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ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2016年 11月 09日

一蘭ラーメンに外国客の行列ができる3つの理由

外国客で行列のできる店といえば、広く知られているのが一蘭ラーメンでしょう。

ぼくも以前一度池袋店に行ったことがありますが、「天然とんこつラーメン」のみの一品メニュー、「味集中カウンター」と名づけられた隣の客との仕切り壁と厨房との間にすだれを下げるという個室食空間、スープの味の濃さやこってり度、麺のかたさなどの7項目を事前に書かせる「オーダーシステム」など、独自のシステムが導入された同店は、確かに外国客でにぎわっていました。

外国客に人気と噂の一蘭ラーメン池袋店に行ってみた
http://inbound.exblog.jp/24938081/

それにしても、一蘭ラーメンにはいつ頃からどんな理由で外国客が行列するようになったのでしょうか?

そこで、同店の広報・宣伝担当の三浦卓さんに話を聞くことにしました。
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今回訪ねたのは、新宿3丁目店です。まず店内紹介から。

これが入口にある外国語表記の食券販売機。
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この日は、平日の正午過ぎで、日本人もいましたが、やはりアジア客が多く、白人の女の子や黒人男性なども並んでいました。
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空席がひと目でわかる「空席案内板」があります。これもこの店独自のシステムですね。
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仕切り壁に隔てられ、各々ラーメンに向き合う独特の空間です。
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これが「味集中カウンター」。テーブルにオーダー用紙が置かれています。
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日本語以外は、英語、中国語(繁体字)、ハングルが用意されています。
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これが創業以来変わらない「天然とんこつラーメン」。
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店内にはインスタグラムへの投稿を呼びかけるプレートが置かれていました。
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以下、三浦さんとの一問一答です。

-いつ頃から外国客が現れるようになったのか。そのきっかけは何だったのか。

「実はいつ頃からとははっきり言えないのですが、特に増えたのは3~4年前からです。やはり口コミで広がっている感じで、フェイスブックやインスタグラム、微信などのSNSによるものだと思います。

もっとも、すでに10年以上前から外国客は、いまほどでなくてもいました。またこれはいまでもそうですが、全国に62店舗営業しているうち、すべての店に外国客が来ているのではなく、渋谷や新宿、池袋、浅草などの外国人観光客の多い特定の店に限られます。たとえば、渋谷駅に近い渋谷店は行列ができるほど多い一方、スペイン坂店には少ないんです。これもSNSの影響だと思われます」。

-どんな国の人たちがよく訪れているのか。味の好みに違いはあるか。人気の理由は何だとお考えか。

「やはり多いのは、中国や台湾、香港、東南アジアの方ですが、最近は欧米の方も増えています。当店のとんこつスープには臭みがないので、欧米の方にも親しんでいただけると思っています。また替え玉という博多ラーメン特有のサービスが体験できることも魅力かと。また中国の方はやわらかめな面がお好みという印象もあります。

何よりラーメンが日本食の一ジャンルとして定着したことが大きいと考えています。つまり、日本に来たら、すしやてんぷら、鉄板焼きを食べるのと同じようにラーメンも体験したいと多くの外国客が考えているからだと思っています」。

-一蘭ラーメンに外国客の行列ができる理由はズバリ、何だとお考えですか。

「3つあると考えています。まず、SNSで「イイネ」が海外に拡散されたこと。これがご来店の最大の動機になっていると思います。

ふたつめは、創業以来変わらないとんこつラーメンの味への支持です。

3つめは、食券購入から、独自のオーダー記入用紙、仕切り壁の食空間という独自のシステムを体験してみたいということではないかと思っています」。

三浦さんによると、同店独自のオーダーシステムや仕切り壁などは、1993年に同店が法人化し、福岡でチェーン展開を始めた当初から導入されていたといいます。女性でもひとりでラーメンを食べられるようにという配慮があったそうです。

7項目のオーダー用紙でスープの味やこさ、特性ダレの量、麺のかたさなどを自分で選べるしくみが面白いと思うのは、タイなどアジアの屋台で麺を食べるとき、たいてい麺の種類を選べるのと同時に、唐辛子入りナンプラー(プリック・ナンプラー)、唐辛子(プリックポン)、唐辛子入り酢(プリック・ナムソム)、砂糖(ナムタン)の4種類がテーブルに用意されていて、自分の好みで調合してから食べるという習慣に似ていることです。

日本のラーメンは一般的に、その店の味をありがたく、そのままいただくという感じが多いのに対し、一蘭はアジア的というべきか、自分で味の好みを決められるというしくみが外国客、特にアジア客に支持されているのではないか、という気がします。

-今後の展望はどうお考えか。

「一部の店舗に外国客が増えているといっても、大半の店は日本人のお客様がメインです。これまでは基本的に都市の繁華街の雑居ビルにビルトインという店舗が多かったのですが、今後は千葉県のロードサイド店を開業しますし、10月19日にはニューヨーク店も開業しました。今月17日には中野店も開業します。中野はサブカルの町として外国人にも知られるようになっていますから、楽しみです。

ラーメンという日本独自の文化をいかにつきつめるか。いかにブランドとして維持できるかに、今後も注力していくつもりです」。

一蘭ラーメン
http://www.ichiran.co.jp

三浦さんの話を聞きながら、あらためて「ラーメンが日本食の一ジャンルとして定着」したことを実感しました。では、それはいつ頃から定着し始めたのでしょうか。

ぼくの友人に、台湾や香港で日本スタイルの現地情報誌の立ち上げに尽力した鈴木夕未さんという編集者がいます。彼女によると、当初は日本と同じように、現地のグルメ情報などを発信していたが、2010年頃から日本旅行のための情報誌を創刊するようになったといいます。

その特集記事に、日本のラーメン特集が人気企画としてよく取り上げられたといいます。

以下は、2015年の香港ウォーカーのラーメン特集の冒頭ページです。彼女によると、日本の編集サイドの協力とともに、香港のグルメ達人などが日本を取材して店選びをしたそうです。
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実は、前回このブログで書いた池袋の「無敵家」の関係者によると、取材を受けた覚えはないのだが、2000年代の半ば頃、台湾に行ったとき、現地の雑誌で同店が紹介されているのを見たそうです。つまり、SNSが普及するずっと前から、台湾や香港などでは、日本のラーメン店が紙媒体で紹介されるようになっていたのです。

行列を体験として楽しむアジア客たち~池袋「無敵家」に並んでみてわかったこと
http://inbound.exblog.jp/26363800/

面白いのは、その特集記事に「ラーメン分析アイコン」なる項目があって、紹介する各店ごとに、麺の太さや形、量、ベースとなる味(醤油、とんこつ、魚介など)、濃さなどが記されていることです。
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これは日本の情報誌が昔からやっていたことで、こういう下地が現地情報誌にあったことは、一蘭ラーメンのオーダー用紙に台湾や香港の人たちが慣れていた理由といえそうです。こういう用紙に自分の好みを書き込むことも、体験として面白がられているのだと思います。
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by sanyo-kansatu | 2016-11-09 10:39 | 東京インバウンド・スポット


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