2016年 05月 17日

資格不要の有償ガイドを認めるなら、せめて登録制にすべき

今朝、ネットで以下の報道を知りました。ついに政府は資格不要の通訳ガイドを認める方向に動き出すようです。

訪日旅行市場の実態にまったく合わなくなった通訳案内士制度を改正する動きは、すでに何年も前から地ならしが進んでいたのですが、2000万人時代を迎えた今年はひとつの節目といえるのでしょう。

以下、記事を転載します。

人手不足で規制緩和 保育士比率下げ・ガイド通訳資格不要(日本経済新聞2016.5.17)
http://www.nikkei.com/article/DGXLZO02405380X10C16A5MM8000/


 政府は保育や観光の分野で深刻な人手不足の解消に向け、実態に合わなくなった規制の緩和に動く。国家戦略特区の公立保育所で正式な資格を持たない職員を雇いやすくするとともに、非正規で働く保育士の給料を引き上げる。観光では、国家資格がなくても有償で通訳ガイドをできるようにする。人手不足が日本経済の成長を妨げないように、人材確保に本腰を入れる。

 政府が19日に開く国家戦略特区諮問会議(議長・安倍晋三首相)や規制改革会議(議長・岡素之住友商事相談役)で方針を示す。関連法の改正案を早ければ7月の参院選後の臨時国会に出す。

 保育分野では大阪府が認可保育所の設置要件の緩和を求めている。府によると、保育所の職員の3分の2以上は有資格の保育士にしなければならない規定がある。府はこの比率を引き下げれば、公的な資格はなくても経験豊富な保育ママや子育て支援員も活用できるようになるとみている。

 政府は要望を認める代わりに、公立保育所で働く正規職員と非正規職員の待遇格差をできるだけ減らすように府側に促す方向だ。大阪市は非正規保育士の処遇改善を進めてきたが、年齢など条件をそろえると年収ベースで正規保育士の5割にとどまるとの試算もある。

 政府は非正規職員の賃金をめぐり、職種に限らず「正規職員の7~8割に早期に引き上げる」との目標を掲げる方針だ。特区内でもこの水準が目安になるとみられる。

保育士は都市部を中心に人手不足が深刻だ。東京都内では3月の保育士の有効求人倍率が5.45倍だった。大阪府の2014年1月時点の調査では8割の保育園が「5年前より保育士の確保が難しくなった」と答えた。待遇改善で非正規を含め人材を雇いやすくする。

 観光分野では、訪日外国人に観光案内をする通訳ガイドの規制を緩和する。現在は国家資格がないと有償でのガイドはできないが、資格がない人にも認める方針だ。5月末に閣議決定する規制改革実施計画に盛り込む。

 現在、報酬を得る観光案内の通訳は「通訳案内士」の資格を持つ人に限っている。資格がなくても観光ガイドとして報酬を得られるようにする。

 政府は訪日外国人客を20年までに今の2倍の4000万人に増やす目標を掲げる。一方、通訳案内士の数は約1万9000人にとどまり、訪日客のニーズに応えきれていないとの指摘が多い。

 日本に先行して通訳ガイドの規制を撤廃した韓国では、観光客が不当に高額料金を請求されるケースなどが発生している。団体客向けのサービスは資格保有者に限定するなどの規制強化に踏み切った。政府は海外の事例も参考に通訳の質を確保するための具体策の検討を進める。


この記事は、このところ国会でも話題となった保育士問題とからめて観光分野の規制緩和を報じています。通訳案内士の関係者からすれば当然いろんな意見や不満はあるのでしょうが、公平に見て時代の趨勢であり、有資格者たちはこれで職域を奪われるなどとネガティブには考えずに、高い語学力を活かし、現状をふまえた新しい仕事のあり方を模索していくべきだと個人的には思います。能力的にいって、無資格者のできる仕事は限られているからです。訪日市場の急拡大によって、語学力は十分ではなくても外国客を接遇しなければならない場面が増えたのです。本来、有資格者たちが取り組むべき世界は、もっと重要かつ高度な領域なのですから。もはや旅行会社からガイドの仕事をもらうだけの時代ではないのです。

実際、若い世代の通訳案内士たちは、すでに新しい仕事のスタイルを実践しています。

たとえば、以下の通訳案内士ユニットは、東京都内のユニークな建築案内に特化したガイド活動を始めています。

Showcase Tokyo Architecture Tour
http://showcase-tokyo.com
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こうした新しい動きは、主に英語の通訳案内士たちが取り組むケースが多いようです。資格不要の有償ガイドが認められた時代は、有資格者たちはテーマ性や特色のあるガイド内容で自ら仕事を取りにいく動きを進めていくべきでしょう。こういうユニット応援したいと思います。

もうひとつ大事なことは、日本のインバウンドの中身を大きく変えたアジア市場において、これまでグレーゾーンとなっていた、海外からツアー客に同行する添乗員や、国内でツアーに合流する在日アジア系ガイドたちの実態をきちんと把握するためにも、ガイドを登録制にすべきではないでしょうか。

彼らの中には、海外から日本に観光ビザで来て、滞在期間中、ツアーをいくつも請け負い、免税店からのコミッションもそうですが、さまざまな営業活動をしておきながら、確定申告もせず、そのまま帰国してしまう「スルーガイド」もいます。また今後規制緩和される通訳案内士資格の有無はともかく、就労資格のないのにガイドを務める輩もいるからです。

今回の規制緩和は、要するに現状追認にすぎないわけですが、彼らの存在を本当に法的に認めていいのか。せめて登録制にして違反者を減らし、市場の実態をつかむことができなければ、監督官庁としては無責任すぎると思うからです。九州の中国発クルーズ客の上陸観光ガイドの就労資格をめぐる問題はいまだ解決できていないですし。

中国人不法ガイドが摘発された背景にあるものは? 訪日旅行市場に与える影響は?(2016年3月9日)
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/IB-BU/030800008/

通訳ガイドをめぐる問題については、以下の論考も参考にしてください。

通訳ガイド問題の解決の糸口は?
訪日客が増えて問題続出
http://www.yamatogokoro.jp/report/2016/report_23.html

「通訳案内士制度のあり方に関する検討会」って何?
http://inbound.exblog.jp/24445622/

メディアは「通訳案内士」問題をどう報じてきたか
http://inbound.exblog.jp/24446629/

通訳案内士になるには? 適性は?
http://inbound.exblog.jp/24449064/

通訳ガイドの働き方、海外ではどうなのか?
http://inbound.exblog.jp/24450294/

海外の観光ガイドサービスのモデルを日本に持ち込もう
http://inbound.exblog.jp/24460875/

通訳案内士制度をめぐる議論がかみ合わないのはなぜか
http://inbound.exblog.jp/24463450/

無資格ガイド問題とは何か?
http://inbound.exblog.jp/24472149/

訪日旅行市場最大の中国語通訳案内士の現場は大変なことになっていた
http://inbound.exblog.jp/24486566/

中国語通訳案内士を稼げる職業にするための垂直統合モデル
http://inbound.exblog.jp/24489096/
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by sanyo-kansatu | 2016-05-17 12:55 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)


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