ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 05月 17日

訪日旅行市場最大の中国語通訳案内士の現場は大変なことになっていた

本ブログでは、これまで通訳案内士を取り巻く現状と無資格ガイドに浸食される実情を紹介してきました。

なかでも中国からの訪日客は、数の上では今後最大市場となることは間違いないでしょうから、中国語通訳案内士の仕事の現場が大変なことになっているのだとしたら、これは看過できない話です。

この問題について、現場から発言しているひとりの中国語通訳案内士がいます。

現役の通訳案内士として働く傍ら、訪日外客コンサルティングとビジネスマッチングを行う会社を立ち上げた水谷浩さんです。
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http://www.inbound-consultant.com/

水谷さんはあるネットメディアに「驚くべきインバウンド後進国ニッポン」という連載タイトルで、15本の文章を書いておられます(2015年5月現在)。

ここには中国語通訳案内士を取り巻く驚くような内情が明かされています。水谷さんは自ら発言を行う理由について次のように書いています。

「私がなぜこのブログを書くかをご説明すると、黒船来襲から明治維新起こり近代国家が形成されたように、訪日外国人の増加により関連の産業が勃興・急成長して、日本の新産業になると思われるからです。(中略)

オリンピック誘致プレゼンでの滝川クリステルさんの「お・も・て・な・し」は有名になりましたが、諸外国からのお客さまへの「お・も・て・な・し」をどの様に具体化するのかが最大の課題です。そのソフト開発は多言語・多文化・多習慣の異文化理解から始まり、古き良き封建的で保守的な我国国民には、このシステム構築は複雑すぎて一朝一夕には不可能でしょう。まずは現状認識から始め、産業が発展してゆく予想を語りたく思います」。(<驚くべきインバウンド後進国ニッポン ①最大の課題は「お・も・て・な・し」の具体化より)

そして、水谷さんはこう問題提起します。

「訪日旅行はインバウンド後進国という不名誉なあだ花のもと細々と生き続けてきたと言えます。実際、訪日旅行は産業と呼べる代物にほど遠く、その実情は外国人ブローカーが跋扈する準アンダーグラウンドの世界でした」。(同上)

これはどういうことでしょうか。中国語通訳案内士から見た日本の訪日旅行市場の現状、課題について水谷さんはこう書きます。

「旅行業界は、国内旅行、海外旅行と訪日旅行の3種類より成り立っております。国内での業界シェア統計によれば、JTBグループがシェア50%を超えて、衆参両院の自民党状態になっており、2位以下の日本旅行やKNT(近畿日本ツーリスト)の野党を引き離しております。海外旅行ではJTB、HISと関西私鉄系2社(阪急とKNT)が3強となっております。しかしながら訪日観光分野を見ると全体の過半数以上を占める中華圏市場ではJTBグループでも団体10%強、個人15%強となり、大手3社でも団体で20%弱と圧倒的に弱者なのです。

ではこの市場のチャンピオンはどこか? 民族系と言われる中華系ランドオペレーターの群れです。中華系は商売数の多い会社でも雑居ビルで少数の運営でしのいでおります。悪い言い方をすれば中華圏旅行ブローカーが蠢く世界なのです」。(②中華圏旅行ブローカーが蠢く世界 より)

「中華圏旅行ブローカーが蠢く世界」とは何でしょうか。

水谷さんの実況報告は続きます。

「韓国からのお客様が約200万人、中華圏からは350万人、英語圏からは227万人という昨年(2013年)の統計ですが、通訳案内士の登録数は約1万6000人位ではないでしょうか。その内英語が1万1200人、中国語が1600人、韓国語が約600人となり、訪日客数と通訳案内士の数がアンバランスになっております。特にアンバランスになっている中国語と韓国語は、現地からの添乗員がガイドを兼ねて来日して、日本の通訳ガイド市場を業務独占しておりました。

来日人数が増え、本国からネイティブが添乗で来日すると、特に日本人通訳案内士はネイティブと語学面でガチンコ勝負しなければなりませんし、中国・台湾出身の通訳案内士は中国・台湾の基準で採用される傾向があります。つまり中国語や韓国語は、本国からのライセンスを持たないネイティブとの戦いを強いられているのです」。 (⑥通訳案内士の状況とオススメ言語 より)

訪日韓国、中国市場は「現地からの添乗員がガイドを兼ねて来日して、日本の通訳ガイド市場を業務独占」しているというのです。

水谷さんは、韓国や中国のネイティブガイドを『ハリー・ポッター』のヴォルデモート卿に例えてこう説明します。

「通訳案内士のライセンスを持たず仕事をしている外国人の中にはヴォルデモート一味は存在します。LCCという空飛ぶ箒とNOビザという透明マントでアジアを飛び回り荒稼ぎをするグローバル中華系闇ガイド(国際ノーライセンス・ガイド)の存在です。

その手下に白バスや白タクを含む運送を手配するブローカーや旅行登録が有るか無いか解らない様な旅行関係者、そして日本で暗躍する外人の土産物屋仕掛け人グループ。その一味のお友達が魔法省(黒度魔法省)幹部の中におられたのも事実です。

その分霊箱は旅行業や地上手配業を隠れ蓑にする闇ガイド、旧白バス系運送業や民族系土産物屋に分散して散らばっておりました。そしてかつては本国より旅行団を買って、中国をはじめとするアジア旅行客の銀聯カード等クレジット・デビッドカードや財布から金を吸って食い物にして生きてきました。一味の中の1人が日本の運輸業界に紛れ込んで格安ツアーバスの孫請けを行い、関越道で高速バスの大事故を起こしたのです。

この事件はインバウンドや闇ガイドとは別と考えられますが、根は繋がっているのです。この正体は何なのか? 政官軍共同体をもじって、多国籍の旅運土(旅行、運送、土産)共同体なのです。アジア的地縁血縁の世界に加え、日本と外国のグローバルアンダーグラウンドが一つの裏世界を形成して、日本の良貨駆逐とインバウンド業界の秩序のレベル低下を引き起こしてきました。これがインバウンド業界の闇の勢力(アジア黒魔術一味)の正体です。正統にインバウンドの商売をやっている者にとっては大迷惑な話です」。(⑦旅行業界の闇と高速バス大事故の関係 より)

ここでいう「バスの大事故」は、2012年4月29日に関越自動車道で起きた高速ツアーバス事故を指します。その件については以下を参照。

もし中国人ツアーバスが事故を起こしていたら……を真面目に考える
http://inbound.exblog.jp/18359541/

こうした商売のやり方を、水谷さんは「台湾式営業方法」と呼んでいます。

「通訳案内士のライセンスを持たず仕事をしている外国人のことを、今でこそ黒魔術師の一団だのヴォルデモート一味だとボロクソに言いますが、東日本大地震までは彼らこそがこのインバウンド業界をけん引していたのです。日本の観光業界のアウトロー的存在と異国の激烈なグローバル競争を生き抜いてきた猛者が組んだ。そして旅行社から旅行客を買うといういわば画期的な台湾式営業方法を確立したのです。

親しい台湾出身のガイド仲間によれば、ガイドは給料無料、基本ボランティアで長時間働きます、土産とオプションのみを売り、1週間で目標1ツアー100万円(すべて手取り現金、諸課税全く無し)。成田や関西に着いた団体をバスに閉じ込めて、指定の土産物屋の定置網に追い込んでからイルカ漁の如く水揚げタイムです。また、密室であるバスの中で催眠商法を駆使して納豆キナーゼとか深海ザメの油とかを高額で一本釣りをする。清水寺や富士山に行くときオプション費用として1人3000円を集金する。嫌な方は事前にどこかの駐車場で降りて貰う、「バスが帰って来なくても当局は一切関知しない、では安全を祈る」というとんでもない事をやっていたのです。

そういうイリーガルな営業の基本を実戦して売り上げを競う。参加する営業ガイドは生き甲斐ともいえる実戦競争販売を通じて、インバウンドの市場(貧バウンド市場)の基礎を作り上げたのです。日本人のほとんどが見向きもしなかった、呆れて物も言えない間にやってしまった。それも短時間で大勢の日本人の知らない間に市場を作ったのです」。(⑨貧バウンド時代のインバウンドと近未来の姿 より)

その結果、訪日中国旅行市場の大半は、通訳案内士が不要なマーケットとなってしまいました。

「現在、日本国内では訪日団体には通訳ガイドは必須ではありません。添乗員が一人でやってしまうか、無料の闇ガイド(物売り専門ガイド)が付く場合がほとんどなのです。添乗員さんには日本の旅程資格やガイド免許を持ってなくてもできる仕組みになっております。ところが中国でも欧州でも外国人がその国の通訳ガイドをすることは禁じております。多くの国がガイドに国籍制限を設けているのです。このような寛容な仕組みは極めて珍しい状態です。きわめて不適切と言わざるを得ない方法です。

中国も外国人ガイドを禁止しており、従って私は中国ではガイドをすることができません。最近、中連協(中華人民共和国訪日観光客受入旅行会社連絡協議会)の帰国報告書に通訳ガイド名を書く欄ができました。これによってびびっている海外の旅行会社もあるのですが、理想はやはり日本の通訳ガイドがすべての団体に付く事でしょう。これには時間がかなりかかると思いますが、地道に努力すべきだと思います」。(⑫役所と業界の対立のはざまで、日本の訪日政策を憂う! より)

先日本ブログで書いた「無資格ガイド問題とは何か」の実態とは、実はこのようなものだったのです。

このようなある種絶望的ともいえる状況の中で、中国語通訳案内士の方々は今後どう局面を打開していけばいいのでしょうか。次回、水谷さんにお会いしてお聞きした実践の日々を紹介したいと思います。

中国語通訳案内士を稼げる職業にするための垂直統合モデル
http://inbound.exblog.jp/24489096/
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by sanyo-kansatu | 2015-05-17 16:49 | “参与観察”日誌 | Comments(3)
Commented by トキオ at 2015-05-21 07:54 x
新人英語ガイドです。いつもこのブログを読ませていただき、大変勉強になります。
質問させていただきたいのですが、
「現在、日本国内では訪日団体には通訳ガイドは必須ではありません。・・・・添乗員さんには日本の旅程資格やガイド免許を持ってなくてもできる仕組みになっております。」とありますが、旅行業法?通訳案内士法?か何かで、日本で有償で外国人を観光案内するのに資格がいるのではないのですか?何か勘違いしていたらすみませんが、よろしくご教示ください。
また、法的規制があるにも関わらず、警察なり観光庁なりが取り締まれないのはなぜなのですか?
Commented by sanyo-kansatu at 2015-05-22 07:25
ご質問ありがとうございました。疑問をお持ちになるのはごもっともです。ここで水谷さんが「通訳ガイドは必須ではありません」と書かれている背景には、訪日中国団体客の内情があります。少しお時間いただけますか。水谷さんをはじめ、専門家の方に確認をとり、どうお答えするべきか考えさせてください。
Commented by トキオ at 2015-05-22 14:13 x
お待ちしています。よろしくお願いします。


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