2015年 05月 06日

メディアは「通訳案内士」問題をどう報じてきたか

前回、観光庁が主催する「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」等の中身を一部紹介しながら、関係者だけでは解決できない拡がりを持つに至った日本のインバウンドをめぐる問題を広く知ってもらうことが大事だと書きました。

「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」って何?
http://inbound.exblog.jp/24445622/

そのうえで、メディアの役割はとても重要です。

では、これまでメディアは「通訳案内士」問題をどのように報じてきたのでしょうか。

そこで、ネットを中心に通訳ガイド案内士をめぐる記事を探してみました。大手メディアの報道は少ないです。はっきり言って、メディアは十分この問題を報じてきたとは思えません。

無理もないともいえます。一般の日本国民には利害をともなわない世界だからでしょう。たとえば、3年前に起きた関越自動車道のバス事故によって多くの日本人乗客が死傷しましたが、運転手がふだんから訪日外国人を乗せたバスを運転していたこともあり、国土交通省は乗合バスの制度変更を急ピッチで進めました。しかし、通訳案内士の問題は、基本的に日本の消費者には関係ない話だからです。

もっともこれだけ外国人旅行者が増えてくると、外国語を使って案内する人材が必要であろうことは一般の我々にも理解できます。そのせいか、特に今年に入って報道は増えているようです。

以下、記事をいくつかの時期に分けて書き出してみました。潮目となるのは、観光庁設立から「検討会」の開催、東日本大震災、東京五輪開催決定などでしょうか(リンクできるものとそうでないものが混じっています。すべての記事をフォローできているわけではありません。ご了承ください)。

●2007年末~08年10月 観光庁設立まで

2007年12月15日(観光経済新聞)
国交省、通訳ガイド団体連絡会議の初会合開く

出席団体は、日本観光通訳協会、全日本通訳案内士連盟、通訳ガイド&コミュニケーション・スキル研究会、関西通訳・ガイド協会、ひろしま通訳・ガイド協会、九州通訳・ガイド協会、中国語通訳案内士会、日本通訳案内士連合。
http://www.kankokeizai.com/backnumber/07/12_15/kanko_gyosei.html#02
※観光庁の「懇談会」は08年11月にスタートしているようですが、それ以前の07年12月に初会合があったようです。

2008年2月9日(観光経済新聞)
通訳ガイド制度周知へ、2月を強化月間に 国交省

http://www.kankokeizai.com/backnumber/08/02_09/kanko_gyosei.html

2008年2月23日(観光経済新聞)
地域限定通訳ガイド、岩手など4県の合格者は84人に

http://www.kankokeizai.com/backnumber/08/02_23/kanko_gyosei.html#02
※この時期すでに「地域ガイド」制度は動き出していることがわかります。

2008年4月3日(トラベルビジョン)
国土交通省、地域限定通訳案内士試験を新たに北海道、栃木で実施

http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=35062

2008年8月30日(観光経済新聞)
通訳ガイドの低い稼働率が浮き彫りに、国交省初の実態調査で判明

http://www.kankokeizai.com/backnumber/08/08_30/kanko_gyosei.html#01
※国土交通省が初めて実施した「通訳案内士就業実態等調査事業」と思われる内容の報道です。

2008年9月1日(トラベルビジョン)
通訳案内士の専業率は10%、年収100万円未満38%−国交省、課題解決へ調査

http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=37894
※この時期から通訳案内士の実態が明るみにされていきます。

2008.10.1観光庁設立

●2008年11月~11年2月 「検討会」スタートから東日本大震災直前まで

2008.11.19観光庁「通訳案内士のあり方に関する懇談会」第1回
※意見交換・認識共有の場の設置が目的

2008年12月6日(観光経済新聞)
通訳案内士就業実態調査

http://www.kankokeizai.com/image/top/081206_6.pdf

2008.12.11観光庁「懇談会」第2回
2009.1.27同第3回

2009年3月17日(レコードチャイナ)
<中国語ガイド>無資格横行が有資格者を圧迫、罰金の適用なく―日本

http://www.recordchina.co.jp/a29361.html
※興味深いことに、この問題に早くから関心を向けていたのは、中国情報を発信するニュースサイトでした。

2009.6.26観光庁「通訳案内士のあり方に関する検討会」第1回
※具体的な方策を検討

2009年6月27日(レコードチャイナ)
無資格者の観光客案内には問題多い=中国からの個人ビザ入国解禁控え、ガイド問題で活発な議論―観光庁

http://www.recordchina.co.jp/a32789.html

2009年7月11日(観光経済新聞)
観光庁、通訳案内士制度について検討会
就業率の低さ、地域や言語によって人材不足、無資格ガイドなど問題

http://www.kankokeizai.com/backnumber/09/07_11/kanko_gyosei.html

2009.7.31観光庁「あり方検討会」第2回

2009年8月3日(レコードチャイナ)
有資格者足りなくない!?「間違った前提」にガイド側が強い懸念―観光庁通訳案内士検討会

http://www.recordchina.co.jp/a34007.html
※通訳案内士不足という一般的な理解に対して通訳案内士団体が反論しています。

2009年8月4日(レコードチャイナ)
映画ロケで大人気の北海道ツアー、深刻な中国語ガイド不足が悩みの種?

http://www.recordchina.co.jp/a34066.html

2009.11.19(日本観光協会)地域紹介・観光ボランティアガイド全国大会
http://vg.nihon-kankou.or.jp/admin/taikaikiroku/pdf/nara_houkoku.pdf

2009.10.8観光庁「あり方検討会」第3回

2009年10月11日(レコードチャイナ)
中国からの低レベルツアーに強い懸念!無資格ガイド問題置き去りに業界側は反発―観光庁検討会

http://www.recordchina.co.jp/a36085.html
※中国からの団体ツアーの問題が報じられ始めたのはこの頃からです。

2010年1月21日(東京新聞)
無資格ガイドを容認?

「日本を訪れる中国人観光客が激増している。本来は「通訳案内士」の国家資格を持ったガイドが観光案内するはずなのだが、格安ツアーは無資格の添乗員がガイド代わりだという。そんな中、国の検討会で「通訳案内士の業務独占や名称独占の廃止」が持ち上がり、通訳案内士らが反発している」(一部)。
※2009年から10年の夏(この年の9月、尖閣諸島沖漁船衝突事件が起きています)まで、中国からの観光客の急増が話題になっていました。“爆買い”という言い方もこの頃から始まったものです。一方、こうした勢いのなか、通訳案内士の関係者らは、制度が形骸化することを怖れ、反発を強めていました。

2010.2.22観光庁「あり方検討会」第4回

2010年2月27日(レコードジャパン)
有資格ガイドは仕事なしの「不思議な」旧正月?悪質な訪日ツアーの調査・取り締まり求める―観光庁検討会

http://www.recordchina.co.jp/a40064.html

2010.3.15観光庁「あり方検討会」第5回

2010年3月30日(レコードチャイナ)
JTB系旅行会社を厳重注意処分に=通訳案内士法違反で初、中国人留学生バイト募集に問題―九州運輸局

http://www.recordchina.co.jp/a40879.html
※通訳案内士法違反が初めて摘発されたようですが、その後この問題がどうなったかについてはよくわかりません。

2010年4月2日(産経新聞)
通訳案内士資格 見直し議論波紋

「国が進めている外国人向けの有償ガイド「通訳案内士」資格の見直し議論が波紋を呼んでいる。中国人などアジアからの観光客急増に対応するため、観光庁の有識者会議で、ボランティアや留学生を有効活用する規制緩和策が浮上。「無資格ガイドの容認につながり、仕事を奪われかねない」と現役の案内士が猛反発している」(一部)。

2010.5.14観光庁「あり方検討会」第6回

2010年6月18日(レコードチャイナ)
<新ガイド>「業界は実質崩壊」―JFG山田理事長インタビュー

http://www.recordchina.co.jp/a42980.html

2010.6.25観光庁「あり方検討会」第7回

2010年7月3日(観光経済新聞)
通訳案内士、業務独占の廃止検討 観光庁

http://www.kankokeizai.com/backnumber/10/07_03/kanko_gyosei.html

2010年7月13日(日本経済新聞)
「通訳ガイド」国家資格不要、中・韓国語など対応しやすく

「観光庁は来年度をメドに、国家資格を持たない人でも有料の外国人向け通訳ガイドができるように規制を緩和する。現行の「通訳案内士」制度がアジアからの観光客急増に対応できていないためだ。現在無料で通訳している日本人のほか、留学生や現地旅行会社のガイドといった外国人にも解禁される。同庁は一定の質を確保するため、研修ガイドラインを作成し、自治体や企業が認定する仕組みを検討中だ」(一部)。
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1502L_S0A710C1CR8000/

2011.1.14観光庁「あり方検討会」第8回
2011.3.25同第9回

2010.11.26観光庁「通訳案内士研修の高度化に関する検討会」第1回
2011.2.7同第2回

●2011年3月~13年8月 東日本大震災発生

2011.3.11 東日本大震災発生
※通訳案内士をめぐる熱い議論は、震災によって訪日客が激減していくなかで沈静化してしまいました。通訳案内士試験の受験者数も、この頃大きく落ち込んでしまいます。

2011.3.18観光庁「通訳案内士研修の高度化に関する検討会」第3回

2011.3.31観光庁「通訳案内士制度のあり方に関する最終報告書」
http://www.mlit.go.jp/common/000140060.pdf
'
2011.10.4観光庁「通訳案内士試験ガイドラインに関する検討会」第1回
※通訳案内士試験の内容や採点基準などの検討
2011.11.28同2回
2012.1.23同3回

2012.4.16観光庁「通訳案内士試験ガイドラインの改訂」
http://www.mlit.go.jp/common/000208491.pdf

2012年10月30日(トラベルビジョン)
観光庁、通訳案内士養成セミナー開催へ、全国20ヶ所で

http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=55409

2013.1.9観光庁「通訳案内士専門性研修支援事業」を実施

2013年5月30日(日本経済新聞)
九州の官民、独自の通訳ガイド資格創設 アジアから誘客狙う

「九州の官民でつくる九州観光推進機構(会長・石原進九州旅客鉄道会長)と九州7県、福岡市は2014年度、九州独自の通訳ガイドの資格を創設する。観光産業振興に向けた国の特区指定を受けた取り組み。外国人留学生らに九州の歴史などについての研修を実施、認定する。旅行業者などに活用を促し、韓国や中国などアジアからの観光客の誘致強化につなげるのが目的だ」。
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO55620370Z20C13A5LX0000/

2013年5月30日(琉球新報)
沖縄 地域限定通訳案内士セミナー参加者募集

http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-207322-storytopic-4.html

●2013年9月~現在 東京五輪決定、1000万人突破以後

2013年9月8日(日本経済新聞)
2020年五輪、東京開催が決定 56年ぶり

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG07047_Y3A900C1000000/
※東京五輪決定で再び訪日外国人旅行者に対する関心が盛り上がり始めます。

2013年10月28日(スポニチ)
「通訳案内士」も東京五輪心待ち!プロ1万6779人が登録

http://www.sponichi.co.jp/society/news/2013/10/28/kiji/K20131028006896740.html

2013年12月1日(観光経済新聞)
札幌市が札幌特区通訳案内士制度創設、まず17人が登録

http://www.kankokeizai.com/backnumber/13/12_01/chiiki_kanko.html

2014年1月29日(東京新聞)
「五輪までに2000万人」大丈夫? 訪日客ガイド不足

「日本を訪れる外国人旅行者を案内する観光ガイドの不足が深刻化している。ガイド不足に向けて、観光庁は「通訳ガイド制度」の創設を打ち出したが、これが逆に既存のガイド資格の受験者数減少を招いている。観光庁は新資格創設を事実上断念。政府は東京五輪が開かれる二〇二〇年までに外国人旅行者を現在の倍の二千万人に増やそうとしているが、政策の混迷が足を引っ張っている」(一部)。
※一部の通訳案内士団体は、こうした案内士不足という見方に反論しているようです。

2014年2月5日(レコードチャイナ)
簡単な研修でガイド業が可能に?通訳案内士団体反発=経産省が法案提出の見込み―日本

http://www.recordchina.co.jp/a82823.html

2014年4月21日(Cnet Japan)
東京五輪に「質の高いガイド」を--外国人観光客と通訳案内士をつなぐ新サービス

http://japan.cnet.com/news/service/35046839/

2014年12月1日(中日新聞)
通訳案内士試験、珍問だらけ 観光庁見直し検討

「外国人観光客に同行し、外国語で案内する国家資格「通訳案内士」の試験問題について、「観光ガイドの実務と無関係な問題が多すぎる」として業界から改善を求める声が上がっている。訪日外国人観光客は昨年、一千万人を突破して過去最多。通訳案内士の需要は高まっているが、このままでは十分な能力を持たない人材が現場へ出かねないという。所管する観光庁は見直しの検討を始めた」(一部)。

2014.12.24観光庁「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」第1回
※新たな通訳案内士制度を構築するための具体的な方策について検討

2014年12月25日(トラベルビジョン)
第1回通訳案内士制度のあり方検討会開催-15年7月に最終まとめ

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=65121

2015年1月15日(excite)
アジア圏旅行客増大に対応 通訳案内士制度見直しへ

http://www.excite.co.jp/News/politics_g/20150115/Economic_45511.html

2015.1.20観光庁「制度のあり方検討会」第2回

2015年1月21日(京都新聞)
「京都通」の通訳ガイド100人増へ 特区活用で観光振興

http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20150121000011
※京都市は独自の通訳ガイド育成に積極的のようです。

2015年1月24日(観光経済新聞)
観光庁、通訳案内士の制度見直しへ会合

http://www.kankokeizai.com/backnumber/15/01_24/inbound.html

2015.1.26観光庁「制度のあり方検討会」第3回
2015.2.9同第4回

2015年2月9日(トラベルビジョン)
JATAやはとバスから意見聴取、法改正要望も-通訳案内士検討会

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=65720

2015.2.17観光庁「制度のあり方検討会」第5回

2015年2月17日(トラベルビジョン)
旅行会社から要望続出、新たな資格案も-通訳案内士検討会

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=65835

2015年2月18日(産経新聞)
7外大が連携し「東京五輪」へ通訳育成

http://www.sankei.com/life/news/150218/lif1502180004-n1.html

2015年3月2日(産経ニュース)
通訳ガイド拡大へ規制緩和 訪日外国人観光客の急増に対応 観光立国に向け政府方針

「政府が、報酬を受けて外国人旅行客を案内できる国家資格「通訳案内士(通訳ガイド)」制度の規制緩和を検討していることが1日、分かった。現行の単一資格を見直し、語学力やガイド知識のレベル、訪日客の案内回数といった実務実績などに応じた等級制を新たに導入する案が有力だ。資格認定の幅を広げて、訪日客の急増に伴う通訳ガイド需要の拡大・多様化に対応。無資格ガイドによるトラブル防止にもつなげて、「おもてなし」の質を高める狙いだ」(一部)。

2015.3.6観光庁「制度のあり方検討会」第6回

2015年3月8日(トラベルビジョン)
通訳案内士検討会、自治体などから意見聴取、次回から議論開始

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=66142

2015.3.23観光庁「制度のあり方検討会」第7回

2015年3月23日(トラベルビジョン)
通訳案内士検討会、4つの論点に集約-試験は語学力重視へ

http://www.travelvision.jp/news-jpn/detail.php?id=66407

2015年4月11日(旬刊旅行新聞)
通訳案内士制度の検討会、業務独占の是非も課題

http://www.ryoko-net.co.jp/?p=12092

2015年04月16日(京都新聞)
通訳ガイド不足?十分? 地域資格めぐり論争

http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20150416000026

2015年4月22日(NHK)
外国人向け「地域限定」通訳ガイド新設へ

「日本を訪れる外国人旅行者の増加に伴って、有料で通訳ガイドができる国家資格の「通訳案内士」が地方を中心に不足していることから、観光庁は自治体の研修を受ければ地域を限って有料で通訳ガイドができる新しい制度の創設を検討することになりました」(一部)。
http://inbound.exblog.jp/24442716/

これらの記事にはいろんな論点が含まれているため、あらためて個々の論点について考えてみたいと思います。
[PR]

by sanyo-kansatu | 2015-05-06 17:43 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


<< 通訳案内士になるには? 適性は?      「通訳案内士制度のあり方に関す... >>