾にもありますが、効き目はもうひとつだし、何より日本の医薬品はパッケージがきれいです。見た目がいい。一般に女性は自分が薬を服用していることをあまり知られたくありません。でも、日本の薬はパッケージがおしゃれなので、一見薬に見えない。

ロート製薬の目薬『リセ』などがまさにそう。パッケージがかわいいし、色も女性らしい。たいていの台湾の女性はバッグの中に『リセ』をしのばせているんですよ。

リセ(ロート製薬)
http://jp.rohto.com/rohto-lycee/

台湾の薬はパッケージがダサいんです。いかにもクスリクスリしている。だったら病院で処方箋を出してもらってきたほうがいいと考える。

最近、台北に日薬本舗というドラッグストアチェーンができて、とても人気です。80%以上は日本製品を扱っています。日本のドラッグストアのような明るいイメージでチェーン展開しています。台北に10数店舗あります」。
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―それでも、やはり日本で買いたい?

「日本のほうが安いし、最新の薬を買いたいから。新発売の製品が出たら、すぐ買いたい。

たとえば、参天製薬の目薬『サンテFX』は台湾で350台湾元(約1000円)、日本のドラッグストアなら300円前後で買える。

サンテFX(参天製薬)
http://www.santefx.jp/

―そんなに値段が違うんですか。だから、日本で買ってきてみんなにあげたら喜ばれるんですね。

「化粧品も日本では台湾の半額に近い気がします。もうひとつの理由は、台湾の薬事法の関係で、同じ日本のメーカーの商品でも、台湾製では一部の成分が添加されていないケースがけっこうあります。

たとえば、台湾製の『キャベジン』には脂肪を分解する酵素のリパーゼが添加されていません。これがいちばん肝心の成分なのに。台湾では市販品に添加してはいけない成分なんです。

頭痛薬の『EVE』に含まれているイブプロフェンも、ようやく今は台湾でも解禁されましたが、少し前まで禁止でした。この成分はよく効くので、『EVE』は台湾の20代~30代の若いオフィスワーカーに人気があります。これは男女かかわりなく、誰でもオフィスのデスクの引き出しに入っていると思います。
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EVE(エスエス製薬)
http://www.ssp.co.jp/eve/

日本のOTC医薬品には子供にものみやすいよう顆粒状になっている製品が多い。たとえば、乳酸菌の入った『新ビオフェルミンS細粒』も台湾人に人気なのですが、実は顆粒タイプは台湾では製品化されていない。錠剤だけなんです。だから、顆粒タイプを日本で買ってくる。 

新ビオフェルミンS細粒(ビオフェルミン製薬)
http://www.biofermin.co.jp/products/biofermin_s/index.html

風邪薬の『パブロン』も粉末状でのみやすい。台湾では忙しく働いている人も多いので、風邪をひいてもなかなか病院に行く時間がない。そんな人たちは自分のデスクの引き出しに『パブロン』を常備しておきたいと考えるのです」。

パブロン(大正製薬)
http://www.taisho.co.jp/pabron/

―OTC医薬品を常備しておきたいという思いがあるんですね。まあそれは日本でも同じですが。

「台湾の習慣や風土に合っている薬というのもあります。たとえば、『大正漢方胃腸薬』は漢方ということで安心ですから、母からいつも『キャベジン』とこれを頼まれます。『大正漢方胃腸薬』は食前か食間に服用というのが特徴です。一般に日本の胃腸薬は食後に服用するタイプが多いように思いますが、台湾の漢方は食前服用のタイプが多い。台湾人の習慣に近いのでのみやすいのです。

大正漢方胃腸薬(大正製薬)
http://www.taisho.co.jp/kanpou/

『口内炎パッチ』という口内炎の薬も、台湾では大人気です。理由は台湾には口内炎に悩む人が多いからですが、台湾にはこういう薬はまったくないので、すぐ広まりました。大正製薬を取材したとき、面白い話を聞きました。日本ではこの薬があるとき急に売れ始めたので、誰が買っているのかドラッグストアの関係者に聞いたら、外国人が買っているというんです。実はそれが台湾人でした。今ではマツキヨなどに行くと、誰でもすぐわかる場所に置かれていると思います」。

口内炎パッチ(大正製薬)
http://www.catalog-taisho.com/01951.php

―そもそもこういう薬があることも知りませんでした。

「きっと台湾人の食習慣や風土とも関係がありそうです。

最後に、これはぼくが本で伝えたかったことのひとつでもあるのですが、これだけ台湾人の生活の中に日本のOTC医薬品が普及してきているのに、使い方を誤用されているケースがよくあることです。

たとえば、ロート製薬の『メンソレータムAD』は冬場の乾燥肌に効くかゆみ止めですが、日本製の人気が高い理由は、台湾製にはリドカインという麻酔剤が添加されていないため、かゆみ止めの効果が弱いからなんです。ところが、台湾人の中にはこれをハンドクリームとして使っている人がいます。日本の医薬品を仕入れて台湾で販売しているブローカーが多くいますが、彼らが誤ってハンドクリームとして使えると宣伝したからなんです。これは困ったことです。どんなにいい薬でも誤用されたら効き目がないどころか、問題が起こるかもしれない。先日もある台湾の日本旅行のガイドブックに『メンソレータムAD』がハンドクリームとして紹介されているのを見つけました。これを書いているのは、おそらく日本語が読めない人でしょう。基本的な知識がないので、こういう間違いも多いんです。 

メンソレータムAD(ロート製薬)
http://jp.rohto.com/ad/

ぼくが台湾でやっているセミナーでも、この話は必ずすることにしています。『メンソレータムAD』のパッケージには医薬品と記されています。つまり、ハンドクリームのようにボディケアとして使うのではなく、かゆみなどの症状のあるときだけ使うべきなんです」。

―なるほど、そういうことも起きているんですね。人気薬にはそれぞれ理由がある。常備薬として家庭やオフィスに置いておきたいという理由もよくわかりました。台湾人の生活にこれほど日本のOTC医薬品が浸透しているとは知りませんでした。
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『東京藥妝美研購』(2012年11月刊)p.24-25より。


では、次に人気の美容商品について教えてください。それにしても、鄭さんは男性ですよね。薬は男女ふつうに使うけど、美容商品に詳しくなったのはどういうわけだったんですか。

「一般に台湾の男性は日本の男性より美容商品や化粧品を使うことに抵抗がないように思います。ぼくの場合は、日本に行くたび、姉や姉の友だちからこの化粧品を買ってきてくれと頼まれるので、ドラッグストアの化粧品コーナーでお目当ての商品を探しているうちに、だんだん興味が出てきたんです。でも、この前取材である化粧品会社の人から『鄭さんは台湾のイッコウさんでしょ』と言われたので、『そうじゃないですよ。女装していませんし』なんてこともありました(笑)。

まずイチ押しの商品といえば、ライオンの『休足時間』でしょう。台湾では多くの人がバイクで移動するため、あまり歩かないんです。台北市内ならMRTもあるので、多少は歩くと思いますけど。そんな台湾人が日本に旅行に来ると、普段の倍以上は歩くので、足が疲れます。そんなとき、ホテルに帰ってひんやりと清涼感のあるジェルタイプの『休足時間』のシートを貼ったら、気持ちがいいんです。特に女性に人気です。
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休足時間(ライオン)
http://www.lion.co.jp/ja/seihin/brand/012/01.php

花王の『蒸気アイマスク』も人気です。パソコンや携帯の利用人口の多い台湾ですが、目の疲れが取れるこんな商品はなかったので、すぐに話題となりました。

蒸気アイマスク(花王)
http://www.kao.co.jp/megrhythm/eye/products/

ロート製薬の『アクネス日焼け止め』もそうです。アクネスニキビシリーズは、台湾製もあるのですが、以前は日焼け止めがなかったので、日本に来たら必買アイテムでした。おととしから台湾にも輸出されるようになり、買うことができますが、日本で買うほうがずっと安いでしょう。

アクネス日焼け止め(ロート製薬)
http://jp.rohto.com/acnes/uv-tint-milk/

同じくロート製薬の『肌研 極潤化粧水』のシリーズも台湾人に愛されています。やはり日本では台湾の半額以下で入手できるので、日本旅行時の必買アイテムです。

肌研 極潤化粧水(ロート製薬)
http://www.hadalabo.jp/products/gokujyun/g_001

DUPの『アイラッシュフィックサー』は付け睫毛の粘着剤です。数多くの類似商品の中で、これが最も評判がいいです。女性の友だちに聞いたところ、粘着性がよく、汗や皮脂に強いらしいです。

DUPアイラッシュフィックサー(DUP)
http://www.d-up.co.jp/fixer_ex/index2.html

台湾人はシートマスクが好きなので、クラシエの『肌美精』のような分包タイプはすごく人気があります。最近はさらに低価格のプレサ社のものが人気になっています。

肌美精マスク(クラシエ)
http://www.hadabisei.jp/mask/index.html

その他いろいろな商品を紹介していますが、その多くは単純に、ぼくが自分で使ってみてよかったと思うものを選んでいます」。

―お話を聞いていると、台湾の人たちのふだんの生活の様子が見えてくるようで面白かったです。現代的な生活を送りながら、日本とは気候や風土、習慣が違うので、日本人には気づかないニーズがあるのですね。パッケージがおしゃれなこともポイントが高いというのは、なるほどと思いました。

ところで、鄭さんは4月にまた東京に来て、東京コスメガイドの第3弾の取材をする予定ですね。どんな企画を考えているのですか。

「現在制作中の第3弾では、リピーターの多い台湾人読者のために、東京から一歩足を伸ばして、地方コスメの企画を考えました。台湾人にも人気の金沢の地元コスメを紹介する予定です」。

北陸新幹線が開通したばかりなので、今年は金沢が注目されています。鄭さんがどんな地元コスメを見つけてくるか、楽しみです。
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by sanyo-kansatu | 2015-04-02 11:51 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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