ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 07月 14日

「ホテルは立地産業。五輪前のいまは攻めどころ」(元谷外志雄アパグループ会長)

先日、アパグループの元谷外志雄会長に話を聞くことができました。

アパグループの都心出店攻勢は驚異的。今年も続々開業予定
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今年4月、アパホテルの宿泊客の4人に1人が外国人だったことの意味
http://inbound.exblog.jp/24687702/

お聞きしたかったのは、これほど集中的に東京に出店した理由やホテル経営に関する会長独自の考え方についてです。いまやアパグループの東京都内の客室数は1万室を越え、日本で最大規模のホテル企業となっています。

―都内では高稼働率が続いているようですね。しかも100%超というのはどういう意味でしょうか。

「社員たちが自発的に早くチェックアウトした部屋に客を入れるよう努めたので、一部の客室で1日2回転が起こり、100%超となった」。

―新宿に集中出店されていますね。

「新宿は知名度、ブランド力ともに世界的だ。昨年7月に開業した新宿御苑店は開業以降毎日100%の稼働率が続いている。東新宿ではすでに開業済みは3軒。今年9月に歌舞伎町タワーが開業予定で、さらに歌舞伎町2号店の土地も購入済みだ(2017年開業予定)。

うちの場合、アジア客と欧米客の割合は半々で、アジア系は主に台湾やシンガポール、香港など。新宿以外でも、渋谷道玄坂店や銀座では欧米客が多い。

基本的に、都心では団体客は入れていない。単価の高い個人客のみ。30~40人の団体客は潮見駅前や幕張などの大型ホテルに限っている。こちらは少し単価が安い。幕張は最近は1000室から1500室に増やしたが、さらに500室を増やすことが決定している」。

―いつ頃からこの勢いでしょうか?

「震災後、だんだん良くなっていたが、2013年以降の円安が大きい。1ドル=70円台から120円台になって、海外からみると3分の2にディスカウントされたも同然。海外需要がどっと増えた。

なかでも東京は単価が高く、いつも予約いっぱいだ。最近では大阪も単価が上がり、予約が取れなくなっている。西日本も金沢が新幹線効果で稼働率が上がってきた。東京一点集中から地方中核都市へと勢いは広がっている。

国内レジャー市場も好調で、ビジネス需要も堅調。国内レジャー、ビジネス、海外の3つともいいので、100%近い稼動率が続いている。今年のGWは全グループの1日の売り上げが初めて5億円を超えた。これまでになかった勢いだ。

一般に月・火曜は海外客、水~木はビジネス客、金・土曜は国内レジャー客が集中する。だから、うちの場合、客室単価は日曜がいちばん安く、土曜が高い。土曜は国内・海外が重なるからだ。

「だいこんは朝昼晩と鮮度が変わるので値段が違う」というが、「ホテルも今日の客室は明日売れない」。需要があるときはそれなりの値段だが、少ないときには安く売る。同じ部屋が2万5000円のときもあれば、7000円になるときもある。高収益のためには、各ホテルの支配人が需要予測をしながら、値段を上げたり下げたり調整している。いまではホテルの値付けが収益向上のために重要な鍵となっている」。

―外国客の集客はどうしておられますか。

「うちの場合、客室を埋めるために外国客を必要としているわけではないが、最近はネットで予約が入るものだから、外国客が増えている。これだけ東京に集中的にホテルつくったため、アパの知名度が海外でも上がったのではないかと思う。

「Always Plesant Amenity」の頭文字からとった「APA」というネーミングは外国人にもわかりやすいと思う。何より地下鉄駅徒歩2~3分に立地していることが大きい。ホテルは立地産業だ。いい立地を選び、リーズナブルな価格で提供すればうまくいく」。

―海外客から見てアパホテルの魅力は何でしょうか。

「ひとことで言えば、効率性。シティホテルに比べると、炭酸ガスの排出が3分の1。なぜそれが可能かというと、たとえばお風呂は節水型の卵型浴槽で20%の節水効果がある。サーモスタッドによる定量止水栓は一定量お湯がたまると止まるしくみだ。断熱カーテンで冷暖房の効率を高め、全館LEDで電気代を減らす。これは経費削減につながっている。

「高品質」「高機能」「環境対応型」がうちのテーマだ。部屋は小さいが、ベッドやテレビ(40~50インチ) は大きい。全部手元のスイッチで操作できる」。

―とても日本的だと思うでしょうね。

「かつてはキャデラック、ジャンボジェットの時代だったが、いまはプリウスや787、リーズナブルジェットの時代だ。コンパクトでリーズナブルなことに価値がある。しかも炭酸ガス排出を減らし、経費も削減できる。高収益ホテルの実現というわけだ。

実際、シティホテルは無駄が多い。宴会場に高級飲食施設。でも、レストランは街にある。ホテルは究極の宿泊産業。泊まる人にとっていいホテルとは何か。今度できる旗艦店の歌舞伎町タワーでは最上階に露天風呂をつくる。宴会場より大浴場のほうがいい。私は自分がプラグマチストだから、なるべく無駄を省き、コンパクトな機能性を追求したい。それが「新都市型ホテル」だ。他のホテル経営者とは考え方が違うと思う」。

―今年4月は外国客比率が23%だそうですね。4人に1人は外国客。これは驚きですね。

「例年桜の季節は多いが、単月では過去最大だろう。先日、政府の訪日外国人数の目標が2020年までに2000万人だったものから2500万人に上げられた。でも、円安が変わらなければ私は軽く行くと思う。日本は安全で、食べるものがおいしくて 四季を感じられて、いろんな楽しみが味わえる国。 中国やインド、インドネシアなど世界の人口大国に最も近い先進国でもある。

この先、日本は観光大国化する。外需に依拠した経済から内需に依拠して、国民が生活を楽しめる国になれる。人口減少で未来は暗いという人もいるが、現に私の商売はうまくいっている。日本の未来は明るいと考えている」。

―都心をはじめとした出店攻勢は東京五輪決定以前にスタートしたものですね。

「そうだ。2010年4月1日からの中期経営計画「SUMMIT5-Ⅰ」で、東京の客室数でトップを取ることを目指し、今年それを実現した。別に東京五輪決定とは関係ない。

都心の出店は、リーマンショック後、多くの金融機関がマンション用地の売却を始め、地上げが途中半ばで断念となったとき、その期を逃さず、キャッシュで都心の土地を購入できたことが元になっている。矮小地や変形地はマンションには使いにくいが、ホテルならいけると判断した。

1984年に第1号店を金沢に開業して現在326軒。客室数は約5万2000室。これには会員システムを作ったことが大きいと考えている。現在、会員数は900万人超(2015年5月現在)。いまでも毎月10万人以上増えている」。

―底値の時期にホテル用地を大量購入できたことが出店につながっているのですね。今後の展望をどうお考えでしょうか。

「五輪前のいまは攻めどきだと考えている。今年度は大型案件に挑む。大型物件は完成まで4年かかる。いまやらないとオリンピックに間に合わない。いまやって2019年にオープン。そういう意味では、来年は中型案件(20階建てまで)、再来年は小型案件(15階建てまで)を計画中だ。

では、その翌年はというと、ちょっと休んで様子をうかがうつもり」。

―五輪後の反落期を懸念する声も多いですね。

「もしオーバーホテル現象が起こったとしたら……、その場合はダメになるホテルがあれば買わしてもらえばいい。市況が悪くなれば、買収のチャンスが増えると考えている。あとは海外でFC展開を考える。まずは台湾や香港、シンガポールなどの近隣諸国でパートナーを探す」。

―話を聞いていると、会長の考える方向について時代が動いているという感じですね。

「私の座右の銘は「的確な未来予測ができれば事業は成功する」というものだ。 

5年間で一気にホテルをつくったおかげで、東京で客室数ナンバーワンのホテルになった。高すぎて以前ならホテルが建てられなかった場所をリーマンショック後に一気に買って、ホテルを建てた。短期集中拡大が話題を呼び、海外でも知られるようになった。

振り返れば、バブル前夜、撤退戦がうまくいった。1990年代まで日本には土地神話があった。当時、日本は土地が狭く希少性があるから必ず上がるとみんな信じていた。だが、私はブラックマンデーを見て、すぐに手を引いた。そして、読みどおりバブルははじけた。攻めるときは攻めるが、引くときは引く。すべては未来予測にかかっている。

いまは東京中どこのホテルでも稼働率は好調でしょう。しかし、うちは東京に集中してつくったぶん、勢いがある。今後は地方の中核都市への展開も加速していく。会員が900万人超もいたら、部屋がないでは申し訳ない。五輪後の反落のときは近隣国でFCを始める。私はそれを見込んでいる。決して無理してやっているわけではない」。

終始上機嫌で語る元谷会長の話を聞きながら、反落期や五輪後を見越してどちらかといえば抑制的と伝えられる国内のホテル投資の趨勢とその対照的な姿勢の違いを興味深く思いました。今後もアパグループの快進撃は続くのか…。

これもまた訪日客の増加がもたらすホテルシーンの変化のひとコマであることに違いありません。
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by sanyo-kansatu | 2015-07-14 17:33 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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