ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2016年 11月 08日

韓国の若者は日本食が好きらしい。「牛かつ もと村 渋谷店」の行列に並んでみた

先週の水曜の午後、友人の案内で渋谷の牛かつ店に行きました。なんでも外国人観光客の行列ができていることで有名なんだそうです。

午後1時、JR渋谷駅東口から明治通りに沿って恵比寿方面に向かってすぐを右手に曲がると、30人近い行列ができていました。ざっと見た感じ、確かに外国客が多いようでした。

そこは「牛かつ もと村」という店です。
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牛かつ もと村渋谷店(食べログ)
https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13153853/
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牛かつというのは、豚カツ同様に牛肉を衣に包んで揚げた料理で、ぼくはよく知らなかったのですが、ネットをみると、ここ以外にもいろいろあるんですね。
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この店はわずか9席しかないので、結局、1時間半も並んでしまいました。これは誰かと一緒でないときついですね。その日は休日だったので、日本人も多かったけど、店員さんに聞くと、ふだんは半分以上が外国人だそうです。特に多いのが韓国人だとか。その日の列には東南アジア系の人たちもいました。
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たまたまぼくの列の後ろに韓国人の若いカップルがいたので、「どうしてこの店知ってるの?」と聞くと、韓国の旅行サイトで評判なんだそうです。彼女がスマホで実際にみせてくれたのが、以下のサイトです。
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naver
http://section.blog.naver.com/

ソウル在住のフォトライターの堀田奈穂 さんによると「naverは韓国で最も多く利用されているまとめサイトです。naver blogについては、IDを持っているとさらに詳しく見たり、コメントのやりとりが出来たり」するそうです。

韓国からもブロガーたちが日本を訪れ、情報発信しているんですね。

別の韓国在住の日本人は言います。「日本旅行を専門にするブロガーもいますが、最近ではテレビ番組で海外のグルメ旅行が流行っています。海外グルメ旅行が主なコンテンツとするこんなサイトもあります」。

牛かつ もと村渋谷店を紹介するページ 
http://choys0723.blog.me/220802039236

外観から店内、料理まで細かに写真がアップされています。特にこの店の特徴であるレアなカツの断面を見せたり、石板でレア面を焼いているカットなど、ここで体験できるほぼすべてのことが写真で公開されています。これを見ると、自分も行ってみたい、やってみたいという気になるのではないでしょうか。いったん揚げたカツを自分の好みに合わせてさらに焼くというひと手間が、他の店では体験できないことかもしれません。
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それにしても、韓国の人はそんなに日本料理が好きだったのでしょうか? 中華圏にはよく行くわりには韓国にはトランジットを除くと20年近く足を運んでいないため、そのへんがぼくにはよくわかりません。

前述の堀田さんは言います。「韓国では日本食は単なるブームというよりは、定着に近い気がしますね。うどん、ラーメン、ハンバーグ、焼き鳥、いろいろあります。日本のビールもコンビニで手軽に買えます。ブログ全般について言えることは、お金をもらって書くパワーブロガーが書いたものとは違う、完全に個人の経験によるブログを見て、飲食店や旅行先の情報収集を得るのが最近の主流のようです」。

なるほど。韓国では日本食は定着しているのですね。台湾人の鄭世彬さんも言っていましたが、宣伝臭の漂うプロのブロガーではなく、一般の個人客の体験を載せたブログのほうが韓国でも好感度が高いようです。それだけ韓国でも日本への個人旅行化が進んでいるのでしょう。

韓国における日本食の定着ぶりについては、コリアン・フード・コラムニストの八田靖史さんが今春上梓した『食の日韓論』(三五館)に詳しく書かれています。いま韓国では、日本の外食チェーンが驚くほど出店しているようです。

八田靖史さん「韓食生活」
http://www.kansyoku-life.com/

また同書によると、韓国では昔から豚カツも人気なんだそうです。

しかし、素朴な疑問があります。日本を団体旅行する韓国人を乗せたバスの運転手さんに聞くと、韓国の人はトウガラシを持参して日本に来るといいます。日本の料理は刺激がないからだそうです。ぼく自身は、韓国料理はトウガラシが多く使われるところがよくもあり、また苦手でもあるという感じ。韓国で日本食が定着したという理由がいまひとつよくわからないのです。トウガラシがなくても彼らはおいしいと感じているのでしょうか。それとも世代の差もあり、若い人ほどそうなのでしょうか。

堀田さんはこう答えてくれました。「ご存じとは思いますが、トウガラシを朝鮮半島に広めたのは日本であり、元々辛い物ばかり食べていたわけでは決してないんですよね。とんかつ、おでん、うどんなどは日本の統治時代からの流れでしょう。近年では、諸外国の食べ物が東京のようにソウルや都心部で食べられるようになり、留学や渡航経験のある若者の影響などもあってか、本当にいろいろなものを食べていますよ。テレビ番組やインターネットの情報も大きいでしょう。

いまやデパ地下も東京のデパ地下と遜色ないですね。私の見解ですが、韓国人の大好きなチャジャン麺は辛くないですし、そのあたりは日本人と同様で、辛い物は辛い物として食べるし、辛くないものはそのまま食べる、という感じだと思います。トウガラシを持って海外へ行くのも全員ではないでしょうし、他国の食文化を楽しむ傾向にあると思います。日本人も昔は今よりも醤油を持って渡航した人は多いのではないでしょうか」(以下、「 」は堀田さん)。

なるほど。確かに、我々は外国人だから韓国料理=トウガラシというイメージを持っているけれど、韓国でも日本同様、食の多様化が進み、「辛い物は辛い物として食べるし、辛くないものはそのまま食べる」ということなんですね。

「昔は外国の情報もほとんどなかったですし、どんな料理かも、食べ方も何も知らなかっただけでしょう。日本人も何でも醤油をかけるわけではないですしね。逆に、あらゆるものにタバスコをかけるという日本人をFBで見かけました。そうなると、単に個人の趣向になるのでしょうかね?(笑) タイでも辛い物が苦手な若い世代もいると数年前から言われていますよね。沖縄でも泡盛離れがあると聞きます」

確かに、中国でも上海などの経済先進都市では、日本食のチェーンがたくさんあります。ラーメンも一風堂、丸亀製麺、ココイチもサイゼリアもあります。やはり若い世代を中心にアジアの都市では食の多様化が進んでいるといってよさそうですね。

あともうひとつ思ったのは、外国客で行列のできる「牛かつもと村」や「一蘭ラーメン」の共通点として、一品しかメニューがないことです。肉の量やトッピングだけしか選択肢がない専門店。韓国の事情はよくわからないのですが、中国やタイでは一般にこの種の店は流行りません。いろいろ食べられることが大事で、味せんラーメンでもココイチでも、冷奴や焼きとり、ししゃもまでメニューにあります。レストランには家族や友人などで行くことが多く、カレーを食べたい人もいればパスタを食べたい人もいるというわけで、専門店は避けられてしまうのです。でも、韓国は日本と同じで専門店があるようですね。

「韓国は昔と違って個食が広がっています。昔、日本のチェーン店(吉野家など)が失敗したのは、個食文化がほぼないことを軽視した点もあったでしょう。今は核家族化も進み、時代が変わりました。今は諸外国を受け入れる(特に美味しいものは)段階に入っています。あっという間に日本と同じようなレベルになったのは、この国の持つ何に対してでも速いスピードからだと思います」。

個食文化はまさに上海でもそうです。若いOLがひとりで外食チェーンで食事をするという光景は普通に見られるようになり、日本と同じ定食メニューの店も増えています。

堀田さん、ありがとうございました。あなたとのチャットで、個食も含めたアジアの食の多様化が見えてきました。外国客、特にアジア客で行列のできる店の背景には、当然のこととしてSNSの存在があるとともに、各国都市での食の多様化があるといえそうです。

きっと彼らは自分の国にはまだ出店していない外食チェーンや日本食の流行を見つけて面白がっているのに違いありません。そういや、すでにソウルには牛かつ店はあるそうです。韓国は、台湾同様、日本食の浸透が進んでいるのですね。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-08 10:56 | 東京インバウンド・スポット | Comments(0)


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