ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 05月 10日

海外の観光ガイドサービスのモデルを日本に持ち込もう

海外の観光ガイドがどんな働き方をしているかという話は、国によって相当事情が違うため、それを掘り下げようとするとかなり専門的な内容になってしまいます。残念ながら、いますぐこの件を検討することは簡単ではありません。

通訳ガイドの働き方、海外ではどうなのか?
http://inbound.exblog.jp/24450294/

一方、我々も含め一般の旅行者が海外でどんなガイドサービスを受けられるかについては、いろんな事例を知ることはできそうです。

たとえば、ヨーロッパを中心とした18都市で実施されている地元ガイドによるガイドサービスとして知られるのが、new EUROPE です。
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New EUROPE
http://www.neweuropetours.eu/

※18都市は、アムステルダム、バルセロナ、ベルリン、ブリュッセル、コペンハーゲン、ダブリン、エジンバラ、エルサレム、ハンブルグ、リスボン、リバプール、ロンドン、マドリッド、ミュンヘン、ニューヨーク、パリ、プラハ、テルアビブ。

このサービスは、上記18都市でそれぞれ実施している地元ガイドによるウォーキングツアーなどにネットで予約すれば誰でも参加できるというもの。無料のツアーもあれば、有料で郊外の観光地などを訪ねるツアーもあります。

たとえば、これはドイツのミュンヘンのサービス内容です。面白いのは、このツアーを案内する地元ガイドが写真入りで紹介されており、さまざまなキャラクターが揃っていること。どこに行きたいかもそうですが、このガイドに案内してもらうと楽しそう、という選び方もできるわけです。
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New Munich
http://www.newmunichtours.com/

「ミュンヘンに滞在している外国人旅行者がこのサイトを見て集まってきて、ローカルガイドの案内で街歩きをしたり、ツアーに出かけたりします。ぼくはそのとき、ミュンヘン郊外にあるダッハウ(ナチスの強制収容所のあった町)を訪ねるツアーに参加しました。もちろん、自分ひとりでもバスに乗って行くことはできるけど、地元のガイドにしっかり説明してもらうことで、知的好奇心が大いに満たされた。日本でもこういう外国人向けのツアーをやれないものだろうか」
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こうした実体験をもとに新しい外国人向けツアーサービスを提供しようと2013年に起業したのが、株式会社トラベリエンスの代表・橋本直明さんです。
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トラベリエンス
http://www.travelience.com/

現在同社では、自社でオリジナルツアーを企画するtravelienceと、通訳ガイドと訪日外国人旅行者をマッチングさせるTripleLightsの両サイトを運営しています。

「最初はNew MunichのFree Tourと同じモデルで、プロのガイドの案内による浅草のウォーキングツアーから始めました。それからだんだん有料のツアーも始めたのですが、必ずしも料金が安いからといって人が集まるとは限らない。むしろ、カップルや友人同士、ファミリーなどのプライベートなガイドの需要の方が大きかった。目的地も、浅草や築地、渋谷など東京のメジャーどころを案内してほしいというリクエストが多かった。知らない人と一緒になって気を遣うことなく、自分たちのペースで歩きたい、そういうニーズが多いことを知りました」。

同社の提供するツアーのうち、人気なのは、東京発日帰りの日光や富士山、鎌倉。京都も人気だそうです。でも、東京で起業したばかりの橋本さんには、京都に事務所を置いて、人を配置してというのはすぐには難しかったため、次に思いついたのが通訳ガイドと外国人旅行者のマッチングサービスであるTriplelightsだったそうです。

「こちらはお客さんを集めることに徹し、地元のガイドさんご自身にオリジナルなツアーを企画してもらおうと考えました」
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Triplelights
https://triplelights.com/

「プロとボランティアではガイディングのレベルがまったく違う。ですから、Triplelightsに登録していただくのは、通訳案内士の資格を持つ方のみです。

これまで通訳ガイドの方たちは、旅行会社などのツアーに派遣されていました。でも、旅行会社の手配する宿泊ありのツアーに参加できないガイドもいます。たとえば主婦の方。能力があるのに、就業できないのは残念です。

たとえば、朝9時から12時までの半日ツアーに参加したい外国客がいた場合、それなら主婦の方でも仕事ができる。外国人旅行者には多様なニーズがあるのだから、それに応えられるようなマッチングサービスを提供したいと考えました」。

Triplelightsでは、外国人旅行者の立場からより自分に合った通訳ガイドを選択できるようサイト上に通訳ガイドの紹介動画を用意しています。一方、それぞれの通訳ガイドは自分の企画したツアーをサイト上に紹介。そのツアーに興味を持ってくれた外国人からサイト経由でメールの問い合わせがあると、日程の調整などのやり取りをし、仕事を請けることになります。
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実際にTriplelightsを介して外国人旅行者から仕事を請けている通訳ガイドの方に話を聞いたところ、次のように答えてくれました。

「メールが届くと、お客さまの希望日に仕事が請けられるかどうか答えます。その場合、家族構成や人数、特別なリクエストがあれば確認。ツアーコースに築地が入っているのに、お寿司が苦手という人もいますから。ご家族にお子さまがいると、スケジュールも柔軟に考えなければならないなど、事前の情報があると助かります。また国籍については聞かないようにしています。もし先約があって仕事を引き受けられないとき、国籍で差別しているように思われてはいけないからです。

これまでと違うのは、お客さまと事前にやり取りしているので、ツアー当日には気心知れたお友だち感覚で会えること。これからは自分の強みを積極的にアピールしていかないといけないと実感しています」。

ある通訳案内士団体の役員もこう評価しています。

「橋本さんのコンセプトやビジネスモデルは非常に興味深く、いわゆる、一般的なエージェントのツアーの下請けというイメージの強い通訳ガイドに対して、新しい業務提供、あるいは顧客確保のメソッドを提供しようとしているスタイルは評価できます」。

これまで本ブログでも述べてきたように、通訳案内士を取り巻く状況は、さまざまな課題を抱えつつも、大きく変わりつつあります。特に若い世代の参入のためには、こうした海外で人気を得ているガイドサービスを日本に持ち込むことも必要でしょう。

一方、確かに訪日外国人旅行者は増えていますが、その訪問先が一部の都市や観光地に集中しているという問題があり、新しいガイドサービスを提供している橋本さんにとっても気になるところでした。その背景には、特に地方において英語による情報発信が決定的に不足していることがあると橋本さんは言います。だから、いまだにメジャーどころを案内してほしいというニーズに偏ってしまうというのです。

そこで、橋本さんは新しい旅行ガイドブック「Planetyze(プラネタイズ)」の提供を4月20日より開始しました。

Planetyze(プラネタイズ)
http://planetyze.com

どんなサービスかについては、こう説明されています。

「Planetyze」は、「旅行ガイドブックで気に入った場所を選ぶと、旅程表が作成でき、その場所に精通した通訳案内士に案内してもらえるツアーマーケットプレイスへつながる」という、外国人のための新しい日本の旅の提案をします。

●定番以外も外国人に紹介する旅行ガイドブック

トラベリエンスの経験で、訪日外国人が希望する観光地が東京・京都など定番ばかりになるのはなぜかと考えたら、気が付いたのは彼らにさまざまな観光地の情報が届いていないこと。日本のことは日本人のほうがもっと詳しい。外国人への情報提供の経験がある株式会社ジャパンタイムズ元出版部長笠原仁子氏を日本版編集長として迎え、「外国人が旅行したい場所を発見できる」工夫をした記事をオリジナルに執筆し、日本全国を細かく網羅していったガイドブックを作っています。訪日外国人旅行者向けの英語版、日本人向けの日本語版からスタートし、今後多言語展開していく予定です。東京・京都はもちろんのこと、地方の名所旧跡を細かく網羅し、全国各地へ訪日外国人を送客することを目指します。

●旅程表作成

「Planetyze」ではワンストップで旅程表を作成できます。ガイドブックに掲載されている記事を読み、気に入った場所を旅行カレンダーに追加し、旅程表として印刷・ダウンロードすることができます。また、旅程表を作るのが難しい旅行者のために、通訳案内士が旅程を提案するサービスを提供します。

●通訳案内士によるツアーマーケットプレイス
日本全国の通訳案内士によるオリジナルツアーを提供します。いままでのトラべリエンスの実績をもとに、訪日外国人のニーズをふまえ、ガイドの自己紹介動画を揃えています。ガイドの語学力や知識・人柄を知ったうえで納得してツアーを申し込むことができます。


これまで多くの地方自治体が多言語化した地元の観光地図やパンフレットをたくさん制作してきましたが、どれほどの効果があったか大いに疑問でした。いまの時代、ネット上に情報を載せなければ意味がないからです。

それにしても、全国の地域情報を英語化して発信するというのは、壮大なチャレンジです。ですが、実は誰かがやらなければならないことでした。こういう取り組みはもっとみんなで応援していかなければならないと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-10 16:49 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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