2015年 06月 17日

観光をマーケティングに活かせない日本の製造業こそ問題

「訪日客のインバウンド消費が日本経済を救う」(ダイヤモンドオンライン)式の論調やそれを後押しする政府の統計発表などが続いています。

6月に入り、政府発の訪日旅行拡大効果を伝える強気の発表続く
http://inbound.exblog.jp/24579303/

「○○が日本(経済)を救う」といったタイトルの立て方は、一種のノリみたいなもので、そんなに深く考え練られたものではないのでしょうが、「インバウンド消費への対応が経済復活の柱の一つになるだろう」といったあたりさわりのない論調に対しても、世の中には反論したくなる人がいるものです。

アホノミクスと呼ばせないために必要なのは現実的エネルギー・環境政策 金融、観光は日本経済成長の原動力には力不足(WEDGE Infinity2015年6月11日)
http://blogos.com/article/116169/

反論の理由はこうです。

「観光産業が作り出す付加価値額が相対的に少ないとの問題もある。昨年の過去最高の訪日観光客1341万人が日本で宿泊、外食、買い物、交通費に使った金は約2兆円だった。誘発効果もあり経済成長には寄与するが、大きく経済を引き上げ、1人当たりの平均給与が上がることにはならない。ちなみに製造業の売上額は約390兆円ある。

『「里山資本主義」では持続可能な社会をつくれない』で触れた通り、日本では観光・外食産業が作り出す1人当たりの付加価値額は大きくないからだ。製造業の1人当たり付加価値額約750万円の半分にも達しない。付加価値額、つまり稼ぎが少ないので、1人当たり給与も大きくない。訪日外国人を増やし、消費する金額を伸ばせばよいとの考えもあるが、この分野で大きな成長を作るには限度がある」(一部抜粋)。

もっともな話です。2014年のインバウンド消費額が2兆円超で、訪日客が2000万人となる近い将来には4兆円を目指すというわけですから、日本の500数十兆円というGDPの規模からすると、ささやかな数字です。日本の経済を語るうえで、わずかな日数を滞在するにすぎない外国人の財布をあてにするのは、もとより限度のある話です。

ですから、これは何をいまさらというような話であって、問題なのは、この筆者も述べるように、日本の製造業がかつての勢いを失っていることでしょう。日本の経済指標で右肩上がりに伸びている数少ないマーケットにケチをつけている場合ではないはずです。

「アジア諸国における日本製品のシェアは下落を続けている。図-4はアジアの主要国の輸入における日本のシェア推移を示している。どの国でも波を描きながら日本のシェアは低下を続けている。中国、韓国の進出がありシェアを落としている側面はある。しかし、他の主要先進国との比較では、日本の輸出の伸びは相対的に低い状態にある。図-5が示すように、ドイツを筆頭に、他の先進諸国は輸出を日本以上に伸ばしている。

なぜ、日本の輸出は相対的に伸びなかったのだろうか。日本企業だけ海外生産が増え空洞化が起こったためだろうか。それは正しくない。失われた20年間で日本の製造業が随分力を失くし、成長産業で他の先進諸国に遅れを取ったからだ。海外での製造を含め日本の製造業が力を失くした20年だったのだ」(一部抜粋)。

この筆者によると、日本の製造業不振と輸出競争力の低下の理由は、ひとことでいえば、デフレにあるとのことです。

「日本の製造業がこれから目指すべきは、このアジアの巨大な需要を満たすための供給能力を整えることだが、付加価値額が低い製品は現地で生産を行い、付加価値額が高い製品を国内で製造することを考えるべきだ。アジアの需要を掴み日本国内の製造業の成長を図ることにより、結果として給与増も可能になる。そのためには、企業が設備投資と研究開発の意欲を再度持つようになるデフレ脱却がまず必要になる。アベノミクスの方向は間違っていない」(一部抜粋)。

デフレゆえに、設備投資と研究開発が進まなかったことが問題だというわけです。

その理屈の是非や妥当性はともかく、この人は「日本の製造業がこれから目指すべきは、このアジアの巨大な需要を満たすための供給能力を整えることだ」と言っています。少子高齢化が進む日本の内需を拡大させるのは難しい。だから、アジア市場にモノを売るべきだというわけです。

だとしたら、もっと観光(=アジア新興国の消費者動向)をマーケティングし、商品企画や開発に活かすべきでしょう。この20年間、さまざまな理由から、アジア新興国の消費マーケットの実情をふまえたマーケティングに基づく商品企画や開発がうまく機能しなかったことこそが、日本の製造業不振と輸出競争力の低下の理由ではないかと思うのです。頼りにしていたコンサルティング会社が用意したマーケティング資料の多くも、製造業からみれば、実感をともなう内実を備えていなかったからではないでしょうか。それゆえモチベーションも強く発揮されなかったのでは。

日本のインバウンド振興には3つの意味があるとぼくは考えています。

まず、訪日外客による直接のインバウンド消費。これは前述したように、伸びているといっても、経済全体から見ればささやかなものです。ただし、これまで日本に存在していなかった新しい消費者(=外国客)が現われていることは、製造業にとっても製品企画や開発のモチベーションとなりうるはずです。

ふたつめの意味が、まさにそれ。日本をショーウィンドに見立てて、あらゆる商品やサービスをアジア新興国を中心とした消費者に知ってもらい、彼らのニーズを探ることで、製造業の商品開発に活かすことです。いまや日本に大挙して訪れるアジアの消費者は、かつて存在した日本の製造業の送り出す商品規格との質的・価格的ミスマッチングを埋めることができる存在といえます。

三つめは観光プロモーションのもつパブリック・ディプロマシー的な意味です。

そういう意味でも、観光や金融、通信を製造業と切り離して論ずることは賢明ではないといえるでしょう。むしろ、それらともっと連動させるべきではないか。そのように考えると、世の中がもっと面白く見えてくると思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-17 11:15 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)


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