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2015年 08月 07日

七宝山(チルボサン)は金剛山とは似て非なる朝鮮の名峰

昨年7月上旬、ぼくは北朝鮮咸鏡北道にある七宝山を訪ねています。
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朝鮮東海岸の港湾都市・清津の南方の海岸沿いに広がる山岳景勝地です。朝鮮の国家観光総局のつくった案内書によると、こう説明されています。

「昔から『咸北金剛』の名で呼ばれる朝鮮6大名山の一つ。金、銀、銅をはじめ七つの宝物が埋まる山という意味でから七宝山と呼ばれる。面積は約250㎢。

今から約100万年前の新生代第3期に白頭火山脈から噴出した岩石が冷え固まった流紋岩、玄武岩などの火成岩が雨風に削られ形成された。

他では例を見ない独特な山岳美と渓谷美、海の景色を同時に楽しめる名山。

地理的位置と地形、寄港風洞が特異なため動植物相が豊富かつ多様である。

地域的には内七宝、外七宝、海七宝に大別される。

開心寺など歴史の古い遺跡がある。

七宝山の周辺には黄津温泉をはじめ、明川、万戸、沙里、宝村などたくさんの温泉が点在する」(『朝鮮観光』2012年 朝鮮観光宣伝社刊 より)

2013年夏に訪ねた朝鮮随一の名山である金剛山にたとえて「咸北金剛」などと呼ばれるようですが、実際の見た目の印象はずいぶん違います。上記説明にあるように、火山岩によって形成されているため、むき出しになった岩肌がどれも赤茶けた色に見えるからです。この独特の色味が七宝山の第一印象です。
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内七宝 五鋒山系

2013年、金剛山観光はどうなっているのか?
http://inbound.exblog.jp/22561895/

雨風に削られ、奇妙な形をした岩山が多く、こういう世界が好きな人には面白いと思います。同行したガイドらが「あれはピアノを女性が弾いているのに似ているからピアノ岩」「あれは男女が××しているのにそっくりだから××岩」など、それぞれ名前が付いているようです。
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ピアノ岩
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夫婦岩
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礼門岩

そういう意味では、七宝山は金剛山とは似て非なる名峰といえると思います。

金剛山が水墨画で描かれるような中国の仙境のイメージに近いのに対し、成り立ちがそもそも違うので、この表現は適当ではないかもしれませんが、七宝山はどこかグランドキャニオン的なのです。少なくとも東洋的な山岳イメージはあまり感じません。ただし、植生は松類が豊富で、秋になるともみじの紅葉で赤茶けた岩肌の周辺が真っ赤に染まるそうですから、夏のイメージとはかなり変わるかもしれません。七宝山は秋がいちばんだそうです。秋になるとマツタケも相当採れるそうで、かつては日本に高く売るため、地元の人たち総出で山に入ったと聞きました。
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金剛山とのもうひとつの違いは、七宝山の場合、ほとんどの場所が車で行けるように登山道が整備されていることです。整備されているといっても、舗装されているわけではないのですが、実際、車のおかげで、1泊2日でほとんどの場所を訪ねることができました。金剛山にはいくつもの登山コースがあって、すべてを踏破しようとすると、4泊も5泊もして歩き続けなければならないのに比べ、なんともお手軽な登山です(もちろん、時間をかけて徒歩で登山することもできるのですが)。
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絶景を眺めるための展望台がいくつか整備されている一方、中国のようにお土産物屋や行楽施設などはまったくないため、とても清々しい景勝地といえます。はっきり言って、朝鮮観光の魅力は開発の手がほとんど及んでいないこと。今日のグローバル資本がすみずみまで行き渡ってしまった海外の観光地ではありえない稀に見る状態にあるといってもいかもしれません。
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いかんせん、アクセスが不便なため、外国客もまだ少ないようです。たまに欧米人ツーリストが平壌から漁郎空港まで飛んできて七宝山を登るようですが、実際のところ、週に何便飛んでいるのか。最近になって、中国吉林省の図們から鉄道でふもとの明川まで来て登山する3泊4日のツアーも始まっているようです。もちろん、中国国籍のみのツアーです。
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展望台に行くと、この種の記念写真の撮影サービスのパネルが置かれているのですが、周辺にカメラマンの姿はいません。朝鮮にはこのような中国の行楽地の物まねのような見せかけも多いですが、面白いのは写真に写っている人たちの妙に明るい風情です。抱き合っているカップルも写っていたりします。こういう感覚、彼らは大好きなんですね。

なお七宝山にある宿泊施設は、この外七宝山荘です。客室数10数室の小さな山荘ですが、館内は清潔で十分快適です。ただし、随時営業しているわけではなさそうで、おそらく我々のようなツーリストが来るときだけ、清津からスタッフや食材などがここに運ばれ、営業となるようです。
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今回載せた写真は、すべて「内七宝」の景勝地のものです。次回は開心寺という高麗時代の寺院や「外七宝」「海七宝」を紹介しようと思います。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-07 15:14 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)


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