2016年 01月 15日
昨年末、境港を訪ねてみようと思い立った発端は、7月に世界最大級の中国発クルーズ客船が寄港した際、現地の受入態勢になにやら支障があったかのような報道があったからでした。 4500人の中国クルーズ客が山陰の人口3000人の村に押し寄せ、住民を困窮させたというのは本当か? http://inbound.exblog.jp/25247278 ところが、実際に訪ねてみると、ずいぶん話が違っていたようでした。そりゃあ一度に4000人規模の観光客が上陸してくるのは初めてだったでしょうから、いろいろ大変だったことは確かでしょうが。 そこで、クルーズ客船の受入を担当している境港管理組合の担当者に、今後の見通しも含めて話を聞きました。 境港管理組合 http://sakai-port.com/ ―境港へはいつ頃から外航クルーズ船が寄港するようになったのですか。特に中国からの寄航はいつからですか。 「海外からのクルーズ客船の寄港は、もう20年前くらいからのことです。特に2000年代に入ってフライ&クルーズ(寄港地に飛行機で来て、クルーズ客船に乗り、降地でまた飛行機に乗って帰るツアーのこと)が盛んになって、国内外からクルーズ客船が境港に寄港するようになりました。 中国からの寄港は2007年頃、コスタ・クルーズやロイヤルカリビアンといった欧米のクルーズ会社が中国市場に乗り込んできて以降、九州を中心に大量寄港が始まりますが、境港に最初に来たのは、2012年9月のコスタ・ビクトリア号だったと思います。 実は、それは当初予定されていたものではなく、台風で九州の寄港を避けなければならない事態になり、確か3日前くらいに境港の岸壁利用を打診されたものでした。ですから、受入態勢がほとんどできていなかったため、大騒ぎになりました。なにしろ初めての中国客の大量受入ですから、ガイドやバスの手配も含め、急場仕事になったからです。約1200名の中国客が上陸されました。バスも40台近くを手配しましたが、すべての上陸客に確保することができず、一部の乗客は境港のまちを散策してもらったりしました」。 ―ここ数年のクルーズ客船の寄港数を教えてください。 「この4年間の寄港数は以下のとおりです。 2012年 16回(うち外航クルーズは10回) 13年 17回(うち外航クルーズは12回) 14年 11回(うち外航クルーズは9回) 15年 23回(うち外航クルーズは17回)」 ―2016年はすでに昨年の倍近い寄港予約が入っていると地元の港湾関係者に聞きましたが、見通しはいかがでしょう。 「確かに、今年は多くの予約が入っています。たとえば、コスタ・ビクトリア号による日本・韓国周遊クルーズ(福岡・境港・釜山・金沢・舞鶴)を10回予定しています。このクルーズでは乗客の半分くらいは日本のお客さんにしたいのだそうです。 中国でもクルーズ会社が新しい船をこれからも続々投入しているという話を聞きます。九州がいっぱいになると、当然境港に来る船が増えると思われます。ただし、境港で2万トン以上の船が使えるのは、昭和南埠頭しかありません。同埠頭は現状では、東南アジアからの木材などの積み下ろしに使われているため、いつでも予約をお受けできるわけではありません」 境港クルーズ寄港予定表 2016年1月6日現在 http://sakai-port.com/publics/index/58/&anchor_link=page58_296#page58_296 ―そのため、新しい国際旅客ターミナルの建設が決まったと聞きましたが、正式にはいつ開港でしょうか。 「2020年春に開港予定です。夢みなとタワーのある竹内埠頭に建設されることになっています」。 境港埠頭から・・・ちょっとそこまで。自由散策マップ&インフォメーション(境港マップ) http://sakai-port.com/publics/index/105/ ―境港に寄航した外航クルーズ乗客の上陸観光について教えてください。 「中海圏を「境港エリア」「米子エリア」「大山エリア」「松江エリア」「安来エリア」「出雲エリア」などに分けて、いくつかのコースをつくっています。中国客の場合、上陸時間の関係でそれほど遠出ができないこともあり、松江城を見学し、お堀を小舟で回る「松江城下をめぐりコース」などが人気です」 ―あとはイオンで買い物ですか? 「境港の近くには、鳥取県西伯郡日吉津村と島根県松江市にイオンモールがあります」 ―食事はどうされているのですか。 「中国発のクルーズ客は朝昼晩と船内の食事はフリーのため、昼食は船内ですませることも多いようです」 ―それは、昨年7月2日のクァンタム・オブ・ザ・シーズが寄港したときの話ですね。 「ただあのときは、入港が遅れて昼前だった関係で、上陸は午後からだったからです。バス120台が昭和南埠頭に配車されました」 ―みんなバスに乗って出かけてしまうと、境港に寄港しても地元にお金が落ちないのではないですか。 「クルーズ客船には、運航はもちろん、接客を担当する乗務員が大勢います。クァンタムの場合、乗客は4000人以上ですが、乗務員は1500人います。そのうち交替で多くの乗務員が地元を散策してくれます。夢みなとタワーの隣に温泉があるのですが、コスタ・ビクトリアの船長はここが大のお気に入りと聞きます。水木しげるロードの飲食店の利用や買い物も楽しんでもらえると思います。また一部の乗船客を境港さかなセンターに案内したところ、夏ですから松葉ガニではありませんが、紅カニをずいぶん買っていかれたようです。 境港には、韓国からのクルーズ客のお客さんも多いです。今年最初(1月8日)の寄港は、韓国の東海から来たスカイシー・ゴールデン・エラ(天海新世紀)号で、韓国のお客さん約500名は皆生温泉で楽しまれたそうです」 ※スカイシー・ゴールデン・エラ号は、米国ロイヤルカリビアン社と中国のネット旅行会社C-trip社の合同出資によるクルーズ会社スカイシー・クルーズの初となる大型客船で、2015年5月より運航開始しています。1月8日の上陸客は中国人と韓国人がいたようです。 ―クルーズ受入に関して地元の皆さんの声はどうでしょうか。 「昨年8月、境港でクルーズシンポジウムを開催しました。それ以降、メディアの「爆買い」報道の影響でしょうか、小売店の方からの問い合わせが増えています。一般市民も海外から大型客船が寄港するということで、地元に対する誇りのようなものが生まれていると思います」。 いずれにしても、境港のクルーズ客船受入はまだ始まったばかり。すぐに博多港のようなラッシュ状態になるとは思えませんが、その行方を見守りたいと思います。ちなみに、境港管理組合によると、今年4月23日に乗客数3000人規模のマリナー・オブ・ザ・シーズ、5月23日に4000人規模のクァンタム・オブ・ザ・シーズが寄港する予定です。
by sanyo-kansatu
| 2016-01-15 10:15
| “参与観察”日誌
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