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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 09月 05日

中国本土の観光客は日本でレンタカーの運転はできません

外国人観光客は誰でも日本でレンタカーを運転できるわけではありません。なかでもいまや訪日外客の最多数を占める中国本土客は運転できません。

なぜなら、日本で外国客がレンタカーに乗るためには、国際免許証の提示が必要なのですが、この免許証の根拠となっているのが、1949年のジュネーブ条約で、中国はこの条約の未締結国だからです。実は、台湾もそうなのですが、2007年9月から日本でのドライブが可能となっています。
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「日本国内で運転が認められる国際・外国運転免許証の確認ポイント」(全国レンタカー協会)より

(参考)
国際免許証で運転される方へ(JAF)
http://www.jaf.or.jp/inter/kokusai/foreign.htm
道路交通に関する条約(1949年9月19日ジュネーヴ条約)に基づき外国で発行された国際運転免許証(International Driving Permit)をお持ちの方は、日本の法令に則って日本国内で自動車等を運転することができます。

上記以外の条約(1968年ウィーン条約等)に基づく国際免許証による運転は認められていませんのでご注意ください。

国際免許証で自動車等を運転できるのは、日本入国日から最大一年間です(日本を出国し再入国した場合には、再入国日から一年間が有効となります)。ただし、日本在住の方は条件が異なりますので、詳細につきましてはお住まいの地域を管轄する免許センターにお問い合わせください。

日本入国日から一年を経過した場合には、国際免許証で運転することはできません。長期にわたり日本に滞在し、運転をされる場合は、日本の運転免許証への切り替えをお勧めします。

国外運転免許証が有効な国等(ジュネーブ条約加盟国)警視庁
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/menkyo/menkyo/kokugai/kokugai04.htm

実は、中国以外にもこのジュネーブ条約加盟国でない以下の国があります。

スイス、ドイツ、フランス、ベルギー、スロベニア、モナコ公国、台湾

では、これらの国はどうするかというと、外国運転免許証とその日本語翻訳文が必要になります。たいていは同国の日本大使館などで発行してくれます。

これは日本でのレンタカー利用の多い台湾人向けの実例です。
中国本土の観光客は日本でレンタカーの運転はできません_b0235153_12254152.jpg
「日本国内で運転が認められる国際・外国運転免許証の確認ポイント」(全国レンタカー協会)より

実際の手続きについては、楽天トラベルでは以下のように説明しています。

楽天トラベル「外国免許証お持ちのお客様へ」
http://cars.travel.rakuten.co.jp/cars/rcf160a.do?iid=1600&v=0

1.ジュネーブ条約に基づいた国際免許証(他の国際免許証は使用できません)と外国運転免許証。1949年の道路交通に関する条約(ジュネーブ条約)に基づく国際免許証が必要です。確認の方法 国際免許証表紙に以下の文章が記載されたもの。 「Convention on International Road Traffic of September19,1949」
※有効期限は発行日から1年後、または入国日から1年後のいずれか短い日。

【必要書類】   
①ジュネーブ条約に基づいた国際免許証
②ジュネーブ条約加盟国にて取得した免許証原本
③パスポート
(ウィーン条約、EU連合、その他の書式の国際免許証では日本国内は運転できません。)

2.外国運転免許証と公式日本語翻訳文上記ジュネーブ条約に基づく国際免許証を発給していなく、日本と同等の水準にあると認められる運転免許証を有する国又は地域であること。これら政令国が発給した運転免許証と公式日本語翻訳文を所持している場合、日本での運転が認められる。

政令国:台湾、スイス、ドイツ、フランス、ベルギー、スロベニア、モナコ

【必要書類】   
①政令国が発給した運転免許証原本
②公式日本語翻訳文
※上記、必ず原本が必要です。コピーや有効期限切れのものは使用できません。

日本で運転するための条件に満たない場合、乗車をお断り致します。

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「日本国内で運転が認められる国際・外国運転免許証の確認ポイント」(全国レンタカー協会)より

レンタカー会社もネット上で日本でのドライブを勧めています。なかでもトヨタレンタリースのサイトは多言語化の進んでいてわかりやすいです。

トヨタレンタリース神奈川
国際運転免許証で日本国内を運転する場合
http://www.r-kanagawa.co.jp/use/license.html
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トヨタレンタリース繁体字版
https://rent.toyota.co.jp/zh-tw/
※このサイトには、日本での運転の常識やルール、注意点などをわかりやすく伝える動画があります。
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ところで、いまや訪日外客の4人に1人を占める中国本土客のレンタカー利用について、業界の中には台湾と同様に可能とすべきではないか、という声があるのは事実です。しかし、現在の中国国内での運転状況やマナーを見る限り、しばらくは延期すべきだろうというのがぼくの考えです。

とにかく怖いのは、中国は「人より車優先」の社会だからです。日本では交差点で待つのは車で、人を先に通すのが当たり前ですが、中国ではぼんやり歩いていると車が突っ込んでくることは日常です。強いものが弱いものより優先される社会なのです。この感覚がある限り、とてもじゃないけど、中国人観光客が日本でハンドルを握ることはありえないと思ってしまいます。

※訪日外国人のレンタカー利用の最新事情については、以下参照。

外国客の国内ドライブ旅行、本格始動中!~先行する沖縄、北海道の事例と予約サイトの動向から
http://inbound.exblog.jp/24950113/

【追記 その1】
ところが、こんなニュースが届きました。

中国人観光客がレンタカー? 法律では運転不可だが・・・(沖縄タイムス2016年6月1日)
http://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=171005&f=i

沖縄県の2015年度外国人観光客実態調査の概略報告(速報値)によると、県内旅行中に利用した交通機関について、中国人観光客の17・7%が「レンタカー」と答えた。中国の免許証で日本国内を運転することはできない法制度になっており、実態把握が必要とみられる。

調査は、那覇空港や新石垣空港で15年度に計6回、県内旅行中に利用した交通機関をたずねた(複数回答可)。中国客は、13年度に6・3%、14年度に8・2%がレンタカーを使ったと回答。県は「背景について関係者と話し合いたい」としている。

外国人が日本国内で運転する場合、(1)日本の免許証(2)ジュネーブ条約に基づく国際免許証(3)国際免許証を発給していないが日本と同等水準の免許制度を持つ国や地域の免許証-のいずれかを持っている必要がある。中国の免許証は(2)や(3)に含まれないため、国内の事業所でレンタカーを借りることはできない。

県レンタカー協会の白石武博会長は今回の調査結果について、第三者が借りたレンタカーに中国人観光客が有償または無償で同乗しているケースが考えられるとした上で、「中国人観光客の間でも個人旅行のニーズは高まっている。タクシー運転手の語学力や通訳士の数を考慮すると対応がニーズに追いついていない」と指摘している。


記事によると、「第三者が借りたレンタカーに中国人観光客が有償または無償で同乗しているケースが考えられる」そうです。今後の実態の解明を待つことにしましょう。

【追記 その2】
2017年4月、一部の中国人がフィリピンの運転免許証と国際運転免許証を取得し、日本国内でレンタカー利用をしている実態について、レコードチャイナが報じています。

<独占>日本で中国人観光客がレンタカーする“手法”(1/4)、その実態を暴く!(Record china2017年4月8日)
http://www.recordchina.co.jp/b174346-s0-c30.html
(2/4)、彼らはどうやって免許証を入手したのか?
http://www.recordchina.co.jp/b174349-s0-c30.html
(3/4)、中国の業者が「正当性の根拠」を語る(2017年4月9日)
http://www.recordchina.co.jp/b174350-s0-c30.html
(4/4)、なぜ中国人は苦労してまで日本で運転したがるのか
http://www.recordchina.co.jp/b174352-s0-c30.html

法のウラをかくのは中国人にとっては普通のことなので、驚いてもいられませんが、結局のところ、一部のレンタカー会社では、日本で運転可能な国際運転免許証かどうかのチェックはしても、国籍(パスポート)のチェックをすることまでは義務づけられていないため、スルーということなのか。その結果、中国人の国内でのレンタカー利用が起こり得るというわけです。

ただし、わざわざ日本で数日間旅行するために、高いコストを払ってフィリピンの国際運転免許証を申請するというのも、どうなのでしょう。公共交通機関の少ない沖縄ではあり得ても、本州では、在日中国人が運転する安価な白タクを利用するほうが現状では主流といえそうです。

【追記 その3】
2017年5月、ついに中国系の白タク問題がメディアに登場してきました。

成田空港で中国系白タクの摘発が始まる!? (2017年 05月 19日)
http://inbound.exblog.jp/26867015/

海外に展開する中国配車アプリとはどんなサービスなのか?(2017年 05月 19日)
http://inbound.exblog.jp/26867237/

【追記 その4】
ついに起きてしまった。運転できないはずの中国人レンタカードライバー事故 (2017年08月21日)
http://inbound.exblog.jp/27062548/

by sanyo-kansatu | 2015-09-05 21:13 | “参与観察”日誌


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