ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2015年 12月 16日

訪中日本人が減ったのは、日本人がサイレントクレーマーだから?

今年、訪日中国人は500万人規模に急拡大しました。一方、中国を訪れる日本人は年々減少しています。

*12月16日に公表された日本政府観光局(JNTO)の最新リリースによると、2015 年1~11 月の訪日外国人数(推計値)は1796 万人。なかでも中国本土客は前年比なんと2倍増の464万6700人。
http://www.jnto.go.jp/jpn/news/data_info_listing/pdf/avrsih000005ivl8-att/151216_monthly.pdf

各国別訪中者数(中国国家観光局 大阪駐在事務所)
http://www.cnta-osaka.jp/data/visitors/

日本人出国者数(JTB総合研究所)
http://www.tourism.jp/statistics/outbound/

訪中日本人客が減少した背景については、11月下旬に北京で開催された第11回北京−東京フォーラムの「環境保護・観光特別サブフォーラム」の中でも議論されたそうです。

訪中日本人客の減少、原因の総合的な分析が重要に(中国網2015-10-27 )
http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2015-10/27/content_36904144.htm

以下、記事の一部を抜粋します。

中国国家旅游(旅行・観光)局の邵琪偉元局長は発言の中で、「中日の双方向の交流は、2005年の延べ450万人から、2014年の延べ555万人に増加した。そのうち訪日中国人客は2005年の111万人から2014年の延べ284万人(日本側の統計では延べ241万人)に増加した。しかし訪中日本人客はやや減少し、ピークの延べ397万人から昨年の延べ271万人に減少した」と指摘した。

この指摘からわかるのは、2015年は訪日中国人の数が訪中日本人を初めて超える年になることです。もうとっくにそうなっていたかと思われた方も多いと思いますが、日本から中国へはレジャー客は少なくてもビジネス出張需要は依然大きかったので、昨年まではトータルでみれば訪日中国人より多かったのです。今年訪中日本人数はさらに減りそうです。

それにしても、集計方法に違いがあるせいなのか、訪日中国人数が中国側と日本側で40万人も誤差があるのはびっくりです(中国側の統計によれば、訪日中国人数が訪中日本人を初めて抜いたのは2014年ということになるからです)。

それはともかく、逆転の背景について、日本側と中国側の見解が以下のように示されます。

京都府の山田啓二知事はその原因について、「訪中日本人客の減少は、まずPM2.5やスモーグなどで明らかになった中国の環境問題、メディアに過度に取り上げられた食品安全問題などが、日本人客の懸念を深めたためだ。他にも中国の日本人客の受け入れ態勢に不備がある。例えば多くの日本人は中国の古い歴史に興味を持つが、中国はこの需要に的を絞った特別な旅行プランを策定していない。また日本人は便を待つ間に中国の空港で映画を見たいが、日本語字幕や日本語吹き替え版の映画を一つも見つけることができない。中国はこれらの面の改善から取り組むべきだ」と述べた。

なんだかもやもやしてますね。「中国の日本人客の受入態勢に不備」があるのは、まったくそのとおりだと思いますが、旅行ガイドブック「地球の歩き方」の編集スタッフのひとりでもあるぼくからすれば、中国側にはもっと別の問題があるでしょうと言いたくなります。

ところが、中国側は、相変わらず、こんなすましたことを言っています。

邵氏は、「その原因については、総合的かつ理性的に検討・分析する必要がある。これは両国の所得、人口の規模、高齢化の程度などと関係している」と分析した。

まったくわかっちゃいませんねえ。まあ本当のことを認めるのは、ご本人にとっても都合が悪いからでしょうけれど。

でしたら、はっきり言いましょう。なぜ訪中日本人は減ったのか? 

中国側、日本側の双方に理由があると思いますが、日本人消費者に対する中国観光プロモーションの最前線にいるひとりとして、中国国家旅游局の問題をまず指摘したいと思います。

それは中国側が日本の市場ニーズをふまえたマーケティングやプロモーションをしていないことです。もちろん、中国側にその努力がまったく見られないわけではありませんが、いまだに古い手法でのPRしか採用しておらず、魅力に欠けています。中国に比べはるかに成熟している日本の海外旅行市場に対する理解が著しく足りないのです。その点については、以前本ブログでも書いたことがあります。

アジアで珍しく外国客数の減っている中国の観光PRのお寒い中身
http://inbound.exblog.jp/24475269/

では、日本側はどうか。中国情報サイトのサーチナがこんな記事を配信していました。

日本人の訪中旅行客が「引き潮のごとく」減少=中国メディア(サーチナ2015-10-03)
http://news.searchina.net/id/1590699

同記事では、訪中日本人が減少している事実に触れたうえで、その理由について以下のように結んでいます。

「日本国外では「日本人はサイレントクレーマーだ」と言われることがある。日本人は中国で起きた反日デモのような行動はなかなか起こさないが、日本人消費者は政治面や中国の環境問題などに対し、「何も言わずに中国を敬遠し、離れて行ってしまった」ということなのかも知れない」。


※サイレントクレーマー Silent Claimer
商品やサービスに不満がある場合に直接提供者にはクレームを言わず、自ら顧客であることを止め、更には口コミでその提供者の悪評を流す者の事を、商品やサービスなどに対して直接的苦情などを述べるクレーマーと対比して用いられる。この場合、企業側にはクレームの存在が明らかにならないため、知らぬ間に商品・サービスなどにとってマイナスの影響が発生する。
https://www.dipartners.co.jp/glossary/detail.php?id=360

この記事を書いたのは日本人らしく、なるほどと思いました。一般に異文化理解が苦手で、政治的な見方が縛られがちな中国人記者には気づきにくい論点でしょう。

でも、ここではなぜ日本人が「何も言わずに中国を敬遠し、離れて行ってしまった」かについては、「政治面や中国の環境問題」としかいっていません。

はたしてそうでしょうか? ぼくは違うと思います。

PM2.5も食の安全問題もいわば方便みたいなもので、実際のところは、リーダーが率先して歴史問題を掲げて日本にクレームして来る中国に多くの国民が嫌気がさしているからでしょう。この点については一部の保守が騒ぐくらいで、多くの日本人は中国に表だってクレームしたいとは思っていないと思います。嫌な相手にわざわざ自分からからんでますます不愉快になるのはくだらないと思うからです。関わりたくないのです。そんな国にわざわざ行きたくないのです。

中国国家旅游局の担当者はこんなことは立場上、認められないでしょうね。であれば、せめてマーケティングをしっかりやるべきでしょう。これまで手を抜きすぎでした。

たいていの日本人は、訪中日本人が減った理由について口に出さなくてもわかっています。わかっていても、あえて口に出したがらないのが日本人の心性でしょう。だとしたら、日本人がサイレントクレーマーだから云々という指摘は的外れではないのかもしれませんね。
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by sanyo-kansatu | 2015-12-16 09:01 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(2)
Commented by ハオちゃん at 2017-09-04 12:20 x
現在、北京にて駐在員として働く者です。

私が感じていた違和感のようなものを解消していただけたような気がして、思わずコメントします。
(2年前の記事で恐縮ですが・・・・)

私は中国という国が大好きで、是非もっと多くの日本人に来ていただいて、その魅力をもっと感じて欲しいと思っている人間なので、旅行客(というか、働く人も含めた外国人全般)を冷遇している今の状況が、少しでも早く改善されることを期待しています。

ちなみに、『地球の歩き方』の大ファンです。(読んでるだけで、ワクワクします)
他にも含めたいろいろ書かれているようなので、拝見させていただきます。

乱文失礼いたしました。
Commented by sanyo-kansatu at 2017-09-04 12:56
投稿ありがとうございました。

私は日々、中国旅行をPRしている人間なので、かえっていまの中国のやり方に文句を言いたいところがあるのです。これだけ尽力しているのだから、少々厳しいことを言ってもいいでしょう、というわけです。まあしかし、日本人はもともと中国旅行が好きですし、いまのような関係でなければ、普通に行くと思います。政治リーダーの意向に両国の一般国民が影響を受けるのは大いに不満です。


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