2016年 03月 05日

中国人不法ガイドの摘発は全国に波及するのか。訪日旅行市場に与える影響は?

中国発クルーズ客船が多数寄港する福岡で、中国客の上陸観光のガイドとしてバスに同乗し、免税店を案内する傍ら、売上に応じたコミッションを得ていた中国人不法ガイドがついに摘発されました。

この一件は、ガイドらが書類送検された3月3日夕方にはテレビのニュースなどでも報じられていました。
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無資格「観光ガイド」2人を摘発 免税店から報酬5,000万円(FNN2016/3/03)
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00317893.html

爆買い中国人のガイド役の男女が摘発された。

入管法違反の疑いで摘発されたのは、中国人の無職の女(31)と留学生の男(25)。2人は、就労ビザがないのに、2014年から2015年にかけて、観光ガイドとして、中国人観光客を福岡市の免税店に案内し、見返りに報酬を受け取った疑いが持たれている。

2人は、ボランティアと称していたが、口座には報酬として、少なくともそれぞれ、およそ5,000万円が入金されていたという。2人のうち、女は2月、裁判所から罰金の略式命令を受け、国外退去処分になっている。


翌4日、大手各紙がさらに詳細に報じています。

不法就労助長:「爆買い」無資格ガイド 中国人摘発 福岡県警(毎日新聞2016年3月4日)
http://mainichi.jp/articles/20160304/ddh/041/040/004000c

大型クルーズ船で入国した中国人観光客を案内するツアーガイドに無資格の中国人を雇ったとして、福岡県警は3日、旅行代理店や免税店6店(いずれも福岡市)の支店長ら男女6人を出入国管理法違反(不法就労助長)容疑などで福岡地検に書類送検した。ガイドの中国人男女2人も福岡地検に書類送検するなどした。「爆買い」のガイドが摘発されたのは初めて。

6人の送検容疑は2014年9月〜15年9月に男(25)=福岡市=を、15年5〜11月に女(31)=神戸市=をガイドに雇用し、客を免税店に引率させたなどとしている。2人に就労資格はなく、県警は女を今年1月に同法違反(資格外活動)容疑で逮捕。女は2月に罰金50万円の略式命令を受け、国外退去処分になった。県警は男も2月に同容疑で書類送検した。

県警によると、旅行代理店が2人にガイドを委託し、報酬として女に約3000万円、男に約4500万円が支払われた。

関与した旅行代理店3店はいずれも中国系、免税店3店はそれぞれ中国、韓国、台湾資本という。


毎日新聞は、摘発の容疑が「出入国管理法違反(不法就労助長)」であること。関与した旅行会社や免税店が、昨年の訪日外国人旅行者数トップ3の中国、韓国、台湾資本であると指摘しています。

「爆買い」ツアー、無資格でガイド 入管法違反容疑で男女2人摘発(朝日新聞2016年3月4日)
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12240131.html

就労資格がないのに中国人観光客のガイドをして不正に報酬を得ていたとして、福岡県警は出入国管理法違反(資格外活動)の疑いで中国人の女を逮捕、男を書類送検し3日発表した。2人は免税店で観光客の買い物を支援する報酬として、少なくとも約7600万円を免税店側から受け取っていたという。県警によると、海外からのツアー客のガイド行為に同法を適用したのは全国初。

県警は3日、2人にガイドを委託した福岡市と東京都の旅行会社3社の役員計3人を同法違反(不法就労助長)容疑で、報酬を渡した同市と東京都の免税店運営会社3社の役員計3人を不法就労助長の幇助(ほうじょ)容疑でそれぞれ書類送検した。

外事課の説明では、自称無職の女(31)は昨年5~11月、就労ビザがないのに、中国人観光客らを福岡市内の免税店に案内するなどして、約3千万円を得ていたとして今年1月に逮捕された。2月に罰金50万円の略式命令を受けて国外退去になった。留学生の男(25)は2014年9月~15年9月、同様に計約4600万円の報酬を得たとして、今年2月に書類送検された。

免税店運営会社の役員2人は「就労資格は旅行会社が確認していると思っていた」などと容疑を一部否認。ガイド2人と旅行会社役員3人、免税店運営会社の役員1人は容疑を認めているという。

同課によると、旅行会社は2人に報酬は支払わず、「ボランティア」名目で委託。実際には免税店側から2人の口座へ入金があり、県警は報酬にあたると判断した。


朝日新聞は今回の摘発を「海外からのツアー客のガイド行為に同法を適用したのは全国初」。さらに「外事課」が動いていたことを報じています。

「爆買い」無資格案内、容疑の中国人ら摘発 福岡県警(日本経済新聞2016/3/4)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO98016980U6A300C1CC1000/

就労資格がないのに、中国などから買い物に訪れる「爆買い」目的の観光客らを免税店に案内し報酬を得ていたとして、福岡県警は3日までに、入管難民法違反(資格外活動)容疑で中国人の女(31)を逮捕したほか、中国人留学生の男(25)を書類送検した。

県警によると、同容疑で中国人ツアーガイドを摘発したのは全国初。

県警は同日、この男女をガイド役として雇った旅行会社3社と免税店の運営会社3社の幹部ら計6人を同法違反(不法就労助長)の疑いで書類送検した。県警によると、免税店の運営会社の2人は容疑を否認している。

県警によると、ガイド役の男女は2014年9月~15年11月、就労資格のないビザで日本に滞在し、買い物をする中国人観光客らをボランティア名目で案内。その見返りとして案内先の免税店から計約7500万円の報酬を受け取っていたという。

女は今年1月に逮捕され、簡裁から罰金50万円の略式命令を受け、国外退去処分となった。

外国人向けに観光案内をする場合は「通訳案内士」の資格が必要だが、この男女は取得していなかった。


日本経済新聞は「無資格」「就労資格がない」「入国管理法違反」などと各紙が説明する中国人ガイドらの摘発の理由として「通訳案内士」資格を持っていなかったことだと説明しています。

さて、本ブログでは昨年来、福岡に寄港する中国発の大型クルーズ客船の動向をウォッチングしてきました。
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いまや東シナ海は中国クルーズ旅行の新ゴールデンルートです
http://inbound.exblog.jp/24720904/

その経緯からすると、今回の摘発はいつ起きてもおかしくないと思っていました。この時期になったのは、摘発する側のなんらかの事情で決まったと思われます。

実をいうと、「観光立国」の推進役である観光庁を外局にもつ国交省は、2010年無資格ガイドを手配したとしてJTB系旅行会社を処分しています。このため、その後日系旅行会社は中国発クルーズの上陸観光手配からは一部を除きほぼ手を引いたため、現状はアジア系事業者と中国系ガイドの仕切る世界になっていたのです。

JTB系旅行会社を厳重注意処分に=通訳案内士法違反で初、中国人留学生バイト募集に問題―九州運輸局(レコードチャイナ2010年3月30日)
http://www.recordchina.co.jp/a40879.html

今回の摘発の理由となった「通訳案内士」資格をめぐる問題についても、これまで本ブログでは何度も指摘してきました。

NHK報道をめぐり思う。通訳案内士って何だろう?
http://inbound.exblog.jp/24442716/

メディアは「通訳案内士」問題をどう報じてきたか
http://inbound.exblog.jp/24446629/

無資格ガイド問題とは何か?
http://inbound.exblog.jp/24472149/

こうした現状もそうですが、一般の日本人からみると、中国人不法ガイドが数千万円もの収入を得ていたことのほうが驚きかもしれません。中国人観光客による「爆買い」で最も利益を得たのは彼らだったかもしれないからです。

ある事情通は、彼らが法外な利益を得たカラクリについてこう説明してくれました。

「彼ら無資格ガイドが、免税店やアジア系旅行会社から無償または1日5000円程度でクルーズ客の上陸観光のバス1台分40名のガイド業務を引き受けるとする。免税店に連れてゆき、1人平均5万円のお買い上げで、売上総額は200万円。そのうち10%を免税店からコミッションとして受け取ると、20万円/日の実入りとなる。いまや福岡には毎日のようにクルーズ船は来るから、年間で約150日ガイドをやって、こつこつ貯めれば軽く3000万円を超える。免税店や商品によっては、コミッションが売上の20~30%の場合もあるので、もっと利益は増える。これを中国へ持ち帰ると、都市郊外のマンションが買える金額だ。まさに商才民族というべきだろう。

考えてみれば、これは中国人が中国人を食い物にする構造だ。日本人がそれをやれば、中国から袋叩きに遭うだろう。しかし、中国人同士がやっていることなので、関係者らは見て見ぬふりをしてきたというのが、これまでの経緯だったと思う」

こうしたことが起こりえた背景には、いうまでもなく中国人観光客の「爆買い」があったことは確かです。彼らが「爆買い」しなければ、こんなカラクリは成立しないからです。

実は、このニュースが各紙で報じられた昨日、ぼくはたまたま在日中国人の旅行手配業者の知り合いに会う約束になっていました。そのとき、当然この話が出たのですが、その業者によると、昨年末、ある中国系の免税店から各業者に一斉に通達があったそうです。その内容は「在留カードを持たない中国人ガイドが客を連れてきても、2016年1月1日からはコミッションは出さない」というものだったそうです。

彼らも今回の摘発を免れるための手を打っていたことがわかります。もっとも、それは「在留カード」の所持にすぎず、外国人に対してガイド業務を行う通訳案内士資格の有無ではありませんでした。各紙が報じる外国人の「就労」資格に関する判断は、単に「在留カード」があればすむことなのか、「通訳案内士」資格まで問うているのか、分かれているようにも読めます。

しかし、そんな通達は、急増する訪日中国人旅行市場の現状からいって、守られることなど到底、無理な話だったのです。

何はともあれ、パンドラの箱はついに開けられました。

はたして今回の摘発は、福岡以外の全国に波及するのか。そうなると、航空便で訪日する中国人ツアー全体に影響が出てくることが考えられます。

なぜなら、中国の訪日団体ツアーは、航空便利用の場合も、クルーズ同様、コミッションによるコスト補填で成り立っている状況は同じだからです。

だとすれば(あえてこんな言い方をしますが)今回の摘発以降、逮捕される危険を顧みず、ガイド業務を買って出る中国人がいなくなってしまえば、中国側の旅行会社ががいくら日本に客を送ってみたところで、ツアーが回せなくなってしまう可能性があるのです。

この摘発が、未曾有に拡大しつつあった訪日中国旅行市場にどんな影響を与えることになるのか。注視していきたいと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-03-05 14:43 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)


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