ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2016年 02月 09日

楽天トラベル vs. Expedia これからが面白いと思いたい(そう思っていたけれど…)

2月8日、お台場のホテル グランパシフィック LE DAIBAで「楽天トラベル新春カンファレンス2016」(首都圏)が開催されました。
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楽天トラベル、宿泊キャンセル料を代行収受へ、3月からカード払いを事前決済に1本化(トラベルボイス2016年2月8日)
http://www.travelvoice.jp/20160208-60705

今年楽天は創業20周年を迎えるそうです。楽天トラベルも2001年から。当時はいまほどインバウンド市場は大きくありませんでしたが、近年エクスペディアなどの海外のホテル予約サイトが続々参入し、訪日客を奪い合う動きが加速するなか、楽天トラベルは今後どうしていこうとしているのでしょうか。その点については、もうひとつ明快な説明はなかったように思いますが、多言語化の取り組みはかなり進んでいるようです。上記のトラベルボイスの記事によると「中国では訪日前に楽天で購入した商品を訪日中に受け取れるサービスをホテルモントレの3施設と試験的に行なっている」そうです。
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興味深いのは、毎年恒例の前年1年間に顕著な実績を収めた宿泊施設に贈る「楽天トラベルアワード2015」(首都圏地区)の発表です。その中に、外国客の予約件数で実績を残した宿泊施設に与えられる「インバウンド賞」があります。今年の首都圏の「インバウンド賞」は以下のとおりです。

ヴィラフォンテーヌ東京汐留 初受賞
三井ガーデンホテル上野 初受賞
レジデンシャルホテル ビーコンテ浅草 初受賞
ドーミーインPREMIUM渋谷神宮前 初受賞

このうち「レジデンシャルホテル ビーコンテ浅草」は知りませんでした。「浅草寺・東京スカイツリー至近のレジデンシャルホテル『ビーコンテ浅草』は、ワンランク上質なキッチン付きホテル」だそうです。

レジデンシャルホテル ビーコンテ浅草
http://www.bconte.com/asakusa/
楽天トラベルでこのホテルの動画が見られますが、なるほどデザイン的にも魅力的なホテルですね。
http://travel.rakuten.co.jp/HOTEL/130043/130043.html

それにしても、楽天トラベルを通じた訪日客による予約実績の高いこの4軒。エクスペディアのランキングとはずいぶん違います。なにしろエクスペディアの利用者の3割は新宿のホテルなのですから。

エクスペディアで都内のホテルを予約した外国人の3人に1人は新宿を選ぶ
http://inbound.exblog.jp/25331847/

インバウンド予約の総件数や国籍比率がわからない以上、単純に比較してもあまり意味はないのですが、楽天トラベルを利用する訪日外客は、台湾などの日本に精通したリピーターが多いと思われます。エクスペディアが初めて訪日する外国人の利用も多いこととは対照的かもしれません。

そもそも全国の予約可能なホテル物件の数では、日本のOTAの王者・楽天トラベルにはエクスペディアは足元にも及ばないはずです。ただし、彼らも訪日客の増加と地方への分散化の急速な流れの中で、これまでの東京、大阪に続き、昨年9月に九州支社、10月に名古屋支社、そして今年2月に沖縄支社を開設しています。

外資の参入によって国内客ではなく、急増する新規市場としての訪日客を奪い合うという構図は、これまで日本ではなかったことだけに目が離せません。その点、楽天は「英語公用語化」で有名ですが、意外にドメスティックな体質があるように思います。

楽天は以前、中国最大OTAのシートリップに出資していました。

楽天、中国旅行サイト「Ctrip.com」に出資、具体的な連携協議へ(トラベルビジョン2004年6月14日)
http://www.travelvision.jp/news/detail.php?id=17406

でも、数年後にあっさり同社株を手放しています。

楽天、保有するCtrip株約664万株を売却へ(ロイター2007年8月7日)
http://jp.reuters.com/article/idJPJAPAN-27246320070807

いまではエクスペディア、ブッキングドットコムに並ぶ世界3大OTAと称されるまでに成長したシートリップとの提携がうまくいかなかった背景については、中国メディアも当時いろいろ報じていましたが、要は「お互いのカルチャーが合わなかった」せいでした。

訪日客5千万人時代へ 世界三大OTAの戦略(観光経済新聞 2016年1月1日).
http://www.kankokeizai.com/koudoku/160101/18.pdf

そして、シートリップは2014年5月に日本法人を開設し、拡大する訪日中国市場を貪欲に取り込んでいます。

C-TRIPが日本へ本格進出、中国の地方都市へのビジネス客狙う(NBOnline 2012年3月9日)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20120309/229645/

観光業界人インタビュー シートリップ・ジャパン社長の梁穎希氏 第2818号(2015年10月24日)
http://www.kankoukeizai-shinbun.co.jp/tokusyukiji/interview/15_10_24.html

はたして楽天はこの状況をどう乗り越えていくのでしょうか。ドメスティックなやり方が一概に悪いとはいえないとぼくは思います。それぞれ良さ悪さがあるはず。日本の宿泊施設のサービスレベルの向上につながる「朝ごはんフェスティバル」みたいな取り組みは外資にはできないでしょうから。

朝ごはんフェスティバル
http://travel.rakuten.co.jp/special/asafesta/

とはいえ、今後訪日外国人がさらに増えていくのだとしたら、ひとまず彼らにもっと伝わりやすいサイトにしていく必要があるのでしょう。「カルチャー」の違いを乗り越えて、もっと歩み寄らないといけないのだと思います。

今後、訪日旅行市場が成熟していくことも確かでしょうから、そうなると楽天の優位性も出てくるはず。これからが面白いと思いたいです。ちょっと優等生的すぎるコメントでしょうか…。

【追記】
後日、こんな記事が出ました。楽天は本業においても外資に追われているのですね。これは大変だ。

楽天ネット通販、成長鈍化 迫るヤフー・アマゾン(朝日新聞2016年2月13日)
http://www.asahi.com/articles/ASJ2D3WJ6J2DULFA00M.html

さらに、こんな記事も出ました。

楽天の海外戦略、地域拡大を転換 東南アジアからネット通販撤退(朝日新聞2016年2月26日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12228322.html

楽天は主力のネット通販で東南アジアから撤退するなど海外戦略の見直しに乗り出した。「脱・日本企業」宣言から5年以上たつが、国内依存の収益構造は変わっておらず、自ら海外事業を広げる道筋はまだ描けていない。

楽天は今月末、インドネシアなど3カ国でネット通販の取引を停止し、サイトも近く閉鎖する。タイの通ログイン前の続き販サイト運営会社も売却する方針で、東南アジアの進出先すべてのネット通販から撤退することになる。

2008年の台湾進出を皮切りに、楽天は地元の有力サイトを買収する形で海外展開を進めた。27カ国・地域に進出して流通総額の海外比率を7割にする目標を掲げ、10年には三木谷浩史会長兼社長が「日本企業をやめ、世界企業になる」と宣言。英語の社内公用語化にも乗り出した。

だが、進出先は12カ国・地域にとどまり、台湾以外は苦戦を強いられた。とくに東南アジアはドイツ系企業などに圧倒され、日本で成功した「楽天市場」モデルは歯が立たなかった。

そこで地域拡大路線を転換し、市場が大きい米欧と好調な台湾に経営資源を集中させる。三木谷氏は「戦略に合わないビジネスは修正する」と12日の会見で語り、「選択と集中」を進める考えを示した。


 一筋の光明は、14年秋に約1千億円で買収した米イーベイツの存在だ。提携サイトで買い物をするとキャッシュバックなどがもらえるサービスで、米国を中心に1千万人超の利用者を抱える。知名度のない楽天にも、客を呼び込むチャンスが見込めるわけだ。ただ、12日に発表した20年の業績目標は依然、利益の9割以上を国内のネット通販と金融部門に頼る内容だ。UBS証券の武田純人シニアアナリストは「薄くても幅広い取引に関わることで、いずれ金融など自前のサービスを海外でも売り込む狙いでは」とみる。

これはまずいのではないでしょうか…。いまエクスペディアでは、東南アジア方面からの訪日予約手配が急増しています。まさに市場が拡大しているこの時期に、その可能性を手放すとは…。

昨年ぼくは楽天トラベルを取材しています。

多言語化に取り組む楽天トラベル。宿泊プランは外国客に支持されるか?
http://inbound.exblog.jp/24671580/

このとき、同社の担当者たちは「グループのシナジーを活かす」という表現を多用していました。もちろん、楽天は旅行事業だけやっているわけではないのですけれど、今回の決定は経営上のゆきづまりが背景にあると思われますが、やはり海の向こうの事情が見えていない経営判断ではないかと思われます。残念というほかありません。
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by sanyo-kansatu | 2016-02-09 17:44 | “参与観察”日誌 | Comments(0)


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