2015年 11月 06日

なぜ中国人は訪日旅行のいちばんの印象は「干净(きれい、清潔)」だというのか?

先日、成田からスカイライナーで都心に向かうとき、見慣れたはずの車窓の風景がとてもクリアで、ここ数日間見ていた中国の風景とはあまりに違うことにあらためて驚いてしまいました。

これは中国出張から帰ると、毎回必ず思うことですが、特に今回空気が悪いといわれる内陸の河南省から戻ってきたこともあり、これほど日本と中国では景色の見え方が違うのかと強く感じたのです。とにかく日本では山でも家並みでも遠くまでよく見えます。空の澄みきった青みがまったく違う。視界がぐんと広がるようなこの感覚から、日本を訪ねた中国人が「日本の印象は?」と問われてほぼ必ず答える最初のひとことが「干净(きれい、清潔)」というのも、よくわかる気がしました。

この秋、上海、北京(=沿海都市)と河南省(=内陸都市)を訪ねたのですが、いずれも中国人だらけの機内や現地で会った市井の人たち、若い世代も中高年も口をそろえて同じことを言うのです。鄭州駅前のレストランの服務員のおばさんまで「自分は行ったことがないけど、日本に行った友人によると、きれいなんだってね」と言われる始末です。つまりは、中国国内でこの話は広く知られるようになっているということです。

彼らに真顔でそう言われても、正直こちらとしてはなんとも当てが外れたような心持になります。もっとほかにもいいことあるでしょう? そうつっこみたくなるものです。しかし、彼らは素朴な実感として、自分たちの国とは違うこんなにきれいな世界があったのかと思うようです。その驚きは機内からボーディングパスを渡り、空港内のガラス越し広がる青空を見た瞬間から始まるのでしょう。

以前、中国の若い世代の書いた日本旅行書の表紙として一両きりのローカル線の車両と高く広がる青空の写真が選ばれたことを指摘しましたが、これも同じ認識に基づくものでしょう。

中国の新人類は日本の青空に魅せられている
http://inbound.exblog.jp/24302307/

しかし、それはあくまで日本との比較相対的な評価に過ぎないことも事実です。我々からすれば、新宿など都心の繁華街なんて清潔とは思えないのに…。でも、今回訪ねた河南省の省都、鄭州市の写真を見ていただくと、なるほどそういうことかと理解してもらえると思います。

これは中国が全土で進めている地方都市の新都心開発区で、鄭州CBD地区と呼ばれています。
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高層ビルの立ち並ぶ新しい鄭州の顔です。この日は比較的空気の状態がよく、午前の早い時間帯は青空が見えていたのですが、お昼が近づく頃には残念ながら空は霞んでしまいました。
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市内ではあちこちでマンション建設が進められています。これだけ建設現場が多いと、土ぼこりが飛び交うのは仕方がありません。中国ではビルをフェンスで囲うだけで、日本のようにカバーをかけることもなく、剥き出しのまま工事がなされています。
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これは唐の時代に東の都だった洛陽の旧市街の写真ですが、老朽化した家並みの向こうにマンション建設が進められています。いま中国の地方都市では旧市街の再開発や新区への政府機能の移転を伴う大改造が始まっているのです。
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中国の不動産バブルはすでに崩壊したと日本では報道されていますが、地方都市ではこれからもガンガン建てますよという印象です。まったく大丈夫なのかと心配になります。これらはすべてゴーストタウン予備軍じゃないのか。そういう指摘があってもおかしくない気もしますが、中国中どこに行ってもこの状態なのですから、これもひとつの現実です。

そして、これは鄭州駅前の光景です。とにかくバイクと車が多く、人の数も尋常ではありません。
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屋台も人力車も車もバスも、無法状態のように路上に繰り出しています。こうしたエネルギッシュな光景は、10数年前なら日本のメディアも「アジアの喧騒」などと称して、その発展ぶりを期待を込めて眺めていたものです。いまはもう同じように語られることはなさそうです。
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そして、駅前には農村からやって来た労働者たちが群れをなしています。この光景はちょうど10年前の上海や北京の駅前と似ています。なにしろこれからマンションをどんどん建てるには、建設労働者が必要だからです。
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このような環境に暮らす人たちが日本に来れば「干净(きれい、清潔)」だと感じるのは、考えてみれば当たり前のことです。

中国政府は街中至る場所で「都市をきれいにしよう」という標語を掲げて告知しています。その成果はともかく、彼らがいまそれを心から望んでいることは確かです。豊かになって初めてそれが大切なことだと気づくものだからです。
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こうして上海や北京がそうだったのと同じように、その都市に高層マンションが次々と建てられる時期が来ると、訪日旅行者も現れ始める。今年、鄭州から関空と成田への直行便が飛び始めたのはそういうわけです。ついに内陸都市からも訪日旅行者が現れ始めたのです。
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by sanyo-kansatu | 2015-11-06 13:26 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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