ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2016年 10月 12日

これ、嫌なニュースだな。ゲストハウスでバイトした旅行者を逮捕

これも、最近ちょっと増えてきたインバウンドがらみの報道のひとつ。嫌なニュースですね。

宿泊料代わりに働いた疑い 外国人観光客2人逮捕 札幌(朝日新聞2016年10月11日)
http://www.asahi.com/articles/ASJBC5W6YJBCIIPE02G.html

札幌市内のホステル(宿泊施設)で働く代わりに無料で宿泊したとして、北海道警は11日、観光客のマレーシア人の女(30)と中国人の女(19)を出入国管理法違反(資格外活動)の疑いで現行犯逮捕した。また、女2人に不法就労させたとして、道警は、ホステルの運営会社「万両」(東京都台東区)の社長の男(45)やホステル責任者の女(34)ら3人を同法違反(不法就労助長)の疑いで逮捕する方針。

道警によると、2人は11日午前、同市中央区の「カオサン札幌ファミリーホステル」で宿泊料2千円をそれぞれ免除される代わりに、無資格で館内の清掃やベッドメイキングなどをした疑いがある。2人は容疑を認め、「観光ビザで働けないと分かっていたが、現金をもらっておらず大丈夫だと思った」などと供述しているという。

同社は主に外国人向けのホステルやゲストハウスを東京や大阪など6都道府県で計13店展開。ホームページに「就労資格がなくても清掃などに従事すれば無料で宿泊できる」との内容を英語で掲載しており、道警は組織的な犯行とみている。

札幌市によると、昨年度に市内で宿泊した外国人は191万8千人で、過去最多を記録。中国、台湾、韓国などアジアの客が多くを占める。北海道労働局によると、今年8月のホテル従業員らの有効求人倍率は2・63倍と全体の1・07倍を大きく上回り、人手不足の状態となっている。


この報道をネットで知って、最初に思ったのは、誰がふたりをチクったのだろうか、ということです。

すごく不愉快な感じがします。だって、これを不法就労などと言い出せば(まあ実際はそうなのかもしれませんけれど)、もっと悪質な不法就労をこれだけほっておいて、弱いものいじめはやめろよ、と言いたくなります。

例の免税店から中国人観光客の買い物の売上に応じてもらったマージンを所得申告しなかった不法ガイド(最近は国税局も調べ始めているようで、年間数千万円という人もいます)なんて、もう数え切れないほどいるのに、そちらは「実態を把握できていない」と頬かむりをしておいて、わずか1日2000円のドミトリー代金(1部屋にベッドがいくつも並んでいる部屋の料金)のことで不法就労とは……。

金額の問題ではないと言う人もいるでしょうが、このふたりが2000円を現金で支給されていたわけでもなければ、そもそもお金に困っていたとは思えません。彼らはかつて1990年代にいた不法就労者とは違い、いわばレジャー消費者なのです。いまどき不法就労する外国人は、ゲストハウスになんかいません。なんと時代の変化に鈍感すぎることか。やはり法の使い方が間違っている、いや下手すぎるのではないでしょうか。

マレーシア人は2013年7月以降、3ヵ月以内の滞在に限り、観光ビザが免除されています。また中国人には、2010年以降、個人観光ビザが発給されるようになり、昨年1月よりビザの種類によって15日から90日間の滞在が認められています。

マレーシア国民に対するビザ免除(外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press6_000362.html
中国団体観光・個人観光ビザ (外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/visa/topics/china.html

詳しい事情は知らないのでこれ以上本当は何も言えないのですが、今回いきなり逮捕の前に、いくつかの段階をふんで執行に至ったのかもしれません。執行に至る前に不法就労に当たることを口頭で知らせ、やめさせればすむことだったのに、そうならなかった理由があるのでは(そう信じたいです)。その理由いかんかとは思いますが(たとえばの話ですが、このゲストハウス経営者が警察に対してやたらと反抗的な態度を取り続けたとか。で、くだらない警察の面子が適正な判断より優先された? ちょっとテレビドラマの観すぎかな)、もしそうでないのなら、ここまでやる必要はなかったでしょう。それとも、やっぱりこのゲストハウスの存在を快く思わない誰かが密告した?

昔、友人の作家、岡崎大五さんがトルコのイスタンブールの絨毯屋兼ゲストハウスで、住み込みアルバイトをしていたことを思い出します。もちろん、彼は就労ビザなど持っていたはずがありません(こんなところで話を持ち出してすいませんねえ)。

1980年代の「第三世界(当時、アジアやアフリカ、中南米のことはそう呼ばれていました)」ことで、今日の世界情勢とはまったく違うのんきな話をしても仕方がないかもしれませんが、いつの時代も、ゲストハウスで繰り広げられるような浮世離れした世界があっていいとぼくは思います。彼らは旅空の下にいるのです。一生そんなことをするつもりもないのです。もちろん、若い人はときに羽目をはずすこともあるでしょう。でも、そんなことは、程度問題で、若い頃に同じような経験をしたはずの大人がどこかで判断を示せばいいはずです。いまの大人はそういう意味での判断力が低下している気がします。

同記事では、まるでエクスキューズのように、札幌のホテル業界の人材不足について触れていますが、どこまでこの件に関係があるのでしょうか。言外に、今回の逮捕はやりすぎと言いたいのでしょうか。

この問題を「今日の日本社会の寛容さの欠如」などといった一般論でどうこう言いたくはありませんが、ゲストハウスのような世界がいまの社会でどう受けとめられているのか、そして、どういう事情でこんなことが起きたのか知りたく思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-10-12 08:53 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)


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