ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 05月 30日

サラリーマンからツーリストへ(新宿区役所前カプセルホテルの客層が変わった理由)

新宿区役所前カプセルホテルに泊まった翌日、同ホテル経営企画室室長の小川周二さんとフロントの川本レダさんにお話をうかがいました。

外国客に人気と噂の新宿区役所前カプセルホテルに泊まってみた
http://inbound.exblog.jp/24526002/

以下、そのやり取りです(敬称略)。

―昨日は、実際に泊まってみていろんな発見がありましたが、本当に外国客は多いですね。いつ頃からこんなに多く利用するようになったのですか。

小川「やはり増えたのは2年前でしょうね」
川本「でも、外国の方がいらしたのはもっと前からです」

―いつ頃ですか。

川本「震災の前からです。震災後は3か月ほど来ませんでしたが、すぐに回復しました」

―いまは毎日100人近い外国客が泊まっているようですね。

小川「そうですね。曜日にもよります。平日のほうが外国客の比率は高いと思います」

―どこの国の人が多いかなど、国籍に傾向はありますか。

小川「外国客はアジアと欧米半々です。アジアはタイがいちばん多く、マレーシア、シンガポール、最近はインドネシアの方が増えています。欧米は、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンなどいろいろです」

―実は、共同スペースでマレーシアから来た7人組の若いグループと話しました。訪日初日からカプセルホテルに泊まっているそうです。

小川「その話を聞いて調べたのですが、あの方たちは、昨年の9月頃予約をされています」

―そんなに前からですか。リードタイム(予約から旅行実施までの期間)が長いですね。つまり、半年以上前から日本旅行を計画していた。でも、初日からカプセルホテル。なるべくお金をかけないで日本を体験したいというアジアの旅行者が増えているのですね。

ところで、外国客はどういう経路で予約して来るのですか。

川本「ExpediaやAgoda、Booking.comなどの海外の予約サイトを通してです。他にもHostelworldやJTBのJapanicanの利用もあります。これらのサイトには『Capsule Hotel』という独立したカテゴリーがあり、リーズナブルな宿を探したい方は簡単に見つけることができます。ありがたいのは、宿泊されたお客さまがご自身のブログやSNSで広めてくれることです」

―みなさん、カプセルホテルについてどんなことを書いているのでしょうか。

小川「スペースシップみたいだとか。あとは欧米の方は身体が大きいので、足がはみ出しちゃうけどOKとか。良かったこと、困ったことなど、いろいろ書き込まれています」

カプセルホテルのどこが外国客に人気なのだろうか?
http://inbound.exblog.jp/24532753/

―そういえば、ロッカールームの脇にポラロイドで撮った外国客の写真がたくさん貼ってありましたね。

小川「あれは4年ほど前、当時の支配人が外国客へのサービスとしてポラロイドで撮った写真を記念に渡していたのです。いまはやっていませんが」
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―外国客の対応のためにどんなことをやっていらっしゃいますか。

小川「フロントには英語を話せるスタッフを常駐させています。最近はアジアのお客さまも多いので、中国語や韓国語、タイ語、フィリピン語を話せるスタッフもいます。館内の英語表示も徹底しています」

―やはり外国語対応は大事なのですね。

小川「実際に予約をしてフロントに来られて、思っていたのとはイメージが違うと感じたのかキャンセルされる外国の方もたまにいます。そんなとき、外国語できちんと対応できれば、やっぱり泊まろうかという気になってもらえるかもしれません。またうちは食べ物の持ち込みOK」

―共同ルームで先ほどのマレーシア人たちはコンビニで買った焼き鳥を食べていました。風呂上りに何か軽くお腹に入れたい。そう思って買い込んでくるのでしょうね。そういうゆるさも、こちらが数あるカプセルホテルの中で外国客の予約件数がナンバーワンとなった理由なのでしょう。

「もうひとつ大きいのは、2年前(2013年7月)に女性フロアをオープンしたことです。それ以後、客層が大きく変わりました。以前は男性客のみでしたから、サラリーマンが大半。そこに女性客や外国客が加わることで、旅行者の比率が増えたからです。一般に女性の方はウォークインで利用されることはありません。地方から旅行で来た方や東京で就活しているという大学生もいます。女性客も外国客も事前に予約されるお客さまだという点で共通しています」
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―確かに、共同ロビーで見かけたのは若い方が多かったです。カプセルホテルでよく見かける酔客という感じの人はいませんでした。実際、外国の女性がたくさんいるような場所では、酔っ払いおじさんも気を抜いていられませんものね。もはやここは、外国人に限らず、旅行者のための宿泊施設になっているのですね。

ところで、もうひとつお聞きしたかったのは、一般に外国の個人客はひとつのホテルに連泊する傾向が高いといわれますが、こちらに連泊される方はいるのでしょうか。

小川「いますよ。2~3日は当たり前。長い人は2週間の連泊もよくあります。実は、ここ数か月連泊している外国人もいます。オランダの方です」

―数か月ですか。もうアパート代わりですね。よほどここが気に入ったのでしょうか。

もっとも、外国客が増えると、これまでになかった問題なども起きたりするのではないでしょうか。

川本「そうですね。カプセルの中でもwi-fiフリーなので、スカイプ電話をかけたり、グループでおしゃべりしたり、他のお客さまに迷惑なことがあります。あとみなさん荷物が大きいので、深夜にその整理をごそごそ始めたり」
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―彼らは海外旅行をしているのですから、それもまた楽しみでしょう。でも、それでは一般の日本のお客さまはたまらない。だから、『Please be quiet!』とあちこちに貼り紙してあるのですね。

小川「あとはタトゥーの方はチェックイン時にお断りしています。これを外国の方に説明するのが難しいですね。刺青のもつ社会的な意味が日本と外国では違うからです。外国の方にとってはおしゃれとしてタトゥーをしてらっしゃるのでしょうが、日本のお客さまにはアレルギーのようなものもあり、これは日本政府観光局でも、どう外国客に説明していくべきか検討していると聞きます」

―今後についてはどうお考えでしょうか。

小川「女性フロアを増やしたいと考えています。現在はワンフロアしかないのですが、おかげさまで予約がいっぱいだからです。またこことは別に女性専門のカプセルホテルもつくりたいですね。スタッフは全員女性です」

小川室長によると、同カプセルホテルの開業は1983年。80年代にこの業界は一気に成長したものの、バブル崩壊以降、斜陽業界と呼ばれてきたといいます。

「多少景気が良くなってきたといっても、これからは日本客相手だけではやっていけません。何より平日の稼働率を稼いでくれる外国客の存在は貴重です。2年前の女性フロアの新設も相乗効果となり、予想以上に外国のお客さまに来てもらえるようになりました。

おかげさまで現在、稼働率は8~9割と高推移していますが、課題は海外サイトによる予約が増えたことで、ウォークインが減り、割安な料金の利用が多くなっていることです。今後の課題はいかに客単価を上げるかです」

海外からのネット予約が増えることで稼働率は上がったものの、収益を上げるためには、客単価を上げる必要があるという状況は、今日のホテル業界に共通しています。国内外の予約サイトや自社サイトなど、売値の異なる複数のチャネルを通じた予約の配分をいかに調整するかは、予約担当者のレベニューマネジメントの腕にかかっています。

「見極めのポイントとなるのは、イベントと天候でしょうか。たとえば、東京マラソンや最近では嵐フェス、東京ドームでの東方神起のコンサート、年末のコミケの当日などは、数か月前から予約がいっぱいになります。また台風が近づいてくると、電車が止まることを予想して予約がどっと入ってくることもあります」

今後この傾向はますます強まり、ホテル経営におけるレベニューマネジメント担当者の責任が大きくなることでしょう。

サラリーマンから国内外の(女性も含めた)ツーリストへ。新宿区役所前カプセルホテルの人気の理由は、こうした客層の変化という市場のニーズに柔軟に対応し、ビジネスモデルの組み替えを無理なく行なってきたことにあるようです。
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by sanyo-kansatu | 2015-05-30 10:17 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)


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