2016年 01月 25日

静岡空港行きの中国路線はなぜ1年でこんなに増えたのか?

最近、一部の地方空港でLCCの就航や東アジアの訪日観光客の増加などによる航空路線の拡充で利用客数が増えています。

なにしろ2015年の訪日外国人旅行者数のトップ5中、5位の米国を除くと、すべて近隣諸国だからです。訪日客総数1974万人の約7割を中国、韓国、台湾、香港で占めているのです。

2015年国・地域別訪日外国人旅行者数(日本政府観光局(JNTO)調べ) 

1位 中国 499万3800人
2位 韓国 400万2100人
3位 台湾 367万7100人
4位 香港 152万4300人 
5位 米国 103万3200人

なかでも静岡空港は大注目です。

富士山静岡空港
http://www.mtfuji-shizuokaairport.jp/

メディアも昨年秋頃から以下のように報じています。

訪日客消費最高 特需、地方にも恩恵 静岡空港、中国便が急増(毎日新聞2015年10月22日)
http://mainichi.jp/articles/20151022/ddm/002/020/051000c

一部抜粋します。

中国人観光客を中心とした外国人特需は、百貨店や家電量販店が集中する都市部だけでなく、地方都市にも恩恵をもたらしつつある。ただ、一時的な特需で終わらせるのか、名実共に「観光立国」になれるのかは、これからの取り組みにかかっている。

静岡空港は2009年6月、全国で98番目の空港として誕生した。年間138万人の利用を見込んで開港したものの需要予測の甘さから、09年度は約52万人にとどまり、静岡県の空港経営は赤字が続く。

ただ、昨年まで上海、台北、ソウルまでの直行便が週13便だった国際線に、今年に入って中国13都市への直行便が新たに就航。16路線週53便に一気に拡大した。


なんとこの1年で静岡空港の国際線の路線数が4倍になったというのです。

県空港利用促進課の田中尚参事は「事前交渉なしで就航が実現した定期便がほとんどだった」と、航空各社が積極的に就航を求めてきたことを振り返る。富士山に近いことや、「ゴールデンルート」と呼ばれる東京と大阪を結ぶ線上にあることなどが評価されたようだ。


この記事で注目すべきは「事前交渉なしで就航が実現」とあることです。これまで日本の地方空港はどれだけ海外のエアラインに対して誘致のために苦労してきたかを思えば(苦労しても実現に至るケースは少なかった)、2015年になって突如として中国系エアラインが静岡に飛んできたことは、地元にとっても驚きだったようです。

その理由は、「富士山に近いことや、「ゴールデンルート」と呼ばれる東京と大阪を結ぶ線上にある」ことだといいます。成田や関空がいっぱいになり、ゴールデンルートの第3のゲートウェイとして静岡空港に白羽の矢が立ったといえるでしょう。

毎日新聞の報道から1ヵ月後、朝日もこう報じています。

静岡空港に中国特需 定期路線1年で1→14に 搭乗数5割増(朝日新聞2015年11月23日)
http://www.asahi.com/articles/photo/AS20151123000175.html

こちらも一部抜粋します。

かつて利用客が少なく低迷していた、静岡空港が中国人観光客でにぎわっている。東京や関西の離着陸枠が限界に近づくなか、空いていた静岡空港が中国の航空会社の目にとまった。今年に入り、地方空港では屈指の路線数を誇るまでになったという。

静岡空港は、首都圏に近いため、そもそも空港は不要だ、などといった反対運動が続くなか、2009年6月に開港した。

最初の2年間は搭乗者数が年間50万~55万人程度で推移したが、11~13年度は40万人台と目標の70万人を大幅に下回り、毎年度、約4億~5億円の赤字が続いた。

ところが、昨年まで1路線だった中国との定期便が今年に入り、最大14路線に急増。今年の8月までの法務省の出入国管理統計では、中国人の出入国数が国内空港6位に。地方管理空港では全国一だ。

中国の航空会社が静岡を選ぶのは、離着陸の枠が空いていたことと、その立地だ。中国東方航空静岡支店の担当者は「静岡は大阪や名古屋、東京を結ぶ『ゴールデンルート』の中間地点で、西にも東にも行きやすい。中国人の観光需要を満たすには最適」と話す。中国人に人気の富士山が間近に見えるのも大きい。


この記事では、当初不要論すらあった静岡空港が開港より6年たった15年、「8月までの法務省の出入国管理統計では、中国人の出入国数が国内空港6位に。地方管理空港では全国一」になったと指摘しています。立地がゴールデンルートの東京と大阪の中間にあったことが選ばれた理由だといいます。

さて、当時からこの記事が気になっていたので、ぼくは正月明けに静岡を訪ねています。県庁観光部空港利用促進課の稲垣孝博課長と観光振興課の山梨利之国際観光班長に話をうかがいました。
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―静岡空港の開港以来の国際線の動向について教えていただけますか。

「2009年6月開港当時、国際線は上海線の週4便、ソウル線の週3便、その後、台北線が週3便で始まりますが、上海線は尖閣沖漁船衝突事故や東日本大震災の影響で週2便になりました。ソウル線も同様でした。国際線は低迷していたのですが、2014年から徐々に上昇し、15年には初めて国内客を国際客が上回りました。その理由は、ご存知のとおり、中国からの路線が一気に増えたためです」。
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―どうして中国からの路線が急に増えたのですか。

「皮切りは15年1月に定期便になった天津航空の天津線でした。同航空は14年春からすでに週5便のチャーター便を飛ばして来ていたのですが、搭乗率も8~9割と好調で、14年12月に北京首都航空の杭州線のチャーター便も始まり、その後は中国東方航空や中国南方航空などの国営キャリアも一気に乗り入れてきたのです。天津航空や北京首都航空は、中国の大手エアライン海南航空のグループに属しています。

2015年の中国系エアラインの新規就航状況 ( )内は就航日。上海線を除く

中国東方航空 寧波(2015.3.31)※チャーター便は15.217~
          温州(2015.7.1)
          南京(2015.7.4)
          合肥(2015.9.23)
天津航空    天津(2015.1.28)※チャーター便は14.5.28~
          西安(2015.5.16)
中国南方航空 武漢(2015.5.15)
          南寧(2015.5.15)
          鄭州(2015.6.28)
          長沙(2015.7.2)
北京首都航空 杭州(2015.7.2)※チャーター便は14.12.25~
          塩城(海口)(2015.9.3)※チャーター便は15.5.27~
          石家荘(2015.9.5)※チャーター便は15.5.27~

ただし、冬季に入って運休する便も出ています」。

2015年1月現在の静岡空港国際線スケジュール
http://www.mtfuji-shizuokaairport.jp/airport/international/inter-timetable/

※この点については、前述の朝日新聞も以下のように報じています。
ただし、中国便は突然、運航を休止してしまうことが少なくない。中国南方航空の鄭州線では8月17日から運休が続き、天津航空の天津線でも8~9月で計27便が運休した。10月25日からの冬ダイヤでは鄭州線や長沙線など14路線中5路線が運休し、天津線では週7往復が3往復に減った。

―中国系エアラインが静岡空港を選んだ理由について、メディアでは富士山に近いことやゴールデンルートの中間にあることなどを指摘しています。

「もちろんそうですが、当初から静岡空港は首都圏に近いことを訴えてきました。そして、富士山、温泉、食の3つを売りにしてきた。着陸料も初年度は免除するなどの補助もしています」。

―中国路線の多くが地方都市ですが、これについてはどう分析していますか。

「中国内陸部の地方都市でも中間層の拡大があると思います」

―海外旅客の特徴について教えていただけますか。

「台湾客の場合は、東京・静岡2泊3日や3泊4日といったツアーが多いようです。韓国客の場合は個人客が多い。一方、中国客は上海線を除くと、団体客が大半です。静岡インで関西や東京アウトのゴールデンルート5泊6日が標準的です」

―静岡空港を利用した外国客の増加は地元にどんな影響を与えていますか。

「観光庁の宿泊旅行統計調査をみても、静岡県内外国人宿泊者数は14年1~9月と15年1~9月を比べると200.7%の伸びで、中国人に限ると254.8%です。ただし、団体客が多い関係で県内には1泊しかしてもらえないため、今後は連泊してもらったり、個人客を増やしていくための取り組みが必要だと考えています」
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―課題は何かあるでしょうか。

「富士山は誰でも知っていても、それが静岡県にあるという認知はまだ低いこと。そこをなんとかしたい。また現在の空港では同時に国際線2機の乗入ができないことです。今後空港を増築する計画も進んでいます。もうひとつは、国内客の利用の低迷です。上海や台湾、ソウルなどへのツアーも企画しているのですが、伸びていません。外国客頼みになってしまっていることです」
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さらに気がかりなのは、中国需要の今後の行方でしょう。わずか1年でこれほど一気に便が増えたということは、逆に一気に減ることも考えられなくはないからです。全国の他の地方空港とはまったく事情が違い、「事前交渉なしで就航が実現」(上記毎日記事より)したことの怖さもあるということです。

それでも、「開港したばかりの頃は国際線なんてまったく考えていなかった。それがいまでは国内客を逆転し、いかに外国客の受入を推進するかということに取り組みが移っているのだから、時代は大きく変わった」と山梨利之国際観光班長は言います。それは正直な思いでしょう。

おふたりの話を聞いた後、ぼくは静岡駅からバスで静岡空港に行きました。
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空港ロビーの玄関に就航航空会社と都市が表示されていました。地方空港で実際、こんなに多くの海外都市へ運航しているのは珍しいことです。「地方管理空港では全国一」というのもうなづけます。
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その日は中国東方空港の上海線しかなく、中国の団体客の姿を見ることはありませんでしたが、上海経由便で乗り継いできたと思われる東南アジア系のグループの姿を見かけました。
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空港の2階ロビーのお土産店には、中国人向けの炊飯器やサプリメントなどの定番商品が置かれていました。
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by sanyo-kansatu | 2016-01-25 15:22 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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