ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 06月 08日

爆買いを見るにみかねた中国政府は輸入品の関税を引き下げるもよう

先週、中国のある友人から一通のメールが届きました。

「最近、円安で日本商品が安く買えるため、日本に旅行に行った中国人の爆買いが有名になりましたし、日本在住の中国人に化粧品や日用品を買わせて宅配便で送ってもらい、中国国内でネット販売する人が増えています。

こうしたなか、中国政府は6月1日から日用品の輸入関税を大幅に下げました。今後は中国でも以前より安く日本の輸入商品を買えるようになりそうです」。

彼が教えてくれたニュース記事は以下のものでした。

6月1日起中国降低部分日用消费品进口关税 (新華網2015年5月25日)
http://news.xinhuanet.com/fortune/2015-05/25/c_1115398300.htm

この記事によると、中国政府は6月1日よりアパレルや靴、スキンケア用品、紙おむつなどの輸入関税を平均50%以上引き下げるというものです。
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この図にあるように、各商品の輸入関税はこんなに下がるといいます。

スーツや毛皮 14~23%→7~10%
靴やスポーツシューズ 22~24%→12%
紙おむつ 7.5%→2%
スキンケア用品 5%→2%

この措置は中国の消費者の国外での消費があまりに拡大したため、国内の消費と民生、雇用、さらには国内産業の生産レベルを改善するためのもので、アパレルやシューズに加え、ベビー用品、キッチン器具、食器、眼鏡などの関税も下げるといいます。

この話を何人かの在日中国人にしたところ、下げると政府がいうそもそもの関税率についての疑問が出てきました。

「中国の輸入商品の関税はもともとこんなに低かったのだろうか。日本と比べると、同じ商品が2倍以上する実感がある。つまり、関税を下げただけでは、中国の消費者は輸入商品を安く買える実感は出てこないのではないか」。

中国メディアの関連記事を検索していると、いくつか見つかりました。

降低关税增设免税店 国务院五箭齐发力促消费升级 (新華網2015年4月29日)
http://news.xinhuanet.com/fortune/2015-04/29/c_127745173.htm

この記事によると、今回の輸入関税引き下げは4月下旬に開催された中国国務院常務会議で示されていた政策で、中国経済を投資に頼る現状から消費による成長へとモデルチェンジするためのものだといいます。

その施策としては、輸入関税を引き下げ、国際空港などの免税品店を増設し、国内での輸入商品の消費を増やすことです。

以下の5つの具体的な促進策があります。

①国外での日用品の消費が拡大するなか、6月末に輸入関税の引き下げと対象商品の拡大を実施する。
②アパレルや化粧品などの消費税を調整する。
③国際空港などの免税店の販売品目を拡大し、中国の消費者が輸入商品を免税価格で購入できるよう便宜を図る。
④海外で購入した商品の通関と消費税の払い戻しの手続きの簡素化を進める。
⑤中国ブランドの質を高めるために、リアル商店やオンラインショップで消費者が快適に安心して利用できるようにする。

先ごろ実施された輸入関税の引き下げは当初、6月末にやる予定だったようですが、1ヵ月前倒しになったようです。いつものことなのでしょうが、この国ではあらゆることが民意の承諾もなく、いきなり決められてしまうのですね。

さらにこの問題を掘り下げる記事もありました。

进口日用品6月底前试点下调关税 还去国外血拼吗? (新華網2015年5月4日)
http://news.xinhuanet.com/fortune/2015-05/04/c_127760514.htm

ここでは、4月中旬に発表された「2015年中国消費市場発展報告」によると、全世界の贅沢品の消費の46%を中国の消費者が占めていて、そのうち76%は国外で消費するという事実から書き出されています。

これは中国経済にとって喜ばしき話ではありませんから、国内消費を拡大するために6月末に輸入関税を引き下げることを前の記事同様、説明しています。こうして中国の消費者は海外から国内に消費の場を逆流させることができるだろうと述べています。

この記事では、関税引き下げ以外の全国各地での取り組みも紹介しています。「とにかく国内で買わせよう」ということでしょう。

広州の保税区では海外から輸入商品を直接買い上げ、販売するオンラインショッピング体験センターを5月1日にオープンさせたそうです。ここではフランスのワインや英国の粉ミルク、花王の紙おむつなどを国内の販売店より安く販売しています。

また河南省の鄭州空港で4月30日より輸入商品のオンラインショッピングサービスを始めたそうです。河南省の消費者はこれで空輸による短期間での購入ができるといいます。

こういう記事を読むと、いま盛んに行われている海外在住の中国人の爆買いおよび中国への搬送によって支えられている日本商品のネット販売という民間ビジネスを、政府が代行しようとしているようにも見えます。儲かる話は官に仕切らせろ、民間は手を出すな、という感じすらしないではありません。まあこれもいつものことでしょうけれど。

記事では、これらの取り組みは輸入商品価格の引き下げに貢献するはずだが、もうひとつの問題として、中国国内の流通コストや経営手法、販売店舗の不動産価格の高騰などがあることを指摘します。欧米の販売員に比べ中国の販売員の給料は低いのに、なぜ中国の商品価格は欧米より高いのか。そうしたあらゆるしわよせは中国の消費者が負っているといいます。結局のところ、中国の輸入商品が高いのは、関税のせいだけではないということでしょう。

そして最後に、中国人が海外で購入する商品の多くがメイドインチャイナであること。つまり、中国の国内向け商品は輸出商品より品質が低いという実態にも触れます。国内企業が海外企業の要求する水準に対応しているように、国内向け商品の生産も同じ水準に引き上げることができれば、多くの問題を解決できるとしています。

確かに、最後の指摘は昔からずっと不思議に思っていたことでした。海外でプロデュースし、中国でつくった商品を、彼らはわざわざ海外に出かけ、逆購入しているというわけですから。

いずれにせよ、この一連の施策は中国人の爆買い現象にどんな影響を与えるのか、しばらく様子を見ていこうと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-08 09:53 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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