ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 04月 30日

白頭山(長白山)の国際観光化の行方はいかに?

最近、北朝鮮が外貨獲得のために外国人観光客を呼び込もうとする動きを再開したことがいくつか報じられています。

北朝鮮 白頭山のふもとに国際観光特区を設置 【ソウル聯合ニュース(2015.4.23)】

「北朝鮮の朝鮮中央通信は23日、中朝国境地帯にある白頭山のふもとの両江道三池淵郡に「国際観光特区」を設置したと報じた。特区指定に関する最高人民会議常任委員会の政令が22日に発表されたという。

北朝鮮による国際観光特区の指定は南東部の景勝地・金剛山(2011年)に続き2例目となる。金剛山と併せて白頭山観光を本格的に活性化し、外貨稼ぎに力を入れるとみられる。

政令によると、三池淵郡の茂峰労働者区の一部地域が「茂峰国際観光特区」に指定された。

茂峰労働者区は標高1220メートルの位置にあり、北朝鮮は2000年代初めから同地に宿泊施設や浴場などを建設し、「山中の休養所」と宣伝してきた。空港も近く、北朝鮮内の他地域に比べ観光産業の育成に必要なインフラが整っている」。

平壌・上海間に定期便=26日に就航-中国メディア【上海時事(2015.4.25)】

「中国のニュースサイト澎湃は25日までに、北朝鮮国営高麗航空の平壌-上海間の定期直行便が26日に就航すると報じた。これまで同路線はチャーター便だけだった。北朝鮮は最近、観光に力を入れており、中国人観光客の取り込みを狙ったとみられる。

直行便は毎週日曜と木曜に平壌から上海へ飛び、月曜と金曜に平壌へ戻るという。北朝鮮と中国を結ぶ定期便は現在、平壌-北京と平壌-瀋陽の2路線。上海からは夏季に観光用のチャーター便が出ていた。

北朝鮮は今回の定期便就航に合わせて、旅行商品の価格を下げたという」。

北朝鮮の高麗航空が中国河南省の鄭州と平壌を結ぶチャーター路線を開設【Daily NK 2015年04月27日】
http://dailynk.jp/archives/40394

「北朝鮮の高麗航空が中国河南省の鄭州と平壌を結ぶチャーター路線を開設したと、米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)が22日、中国人民日報の記事を引用して報道した。

報じられたチャーター便は、19日に鄭州空港を離陸し、2時間20分後に平壌空港に着陸した。平壌に到着した140人の中国人観光客は平壌市内、開城、金剛山、板門店などを巡る4泊5日のツアーに参加している。

高麗航空が直行便を開設した中国の都市はこれで6つ目。これまでにも上海、延吉、瀋陽、西安などに直行チャーター便を飛ばした実績がある。

平壌ー上海便は昨年7月から10月まで運行され、上海発は木曜日、平壌発は日曜日に運行されていた。

北朝鮮はエボラウイルス流入を遮断するために外国人観光客の入国を禁止していたが、解除されて以降は中国人観光客が増えており、今回のチャーター便就航もその流れによるものだ。

一方、中国の吉林新聞はも延吉ー平壌間のチャーター便が6月に運行を再開すると伝えている。高麗航空の関係者は同路線を10月まで運航し、搭乗率によっては定期路線化も視野に入れていると語った。

さらに、中国の人民網は、ハルビン空港の関係者がハルビン平壌路線の復活について高麗航空の関係者と協議していると伝えた。

高麗航空の路線拡大、サービス改善は飛行機好きの金正恩氏の意思でもある。韓国の中央日報によると、2012年5月に高麗航空機に搭乗した金正恩氏は「機内食の質を高めて乗務員の衣装も洗練されたものにせよ」との指示を出した。

それに伴い、CAの制服は新しいものになり、高麗航空名物とまで言われた機内食のハンバーガーも一般的な機内食に変わった。また、EUや中国政府に域内飛行禁止を言い渡された旧型機種に変わるツポレフ204-300、アントノフ148の導入、平壌空港新ターミナル建設など国を上げての努力を行ってきた。

ところがそんな努力のかいもなく、英スカイトラックス社が毎年発表している航空会社のランキングで4年連続最下位レベルの1つ星を記録してしまった。680あまりの調査対象で1つ星を授与されたのは高麗航空だけ。不名誉な記録に金正恩氏はたいそうお冠だろう」。

さて、聯合ニュースが伝えるように、北朝鮮は中朝両国の国境地帯となっている白頭山(長白山)を国際観光特区として開放し、現在活況を呈している中国側だけでなく、北朝鮮側にも国内外の観光客を招き入れたいと考えているようです。しかし、このアイデアはもう10年前から言われていたことで、2000年代半ばの核開発などをきっかけに悪化した中朝関係もあってか、まったく実現には至っていません。その間に、中国側は着々とインフラ開発を進め、今日では中国国内でも稀に見る美しい現代的な山岳リゾートエリアに様変わりしています。その様子は本ブログでもすでに何回か報告しています。ぼく自身は、2000年代以降、長白山には4回足を運んでいます。

いま中国で人気の山岳リゾート、長白山
http://inbound.exblog.jp/20458097/

長白山(白頭山)は5つ星クラスの高原リゾート開発でにぎわっています
http://inbound.exblog.jp/20386508/

中国側にはすでに5つ星クラスの山岳リゾートホテルができているというのに、北朝鮮側では、表向き宿泊施設はあるとはいっているものの、実際の宿泊客を長期にわたって滞在させることは難しいようです。確かに週1便の平壌・三池淵(白頭山の最寄空港)線のフライトは運航されていると聞きますが、日帰り客のみのようですから。

これだけ両国の観光インフラに差がついてしまうと、中国側から北朝鮮側に足を運んだ観光客は両国の発展の違いを強く印象づけられることでしょう。かつて金剛山では韓国による同胞としての温情的な投資で現代的なホテルや温泉施設などが建設されましたが、同じことを期待するのであれば、中国側の要求に対してそれ相応の譲歩をしなければならないでしょう。はたして北朝鮮はそれを受け入れられるのか。現状がずっと硬直して動かないのは、むしろ北朝鮮側の覚悟が足りないからのように見えます。先日(4月18日)白頭山を視察したという金正恩第1書記は何を考えているのか。

さらに、両国の間には、国力の圧倒的な違いだけでなく、歴史認識問題もあります。白頭山を朝鮮民族の聖山とみなす北朝鮮側と、もともと中国の領土だった長白山の一部を朝鮮にくれてやったとする中国側の認識には大きな隔たりがあるのです。

長白山(白頭山)が中韓対立の舞台となっている理由(「東北工程」とは何か)
http://inbound.exblog.jp/20593858/

とはいうものの、もし本当に長白山(白頭山)の国際観光化が実現し、徒歩で両国を往来できるようになるのだとしたら、海外からも注目されることでしょう。開発の遅れたおかげで残されている北朝鮮側の原生林や高原植物は類まれな美しさでしょうし、これまで平壌経由でしか見ることのできなかった北朝鮮側から天池を眺めることもできるでしょう。

さて、前ふりがずいぶん長くなってしまいましたが、今回ぼくが書きたかったのは、いまはなき長白山のユニークな温泉旅館の話です。
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それは1998年に中日合資で建設された長白山国際観光ホテル(当時)です。開業当時は、長白瀑布から徒歩15分という好ロケーションにある唯一の現代的なホテルで、源泉から引いた温泉やサウナもあり、長白山で山岳リゾートライフを楽しむには最適の宿でした。
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露天風呂もあって、春先はまだ雪も残る長白山登山で冷えた身体を温めてくれました。
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客室も広く快適で、2000年代初頭の中国の山岳地域ではこれだけの設備を伴う宿泊施設は少なかったと思います。

このホテルを開発したのは在日朝鮮人のP氏でした。1992年の中韓国交正常化以降、多くの韓国人観光客が長白山を訪ねるようになったこともあり、栃木県の運輸業者だったP氏はこの地に投資したのです。

ぼく自身はこのホテルを2回訪ねています。ある年の5月、北朝鮮から招聘した服務員たちの歓待を受けたことがあります。
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そうなんです。中朝国境に近い山岳地帯で北朝鮮の美少女楽団による演奏会と食事でもてなされたのです。

これがそのときの写真です。よくもまあこんな山奥でこれだけの皆さんを揃えられたものです。
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演奏後もかいがいしく働く彼女たちの様子をカメラマンは撮り続けています。ちょっと想像してみてください。我々はまるで浦島太郎になって竜宮城にでも来たような気分になっていたのです。
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今思えば、こういうもてなし方というのは、朝鮮の伝統的な手法といえるでしょう。我々はまんまとそのお膳立てに乗せられてしまったのかもしれません。朝鮮側の宣伝戦の一端を担わされたといえなくもないからです。

もっとも、その引き換えとして我々が提供できたのは、このホテルの紹介記事をある旅行ガイドブックに載せただけのことです。実際には、たいした宣伝効果はなかったわけですが、それを見た中国側の理解は若干違ったかもしれません。

2008年頃から、すでにこのホテルは吉林省政府がこの地域の観光開発を主導するために設立した長白山管理委員会から買い上げを迫られていました。長白山の観光利権を海外資本に与えることなく、中国側がすべてを握ろうとしていたのです。

その後、このホテルは12年に完全に閉鎖されてしまいました。14年夏に訪れたときは、跡形もなく取り壊されていました。
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これが取り壊し前の長白山国際観光ホテルの外観です。ご覧のとおり、平壌によくある朝鮮風の建築でした。中国側からすると、これも問題とみなされたかもしれません。ここは中国なのだから、というわけです。そうでなければ、取り壊しまでする必要はないではありませんか。

こうしたもろもろの背景があったにせよ、このホテルの野趣あふれる露天風呂は素晴らしかったと言っておきたいと思います。

今、長白山周辺には国際的なリゾートホテルが続々建設されています。その一軒にぼくは泊まったことがありますが、施設は立派に設計されているものの、肝心の温泉の運用に問題がありました。お湯がぬるすぎるのです。泉質については、さすがに悪くはないのでしょうが、お湯の温度調節ができていないのです。おそらく現地スタッフはこうしたことに慣れていないのでしょう。

その点、長白山国際観光ホテルの露天風呂はまさに源泉かけ流しそのもので、湯加減もサイコ―でした。在日の方とはいえ、日本の温泉文化をよく知る人物が設計していたからでしょう。

【追記1】
5月末になって以下のニュースが報じられました。

金正恩体制の聖地「白頭山」へ向かう観光鉄道工事再開(Daily NK 2015年5月30日)
http://dailynk.jp/archives/44934

その一部を抜粋します。

「白頭山観光鉄道(三池淵線)」は、朝鮮の霊山であり、金正恩体制の聖地「白頭山」と麓を結ぶ鉄道だ。両江道(リャンガンド)の恵山(ヘサン)と鯉明水(リミョンス)を結ぶ森林鉄道として日本植民地時代に開通したが、1948年に一般鉄道に転換。これまで革命史蹟訪問に利用されてきたが、1994年に大洪水で路盤が流出した。(中略)

今回の工事において、北朝鮮当局は始発駅を渭淵(ウィヨン)駅から数キロ内陸に入った大五川(テオチョン)駅に変更、線路を付け替えて路線を新設した。

再開した理由だが、金正恩体制の正当性の柱「白頭の血統」をより強調するためにも復旧すべきという判断があったと見られる。金正恩氏は、白頭山観光鉄道の新設路線の測量結果を受け取り、2015年4月から復旧工事を再開せよと指示を下したという。

しかし、故日成氏の誕生や人民軍創設記念日などの準備に忙殺されたが、5月25日になって、ようやく工事が始まった。両江道の内部情報筋によると、2万人にも及ぶ人々が特別列車に乗って現地に到着したという。また、工事用の機械や資材を載せた列車も続々と到着している。

しかし、今回動員されたのは通常の「6.18突撃隊」ではなく、各道で選抜された人員からなる「白頭山観光鉄道突撃隊」という。

当初は、3万人が動員され「2020年の完成」を目指したが、完成目標が来年の10月10日に労働党創建日に前倒しとなった。また、前回の工事中断後「高山果樹農場」の建設に投入されていた「6.18突撃隊」も今後は再合流して、合計7万人という大規模動員を投入する予定という。

今のところ、「労働者用の宿舎を建設している段階」(内部情報筋)だが、目標に間に合わせるために「速度戦」、つまり杜撰で手抜きだらけの突貫工事になる可能性が高い。

※朝鮮に対する批判的な姿勢はお約束事の「突貫工事になる可能性が高い」で結ばれている記事ですが、朝鮮側に白頭山を観光地化したいという意向があることはうかがえます。それが実現できるかどうかはまた別の話です。

【追記2】
さらに、7月には中国発白頭山行きのバスツアーが始まったようです。

今年7月から中国発白頭山(北朝鮮)ツアーが始まったそうです
http://inbound.exblog.jp/24763312/
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by sanyo-kansatu | 2015-04-30 09:19 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)


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