ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 07月 12日

遊び心がなければ、海外客を惹きつけることはできない(UDSの考えるデザインホテル)

歌舞伎町にある新宿グランベルホテルの驚くほど自由な客室デザインは、日本を訪れる外国客にひそかに人気のようでした。

歌舞伎町に人知れず外客率8割というデザインホテルがある
http://inbound.exblog.jp/24676453/

いったいこのホテルはどんな発想に基づいて設計されたのか。外国客の予約が殺到する理由は何なのか。

設計を担当したUDS株式会社の寳田陵クリエイティブデザインディレクターに話を聞くことができました。

UDS株式会社
http://www.uds-net.co.jp

―新宿グランベルホテルはどのようにして生まれたのでしょうか。

「新宿グランベルホテルのコンセプトをお話するには、先にできた渋谷と赤坂のグランベルホテルの話から始めたほうがいいと思います。グランベルホテルの運営会社である(株)フレンドステージから弊社にホテル事業を始めるので、設計を担当してほしいという話があったのは、2002年に遡ります。このとき、同社は都内にいくつかの自社所有の土地があり、その場所ならではのホテルをつくりたいという考えがありました。

しかも、一般のシティホテルではなく、価格帯もビジネスホテルに合わせた宿泊特化型でいきたい。ただし、他のホテルグループと同じスタイルでは勝ち目がないので、たとえば、最初に開業した渋谷グランベルホテル(2006年7月)の場合は、渋谷らしさを強く打ち出すことを考えました。

具体的にいうと、渋谷を日常的な活動の場にしているような若い世代(20~30代)を惹きつけるという意味で、館内や客室全体を「ポップ、アート、ミニマル」というコンセプトで統一するというものです。このホテルは客室数105室のホテルですが、最上階にペントハウススイートを用意しています。我々はまずこのスイートの世界観を作り上げることに注力し、そこでできたイメージをスタンダードルームにも広げていったのです。

しかし、先ほど述べたように、価格帯は他の宿泊特化型ホテルと変わらないものにするということでしたから、14㎡のシングルルームで、東横インと価格は変わらないのに、客室はまったく違う世界がある、というものにしたかったのです。

一方、同じ06年12月に開業した赤坂グランベルホテルは、30~40代以上の大人の社交が楽しめる上質感を打ち出すことにしました。コンセプトは「上質感、色艶、遊び心」です。そのぶん価格帯は渋谷と同じというわけにはいきませんが、やはり上階にこのホテルのイメージを具現化するスイートを設けました。

実は、客室稼働率でいうと、渋谷より赤坂のほうが高く、現在では平均95%以上で、外国客比率も6割を超えています。渋谷も赤坂ほどではないですが、外国客の比率がだんだん高くなってきています」。

―なぜそんなに外国客が多いのでしょうか。

「渋谷や赤坂が開業した頃は、まだトリップアドバイザーが存在していない時代でした。ですから、当初は国内客しかおらず、外国客は近くにあるセルリアンタワーのほうに泊まっていたようです。ところが、あるとき私たちの知らないところで、海外の雑誌に渋谷グランベルホテルのことが紹介されていたのを見つけました。おそらく海外または日本在住の外国人記者がここを見つけて、東京にあるヒップなホテルということで紹介したのでしょう。

その後、SNSの時代がきて、あっという間に海外のデザインホテルに関心のある層に広まったのだと思います。エクスペディアなどの海外ホテル予約サイトが続々と参入してきたのも同じ頃で、ビジネスホテルの価格帯でありながらデザインが面白いということから、予約が入るようになったのです」。

―外国客を惹きつけるデザインホテルとはどういうものなのでしょうか。

「やはり遊び心の要素があることではないでしょうか。一般に日本の宿泊特化型ホテルは設備や機能性は優れていますが、その点は欠けています。最初から追求していない。一方我々の考えるデザインホテルは、機能性よりデザイン性を優先します。

実は、私はこの数年間海外の人気のあるデザインホテルを訪ね、客室を中心にその特徴をスケッチしてきました。それらのホテルは客室の形が三角形だったり、内装のデザインが懲りすぎていたり、使い勝手は必ずしもいいとは限らない。しかし、そうしたルーズさは、日本のビジネスホテルのきちっとした機能性よりも好ましいと評価されるのです。彼らが求めるのは、驚きです。客室の扉を開けた瞬間、Wao!と声を上げたくなるようなデザイン性に惹きつけられるのです。

もっとも、我々は日本人ですから、どこか機能性も追求したくなるところがあるのも確かです。ヒップな外国客が好む客室だけでは、日本人が泊まってくれない。それでは困ります。そこは我々日本人デザイナーのバランス感覚と腕の見せどころともいうべきで、意想外なデザイン性を追求しながら、機能性もきちんと織り込んでいく。そういうものをつくってきたいと考えているんです」。

―新宿グランベルホテルが目指したのは、そういうことであると。

「といいますか、新宿歌舞伎町という立地から考えて、一般の日本人はなかなか足を運んでもらえないのではということも思いました。しかも、新宿は380室。そこそこのボリュームがあり、渋谷や赤坂のようなやり方だけでは難しいと考えました。

その一方で、グランベルホテルの共通するコンセプトに“fun to stay”があります。ステイする楽しみを感じさせる施設でなければならない。そこで初心に戻って、歌舞伎町の街らしさをテーマにすることにしました。ひとことでいうと、歌舞伎町という世界に知られた歓楽街のカオスの具現化。それにふさわしいのはアジアのカルチャーだろうと考えたのです。だったら、アジア出身のネクストアーティストを集めてホテルをつくろう、ということになったんです」。

―もともと外国客向けのホテルをつくろうと考えていたわけではなさそうですね。

「というよりも、歌舞伎町には日本人も含めて、いろんな国籍の人たちが歩いています。そういう彼らにこそ泊まってもらおう。ホテルは街と共存しています。歌舞伎町らしさを具現化したホテルをつくれば、多くの人に泊まってえるはずだと考えていたのです。

結局、日本人を含め、韓国、香港、台湾、カンボジアなど、芋づる式に24名のアーティストが集まりました。アーティストたちには、それぞれ自分の国のイメージを表現してもらうことにしました。歌舞伎町だから、それでいいんです。

もっとも、アジアといってもさまざまなイメージがあり、混沌としています。特に作りこんだのは、4タイプのエグゼクティブルーム、4つのスイートルームです」。

―具体的には、どのような設計手法になるわけですか。

「それぞれのアーティストに、ある特定のテーマを伝えて、自分のイメージするグラフィックやオブジェなどの作品を提案してもらいます。その作品を客室に取り込み、我々がそのイメージを具現化していくべく設計していきます」。

―どこまでそれが伝えられたと思いますか。

「まだよくわかりません。欧米の人たちとアジアの人たちでは感じ方が少し違うかもしれません。面白かったのは、ロフトの部屋を用意したところ、アジアの子連れファミリー客に人気のようです。彼らもこうした遊び心を気に入ってくれているようです。

いまはSNSで広がる時代です。ですから、いかに人にホテルに来てもらうか。これからはいいデザインというだけではなく、そのホテルではいつも何かが起きている、ということが大事なのだと思います。

新宿の街並みが見渡せるルーフトップバーも、最近ではちょっとしたイベントを始めています。これからはイベントをどうつくるかを考えていかなければと思います」。

UDS株式会社は、そのことばを実践するべく、京都に2つのデザインホテル(ホテルアンテルーム京都、ホテルカンラ京都)を設計し、運営も行っています。先日、その2つのホテルを訪ねたので、今度紹介したいと思います。どちらも遊び心あふれる楽しいホテルでした。特にホテルアンテルーム京都はホテルにおけるイベントの可能性を追求しているようでした。それはまたの機会に。
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噂のデザインホテル「ホテルアンテルーム京都」に泊まってみた
http://inbound.exblog.jp/24682467/
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by sanyo-kansatu | 2015-07-12 15:01 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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