ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 06月 07日

2015年北朝鮮は観光誘致を積極的に進めています(「共産主義テーマパーク観光」は実現するか?)

今年3月上旬、北朝鮮が唐突に外国人観光客の受け入れを開始して以来、北朝鮮が観光誘致を積極的に(?)進めている様子が報じられています。今年は朝鮮労働党結党70周年でもあり、多くの外国客を呼び込むことは至上命題なのでしょう。
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【速報】北朝鮮 外国人観光客受け入れをようやく再開!!(Daily NK 2015年3月4日)
http://dailynk.jp/archives/36660

その最初の観光目玉として北朝鮮が外国客の集客を働きかけたのが、故金日成主席の誕生記念日「太陽節」に合わせて4月12日に開催される「平壌国際マラソン」の募集でした。

平壌マラソン出場OK、活気を取り戻した丹東、エボラ措置解除に沸く北朝鮮関連ビジネス(Daily NK 2015年3月5日)
http://dailynk.jp/archives/36676

以下のロイターの記事も指摘するように、このところ欧米諸国の北朝鮮観光がちょっとしたブームとなっています。

焦点:北朝鮮観光ブーム、相次ぐ拘束にも米国人旅行者が増加(ロイター2014年6月14日)
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPKBN0EP03A20140614

ブームといっても、欧米人の渡航者数は年間数千人規模ですからたいしたことではないのですが、やはり21世紀最後の秘境ともいうべき北朝鮮に一度は訪ねてみたいという欧米人はいるものです。平壌マラソンにも600人の外国人が参加しているのです。

平壌国際マラソン開催 外国人も約600人参加(Daily NK 2015年4月14日)
http://dailynk.jp/archives/39673?krkj=144326

朝鮮側も、観光誘致を進めるための事業に着手し始めているようです。

「ドルを稼ごう」北朝鮮が外国人観光客に咸興を開放 (東亞日報2015年4月6日)
http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2010040664158

「北朝鮮が、外国人観光客を対象に海水浴場を初めて開放する方針であることが明らかになった。特に、今回北朝鮮が開放を決めた咸興(ハムフン)近くの麻田(マジョン)海水浴場は、近くに金正日(キム・ジョンイル)総書記の愛用の別荘や東海(トンヘ)艦隊司令部が構える北朝鮮の要衝地である。このような地域まで外国人に開放するというのは、北朝鮮が観光を通じた外貨獲得に目覚めただけでなく、今後外貨稼ぎとして非常に重視しているものと解釈できる」。

北朝鮮が外国人観光客誘致に注力 大型旅行社を新設 (聯合ニュース2015年4月30日)
http://japanese.yonhapnews.co.kr/northkorea/2015/04/30/0300000000AJP20150430003400882.HTML

外国客を呼び込むためには、旅行会社による受け入れ態勢を整備しなければなりませんから、「大型旅行社」を新設するのだそうです。しかし、こうした動きは日本人の朝鮮観光が解禁された1980年代後半以降、日本客の取り込みのためにいくつかの旅行会社が新設されたという過去の事例があり、実のところ、特別斬新な動きであるとはいえません。

北朝鮮観光25年を振り返る
http://inbound.exblog.jp/20192588/

もっとも、北朝鮮が外国客を誘致するうえで桁違いの人口をもつ隣国の中国人観光客をどう受け入れるかは最優先事項です。中朝国境に位置する遼寧省丹東市からの鉄道ツアーも動き出すそうです。

(中国)瀋陽-北朝鮮の観光列車が運行開始、料金3.8万円から (ロイター2015年 5月 14日)
http://jp.reuters.com/article/TopicsComprehensiveAttentionEconomy/idJP00093300_20150514_00220150513

記事にはこうあります。「旅行者は瀋陽市を出発した後、北朝鮮との国境に位置する丹東市で、丹東発平壤行きの95次中朝国際列車に乗り換える。国際列車は鴨緑江を挟んで、丹東市と対岸の街、新義州市(北朝鮮)を経て、首都平壌市に到着する。旅行日程は4日間。平壌、開城、妙香山、板門店など名所を観光。羊角島国際ホテルなど平壌の有名ホテルに宿泊する。1人当たりの旅行費用は2000―3000人民元(3万8629円―5万7943円)に設定されている」。

これは一般的な中国東北三省から陸路で入る北朝鮮へのツアー料金と比べると、少し割高に感じます。中朝国境は丹東以外にもいくつかあり、複数の国境ゲートから入国する1泊2日や3泊4日の1000元(2万円)程度の安いツアーがたくさんあるからです。平壌に宿泊するからでしょうか。もっとも、このルートは外国客には許されておらず、中国人のみ参加可能です。

以下の写真は、昨年7月に訪ねた丹東駅や丹東から平壌への鉄道チケット売り場です。数年前までは中国からの北朝鮮への公務旅行が多かったそうです(実態は公費を使った観光旅行)。しかし、習近平政権になって以降の「ぜいたく禁止令」で丹東経由の朝鮮旅行は下火となっていました。この国際列車の乗客も一時に比べて激減していたのです。
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ぼくも一度この国際列車に乗って平壌に行ってみたいと思っていますが、いつ可能となるのでしょうか。

さて、朝鮮側の観光誘致の意気込みを伝える以下の記事もあります。

北朝鮮 観光開発に全力、2020年に観光客200万人を目指す(新華ニュース 2015年6月1日)
http://www.xinhuaxia.jp/social/70714

北朝鮮は「2017年までに、観光客数を今の10倍に増やし、2020年に200万人を超える目標」を掲げているそうです。

北朝鮮が外国客誘致を進めるうえでのキラーコンテンツは金剛山です。5月下旬、海外の関係者を集めて金剛山観光に対する投資説明会を現地で開いたようです。

北朝鮮・金剛山で投資説明会 日本企業も参加 「観光資源ある」(共同通信社2015年5月27日)
https://www.youtube.com/watch?v=aa9-UB4yj20
http://www.47news.jp/movie/general_politics_economy/post_12098/

「北朝鮮が日本海側の拠点都市・元山から景勝地の金剛山までの一帯に設置した「国際観光­地帯」への投資説明会が27日、金剛山で開かれた。日本を含む各国の企業関係者ら約130人が参加し、観光資源や投資環境などの説明を受けた。昨年6月の同地帯設置後、現­地での投資説明会は初めて」。

共同通信の動画によると、日本からは韓国観光の専門旅行社「三進トラベル」の社員が出席していたようです。

三進トラベル
http://www.sanshin-travel.com/

ぼくは2013年8月、金剛山を訪ねています。韓国の現代グループが投資しただけあって、北朝鮮国内で唯一といえる外国客の受入が可能なリゾートインフラがあることは確かです。ただし、韓国を追い出し、自前でどこまで運営できるのかは大いに疑問ですけれど。だからこそ、海外からの投資を促進したいのはわかります。

2013年、金剛山観光はどうなっているのか?
http://inbound.exblog.jp/22561895/

中止からはや6年。韓国から入る金剛山ツアーと残されたインフラについて
http://inbound.exblog.jp/22562596/

北朝鮮が進めようとしている観光誘致の行方がどうなるかについては、あげればきりがないほど疑問点が出てくるのですが、彼らが本気で外客を受け入れるとなれば、彼ら自身のあり方も問われることになるのは間違いありません。それで体制がどうこうなるとか単純な話ではないでしょうけれど、これまで3回北朝鮮を訪ねたぼくの感じ方としては、欧米客や日本客はともかく、圧倒的に多数派の中国客の訪朝が朝鮮の人たちに大きな影響を与えていることは確かだと思います。中国人は欧米人や日本人のように、北朝鮮の体制や異文化性を尊重する態度をまるで取りません。朝鮮の後進性についてもストレートな態度を示すため、彼らも逆に中国人に対しては、本音はともかく、黙り込むしかありません。その超然とした宗主国的ふるまいとそれを裏打ちする圧倒的な経済優位性に、少なくとも一般市民レベルでは抗うことができないのです。

こうした状況の中で、北朝鮮の観光誘致はどうなっていくのか。

北朝鮮観光に展望はあるのか…活路は「共産主義テーマパーク」(Daily NK 2015年05月26日)
http://dailynk.jp/archives/44326

同記事の中で、北朝鮮の観光誘致の可能性については「北朝鮮が観光で成功するには二つの要素が必要だ。一つは中国人、特に地理的に近い東北地方の中国人が気軽に行ける安いツアーの商品化。二つ目は北朝鮮を『共産主義テーマパーク』と考える西洋人向けに少々高価でも質が高くて多様なツアーを開発することだ」といっています。

中国人向けには北朝鮮と国境を接する東北三省の中国人向けのツアーの商品化、日本人を含めたその他外国人には高品質なツアーを開発することだと専門家は述べています。

しかし、中国から朝鮮への国際線がけっこう高いうえ、どこまで高品質なツアーを開発できるのか、ぼくが見た限りでは厳しいものがあります。

同記事でもこう書かれています。

「さらに、金正恩氏肝いりのあの「観光事業」に苦言を呈した。

「馬息嶺(マシンリョン)スキー場は成功しない。わざわざスキーをするため北朝鮮まで行く旅行客はいないだろう。北朝鮮は世界の需要がまったく読めていない」」

そんなの当たり前ではないですか。ぼくも馬息嶺スキー場の建設現場を視察したことがありますが、誰の対面のためにあんなものをつくったのか。駆り出された労働者の人たちの様子を見て、そう思ったものです。

外客誘致のためにインフラは必要でしょうが、それがスキー場なのか、という根本的な方向性の誤りがいまの北朝鮮の観光振興の進め方にはあると思います。

だからといって、外国人の話に耳を傾けるほどの柔軟性や精神的なゆとりがいまの彼らにあるかといえば、どうでしょう。ぼくは1980年代の中国の半ばなし崩し的な外国人観光客の開放の流れを見ているだけに、そのような度量がいまの朝鮮にあるとは思えないので、なかなか難しいなあと感じています。

それでも、金剛山はひとつの可能性ではあるので、うまくやってもらいたいものです。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-07 19:26 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)


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