2015年 06月 17日

シェアハウスのホテル化で外客受入に成功=「ゲスト交流型ホテル」とは?

台東区池之端にあるホテルグラフィー根津は、知る人ぞ知る隠れ家ホテルです。開業は2013年3月で、いまや外国客が90%以上を占めるといいます。
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ホテルグラフィー根津
http://www.hotel-graphy.com

海外ホテル予約サイトのエクスペディアを通じて2014年に予約件数の多かったホテルが表彰される「エクスペディアアワード2015」でベストパートナー部門を受賞しています(http://www.travelvoice.jp/20150325-39644)。

このホテルのコンセプトは「ゲスト交流型ホテル」です。運営しているのは、ソーシャルアパートメント(シェアハウスの進化系)という新種の賃貸住宅を手がけてきた株式会社グローバル・エージェンツという会社です。

株式会社グローバルエージェンツ
http://www.global-agents.co.jp/

シェアハウスの発想で運営されている「ゲスト交流型ホテル」が、なぜ外国客に人気なのか。株式会社グローバルエージェンツの山崎剛代表取締役社長に話を聞くことができました。以下、そのやり取りです。

―こちらを初めて訪ねたとき、地下鉄千代田線根津駅から狭い路地を抜けていくと、突然ホテルが現れたという印象でした。こんな住宅街の中にどうしてホテルがあるのだろうと。もともとこの建物は何だったのですか?

「築40年の旅館をリノベーションしたものです。客室数は64室。旅の醍醐味は、地元の人との交流にある、というのが私の考えです。ですから、ここにはホテルの宿泊客だけでなく、日本人のレジデンスも住んでいます」

―ホテルでありながら住人もいる。ゲストとレジデンスが同じ空間を過ごすということが「ゲスト交流型ホテル」ということなのですね。

「『ゲスト交流型ホテル』を説明するためには、もともと弊社が手がけている『ソーシャルアパートメント』について話す必要があるでしょう。

これは、従来のマンションと違い、プライバシーがしっかり確保されたワンルームに加えて、入居者同士が集まれるラグジュアリーな共用ラウンジが備えられている賃貸物件です。

ワンルーム+αという発想です。家の中でもなく外でもない共用ラウンジというセミパブリックなスペースで行われる多様な入居者間のコミュニケーションこそが、ソーシャルアパートメントの一番の醍醐味。多様な世代、属性、国籍の人たちが住み、共用ラウンジでの日常的なコミュニケーションを通しえ、想像を超える気づきや可能性の発見に出会うことができ、自分の世界が数倍に広がるはずです」。
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世界が広がる隣人交流型マンション『SOCIAL APARTMENT』
http://social-apartment.com/

―住人同士のコミュニケーションにこそ価値がある住まい方ということでしょうか。その発想の先にあるのは、宿泊客同士がコミュニケーションできる空間を備えたホテルということなんですね。こういうスタイルは外国客に好まれるものなのでしょうか。実際の宿泊客の国籍はどうですか。

「欧米客とアジア客は半々。最近、アジア客が増えています。実際には、宿泊客のうちどれくらいの方がこのコンセプトを理解しているかはわかりません。それでも、海外を旅したことのある人ならたいていゲストハウスの世界を知っているので、ゲスト同士のコミュニケーションの場があることは喜んでもらえると思っていました。ただし、ホテルを開業する以上、多くの外国客に来てもらえるように、具体的には以下のことを考えました。

まず価格設定を都内のビジネスホテルの価格帯に合わせました。これは海外FITのボリュームゾーンにも見合っています。その代わり、フロントオペレーションを簡素化し、客室の内線電話も外しています。いわゆる“おもてなし”はやらない。サービスを売りにしない。国内のホテルがよくやる宿泊プランも一切なし。

そのぶんリノベーションで力を入れたのはデザインのクオリティです。外国客は海外の予約サイトの写真を見ながらホテル選びをする。価格以上の価値を感じさせるデザイン性、ここで勝負すればいい。むしろこれが外国客にはわかりやすく、選びやすいのです」。
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実際の宿泊客の様子を知りたくて、荒島浩二支配人にも話を聞きました。

―外国客はやはり海外のホテル予約サイトを通して予約されるのですか。

「expediaとBooking.com から予約が入るのがほとんどです。一般に外国客は、エリアと価格帯でホテルを選びます。うちは上野エリアとして検索されます」

―上野は成田空港からのゲートウエイですから、初めて日本を訪れる旅行者にとってホテルのロケーションとしては最適に映るでしょうね。

「でも実際には、上野駅からのアクセスはあまりよくありません。歩くと15分以上かかるので、タクシーでワンメーターと伝えるようにしています」

―確かに、住宅街の中にあり、外国客が歩いて探すのは大変だと思われます。しかし、山崎社長が話していたようにデザイン性と価格帯にそれ以上の価値を見出すことで選ばれているということなのでしょうか。

「そうだと思います。そこに価値を感じる方が選んでくれていると思います」
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―ロビーのカフェや共同スペースで見かけるのは、多国籍の方たちですが、やはり若い世代が多いように見受けられます。

「はい、若い世代の宿泊客が多いと思います。最近、日本にもデザイン性を売りにしたホテルが開業していますが、古い施設をリノベーションしたタイプが増えています。その先駆けが目黒にあるCLASKAというホテルで、若い旅行者に人気です」。

CLASKA
http://www.claska.com/

―いまでもレジデンスの方はいらっしゃるのですか。ゲストの方と一緒に共同キッチンを使ったりするのですね。

「ええ、そうです。開業して2年たちましたが、最初はレジデンスの方の比率も高かったのですが、だんだんゲストが増えてきました。現在では約8割がホテルゲストです」。

―外国客はどんな過ごし方をしているのでしょう。

「アジア客と欧米客ではずいぶん違います。アジア客は連泊といっても、2~3泊がふつう。滞在中の細かいすきのないスケジュールを組んでいて、ショッピングを中心に都内を散策しているようです。ですから、フロントに聞かれる質問も、たいてい『ここに行くにはどうすればいい?』というようなものです。やりたいことは決まっていて、そのための具体的な方法を知りたいのです。
 
一方、欧米客は1~2週間滞在する方が多い。予定もそんなに決まっていなくて、前の晩になって明日富士山に行く、日光に行くなんて言っている。聞かれるのは、『今日ヒマなんだけど、どうすればいい?』というような質問です」。

―なるほど、アジア客と欧米客では行動パターンがずいぶん異なるのですね。

今後、外国客向けに何か新しい取り組みはお考えですか。

「実は、うちのホテルには個室だけでなく、ドミトリー6人部屋があるのですが、先日50代のフランス人男性4人組が1週間滞在されました。欧米客にはそれぞれ自分のスタイルがあり、細かいことは気にしない。それでも、今度ふたつの客室をぶち抜いてスイートルームをつくる予定です。いろんなタイプのゲストがいらっしゃれるようになると思います。

課題に感じているのは、地元の谷根千の面白さをゲストの多くが知らないでいることです。上野に近い、価格帯、デザイン性の観点でうちを選んでくれるのはわかりましたが、せっかくホテルの周辺は面白いエリアなのに、そこを通り過ぎて行ってしまってはつまらない。ですから、今後はホテルを起点とした地元ツアーをやりたいと考えています」。

同社は今年8月、沖縄にホテルエスティネーション那覇を開業する予定です。こちらはホテルゲストのみの施設ですが、地元那覇の人たちも利用できるよう1階にバーを設け、レジとホテルのフロントを一体化しているそうです。 

ホテルエスティネーション那覇
http://hotel-estination.com/

こうした従来のホテル業界の既存概念にとらわれない自在な発想やオペレーションも「100室未満の規模だから可能」といえるのかもしれませんが、大学時代に起業したという若いベンチャー企業家(山崎社長)にとって、今日の訪日外客の増加というトレンドは自らの考える新しいビジネスの可能性を賭けるうえで追い風になっていることがよくわかります。

いまの時代、自分たちが考えるべきことは「多様なインバウンドのニーズのどこにニッチを見つけるか」(荒島支配人)だというのです。こうして新しいスタイルの宿泊施設が生まれていくのだとしたら、いい話だと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-06-17 14:58 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)


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