ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 05月 07日

通訳案内士になるには? 適性は?

通訳案内士の問題は、訪日旅行市場をこのまま順調に拡大させていきたい行政や旅行業者の思惑や、現場を支える現役の通訳案内士の人たちの事情を考慮することはもちろんですが、これからこの世界に入ってこようとしている若い世代の立場にたって考える必要もあると思います。

なにしろすでに見たとおり、この業界は高齢化が進んでいます。海外からやって来る旅行者は、自分の親のような、あるいはおじいちゃん、おばあちゃんの年代ではなく、自分に近い世代の日本人にガイドしてもらいたいと思うはずです。自分ごととして考えればそうでしょう。では、この業界が若い世代を取り込むためにはどうすればいいのでしょうか。そもそも経験の少ない若い世代が現役で働くのは難しい仕事なのでしょうか。

ひとまず資格を取るにはどうしたらいいか、見てみましょう。観光庁のHPには資格の概要が、日本政府観光局(JNTO)のHPには受験に関する情報が掲載されています。

通訳案内士になるには(観光庁)
http://www.mlit.go.jp/kankocho/shiken.html

通訳案内士試験概要(JNTO)
http://www.jnto.go.jp/jpn/interpreter_guide_exams/index.html
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※ここに載せたのは、2014年12月現在の観光庁の資料です。先頃発表された15年度の試験ガイドラインをみると、たとえば2次試験の面接時間が8分から10分に増えているなど、いくつか変更もあるので、詳しくはそちらを参照ください。

JNTOのHPによると「平成27年度通訳案内士試験受験申請受付は5月18日(月)~6月29日(月)」とあります。まもなく今年度の受験申請が始まるんですね。1次試験は8月のようです。

実は、いまある版元から通訳案内士を含めた観光ガイドになるためのキャリア本の制作をしていて、これまで何人かの現役の通訳案内士の方にお会いしてきました。そこでは、この試験に合格するためにはどんな勉強をすればいいかといった話もうかがってきましたが、語学的にネイティブに近い環境に恵まれた人などを除けば、それ相応の勉強を積み重ねない限り、クリアできない高いハードルがあるといえそうです。それは合格率などにも表れています。

実際にお会いした現役の通訳案内士の方々は、おだてるつもりではありませんが、みなさん人間的に魅力的な方たちでした。語学ができるというだけでなく、基本的に知的な能力の高い方たちだと思いました。さまざまな国籍の外国人旅行者を相手に「日本を売り込む」トークを繰り広げる毎日を送っている彼らは、共通して「引き出し(外国人が関心を持ちそうなあらゆるタイプの話のネタ)を多く持つこと」の大切さを語っておられました。そのためには、日々新しい情報をキャッチし、勉強を重ねていくことが不可欠だといいます。その意味で、プロの通訳ガイドとして評価を得るには、それ相応の時間と経験が必要とされることでしょう。

さらにいえば、向き合う相手に気を良くさせる気遣いやセンスを自然に身につけておられました。通訳ガイドにとって最も重要なのは、人が相手の仕事が無理なくできるかどうかということでしょう。

語学が好きなこととガイディングが得意かどうかは別の話だからです。これまで見てきたように、通訳案内士の登録者のうち全体の4分の1しか就業していないという現実は、一部の資格取得者のこの仕事に対する適性が必ずしもマッチしていなかったという面もあるのではないでしょうか。語学に関する唯一の国家資格ということで、自分の語学力を試すために試験を受けたという人の割合が高いという調査結果にもうなずけるところがあります。

それでも、ある時期までは訪日外国人旅行者の数がそれほど多くはなかったので、誰も困らなかったのです。しかし、状況は大きく変わりつつあります。

気になるのは、これだけの高い能力と努力が必要とされる通訳ガイドの仕事に見合った代価は得られるのか、ということです。そこが現状では判断の難しいところなのだと思われます。

今日通訳案内士に求められる資質や働き方などについて、通訳案内士団体のNPO法人GICSS研究会理事長のランデル洋子先生にお話をうかがったことあります。先生は現状をふまえたいくつかの具体的な提案をしておられます。

通訳案内士の第一人者、ランデル洋子先生の語る「求められるガイド」とは
http://inbound.exblog.jp/24051695/

ところで、少し別の観点から考えてみたいことがあります。

海外の同業者たちはどのような働き方をしているのだろうか、です。

もっと具体的にいうと、海外では通訳ガイドはどのように生計を立てているのか。この業界を志望している若い人たちがいちばん知りたいのは、そこではないでしょうか。制度設計も、それをふまえたものでなければ、新しい人材は参入してこないのではないか、と思えてなりません。

次回、この点を考えてみたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-07 09:45 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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