ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 08月 12日

羅先の観光アトラクションといえば工場見学です

経済貿易特区である羅先特別市は、海外から投資が呼び込みたいのですが、思うように進まないのが現状のようです。

そのため、観光で訪れる日本人に対しても、ガイドらは投資の話ばかりします。投資を呼び込みたいなら、どれだけ市場の将来性があるのか、投資者にどんなメリットがあるのか、本来そういう話をしなければならないはずなのに、彼らはただただ「投資をするなら、自分に連絡してほしい」と言うだけです。

そんなことでは話にならないと素人でも思うのですが、Googleで「羅先」を検索すると、なんだか景気がよさそうなネタが拾えます。たとえば、以下のようなものです。

北朝鮮の対外窓口、羅先市に集まる海外企業(東洋経済オンライン2014年9月13日)
http://toyokeizai.net/articles/-/47785

中国マネーで活気づく街 北朝鮮の経済特区、羅先(共同通信ニュース2014/05/12)
https://www.youtube.com/watch?v=1JmESl2zIrQ

北朝鮮側の意向を代弁するとこうなるのでしょうね。

こうしたことから、とりたてて観光スポットのない羅先では、ほとんど唯一の観光アトラクションといえば工場見学なんです。今回ぼくは4つの工場を案内されました。連れていかれるままに訪ねた4ヵ所を紹介してしまいましょう。

最初に訪ねたのが、スチェンボン水産加工工場でした。ここでは年間8000トンのイカや貝類の冷凍加工品を生産し、中国の琿春に送るそうです。1985年創業。15年前にはMさんという日本人がウニの加工を指導するために長く滞在していたこともあるそうです。
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COSCO大连中远国际货运有限公司の冷凍トラックに多くの地元労働者たちが冷凍加工品を運びこんでいました。
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COSCO大连中远国际货运有限公司
http://www.cosfredl.com/

その光景が目に入ったとたん、ここでの視察はNGとなってしまいました。確かに、見ると、労働者たちは素手で冷凍イカの固まりを運びこんでいました。こういう光景は外国人には見せたくないのでしょう。

次に訪れたのが、ヘソン貿易会社という縫製工場でした。
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工場内に入ると、若い女性労働者がミシンの前に座り、真剣に仕事に打ち込んでいます。まるで2000年代前半の広東省の裁縫工場のような世界でした。かの地ではこの種の労働は東南アジアに奪われ、多くの若い労働者が解雇されていることでしょうが、朝鮮では今や時代の最先端。真剣なまなざしの若い女性たちが仕事に向かっています。
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ワイシャツやズボン、厚手のジャケットなど、発注に応じて対応するそうです。輸出先の1位は韓国で、2位はアメリカ、3位は日本といいます。日本という場合、日本アパレルメーカーが直接発注しているわけではなく、仲介業者として中国企業が入っているものと思われますが、彼らにすれば、自分たちのつくった製品の最終消費地がどこかという話をしているわけです。
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約300人の女性労働者がいて、平均月収は800元といいますから、羅先では高給取りといえます(羅先では公務員でも月給は300元と言っていましたから)。この縫製工場自体は1956年からあるそうですが、現在のように海外からの発注で仕事を請けるようになったのは、2000年代に入ってからだそうです。
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工場長の洪世峯氏によると、最近日本からの発注が増えているそうです。
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3つ目が羅先製靴工場でした。
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ここでも女性労働者たちの真剣な仕事ぶりが見られました。男性もいましたが、少数派です。
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工場長によると、革靴やスポーツシューズなど、年間5万~10万足を製造しているそうです。70%は国内向け、30%が輸出向けだそうです。
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たいてい発注は中国企業からで、サンプルが送られ、それに合わせて製造するそうです。もしや、ここがニセモノ大国中国の製造拠点のひとつなんじゃないか…なんてことも思いましたが、彼らは注文に合わせてつくっているだけなのでしょう。
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労働者の賃金は500~800元とのこと。労働者数は約100名。工場長は「もっと注文がほしい。何でも言ってほしい」と日本向けを意識したものと思われるメッセージを残してくれました。
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最後に連れてこられたのが、またもや水産加工工場のテフン貿易会社でした。2001年創業で、羅先最大の規模。在日同胞が投資しているようです。
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さすがは在日同胞が投資しただけあって、単に水産加工品だけでなく、マツタケ焼酎など、さまざまな製品をつくっていました。工場も併設されています。
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朝鮮に行くと、やたらとたくさんの種類の焼酎が売っていますが、このマツタケ焼酎は在日同胞の工場でつくられていたんですね。確かにパッケージなど、他の国内産に比べると洗練されています。

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またこの工場では、生簀があって魚を選んで調理してもらえるレストランもあるようです。ロシア人観光客がいました。
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このふたりは、オーナー夫人と娘だそうです。

ただし、この工場は規模に比べて生産量が足りないため。経営上大きな問題を抱えているとガイドが話していました。なんでそんなことをぼくに言うのだろうと思うのですが、朝鮮東海の漁獲量が激減している影響が大きいからだそうです。これは深刻な話ですね。

はてさて、羅先の4つの工場見学を終えて、みなさん何を思うでしょうか。これで投資をしてくれといわれても、困ってしまいますね。とはいえ、朝鮮には若くて優秀な労働者はそこそこいそうです。そのため、中国吉林省の図們や琿春では、北朝鮮労働者を呼び込み、工場労働をさせているようです。朝鮮側も外貨獲得の手段として、労働者を積極的に送り込んでいます。彼らは工場と寮のある敷地内から外には出られないそうです。

2000年代前半に広東省で見られた女工哀史の物語がタイムラグを経て、延辺朝鮮族自治州でいま始まっているようです。
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by sanyo-kansatu | 2015-08-12 21:02 | 朝鮮観光のしおり | Comments(0)


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