ニッポンのインバウンド“参与観察”日誌

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2016年 12月 16日

中国クルーズ客の失踪と不法就労摘発報道 なぜ彼らはそこまでやるのか

今日の午後、上海在住の友人が以下のニュースをメールで教えてくれました。

中国クルーズ客の失踪と不法就労摘発報道です。これは、いわばクルーズ市場の制度の裏をついた密入国です。なにしろ、クルーズ客には、観光ビザは不要だからです。

クルーズ客 上陸後帰船せず不法就労 入国審査簡略化あだ(毎日新聞2016年12月16日)
http://mainichi.jp/articles/20161216/k00/00e/040/250000c

クルーズ船客を対象に入国審査を簡略化した「船舶観光上陸許可」を使って来日した外国人客が、寄港中に相次いで失踪していることが法務省入国管理局への取材で分かった。2015年の制度導入以降、今年11月末までに全国で53人に上り、大半が中国人だった。半数近くは今も行方不明で、国内に滞在し働いている疑いがある。兵庫県警が11月に不法残留の中国人を逮捕すると、就労をあっせんするブローカーの存在や入国審査の甘さを突かれた背景が浮かび上がった。

兵庫県篠山市の山あいにあるキノコ園。11月下旬、県警の捜査員らが家宅捜索に入ると、中国人の男女15人が働いていた。県警は在留期間が過ぎていた7人を出入国管理法違反(不法残留)の疑いで現行犯逮捕した。

捜査関係者によると、うち男2人組と夫婦の計4人はそれぞれ中国からクルーズ船で来日。船舶許可による在留期間は2日間だけで、寄港した博多港(福岡市)で姿を消していた。

10月17日に上陸した山東省の男(34)は「船に乗り遅れ、途方に暮れていたら声をかけられた」と弁明したが、一緒に来た男(53)は「仕事をするため船で来た」と就労目的を認めた。ブローカーの手引きで車に乗せられ、港から480キロ離れたキノコ園にたどり着いたという。

11月4日に入国した遼寧省の夫婦は中国版ツイッター「微博」を使って船上でブローカーと連絡を取り、働き口を見つけたという。JR新大阪駅で関係者と合流したとみられ、妻(36)は「子どもの学費を短期間で稼ぎたかった」と供述した。

関係者によると、キノコ園はここ数年で何度も経営者が代わり、最近は休業しているように見えたという。近くの男性は「見慣れない車が出入りし、不審だった」と話す。

中国人らはプレハブ小屋で共同生活し、月給18万円でシイタケ栽培の作業をしていた。中はベニヤ板で仕切られただけの個室で、食事は自炊。ほとんど外出できず、1日12時間以上の労働が常態化していたという。

県警と入管当局は、園の経営者や中国人とみられるブローカーの捜査も進めている。捜査関係者は「就労目的で、審査が甘いクルーズ船を狙ったのだろう。今後も警戒が必要だ」と話す。【矢澤秀範】

大半が中国人、2年で53人

クルーズ船の乗客を対象にした船舶観光上陸許可は、インバウンド(訪日外国人)の増加を目指して2015年1月に導入された。入国審査が大幅短縮され、利用する外国人客が激増している。

船舶許可による上陸はビザが不要で、1寄港地につき最長7日の滞在が認められる。出入国記録の記入も簡略化された。顔写真の撮影も省略され、手続きは1時間ほど短くなった。

クルーズ船の訪日客は14年は約41万人だったが、船舶許可の制度ができた15年は3倍近い約111万人に。今年は既に160万人を超えている。寄港地では乗客がバスや電車で自由に観光に出かけるため、集合時間に現れず姿を消す客が後を絶たない。

入国管理局などによると、船舶許可を受けて失踪した外国人は15年が21人、今年は11月までで32人に上る。博多港(福岡市)や長崎港(長崎市)などからの入国が多いという。

うち27人は国内で見つかり、強制退去になった。観光中に規定の日数を超え、自身で帰国手続きを取った例もあったが、行方が分からないままの外国人も多い。

入管は「クルーズ船の運航会社には入念な乗客の管理を求める。厳格に手続きし、警察当局と協力して不法残留の摘発にあたりたい」としている。


同じことは、朝日でも報じています。

クルーズ船で入国、中国人は姿を消した キノコ園に潜伏(朝日新聞2016年12月16日)
http://www.asahi.com/articles/photo/AS20161215004491.html

すでに9月下旬に読売新聞が「クルーズ船訪日客の失踪、福岡・長崎で計34人」(読売新聞2016年9月26日)と報じていたので、失踪者が摘発されるのは時間の問題かと思っていました。

中国事情についてある程度、精通している人なら、いまの中国、こんなことが起きてもなんら不思議はないと感じることでしょう。ぼく自身も、頭ではそう思いはするものの、なぜ彼らはそこまでやるのか、理解を超えたところがあります。

中国には、自分の住む村にいても、このままでは一生うだつが上がらない。だったら、密入国してでも金を稼いでやろう…。このように考える人間がいるのでしょう。このニュースを教えてくれた上海の友人も「いまの中国は、制度の網の目をかいくぐってでも、人を出し抜こうとする競争社会。この人たちも、まさにそういうことなんですかねえ」とぼやいていました。

興味深いのは、不法就労する彼らがスマホを手にして中国版SNSのWeChat(微信)で日本国内のブローカーたちと船上で連絡を取っていたことです。不法就労が多発した1990年代とは、通信事情という面でも隔世の感があります。もっとも、それが可能となるのは、在日華人という受け皿があるからです。

中国側の旅行会社は、今回のような失踪者を出すと、ペナルティとして一定期間、日本への送客ができなくなるはずですが、失踪予備軍からすれば、そこがダメなら別の会社に手配を頼めばすむことなので、この問題がすぐになくなるとは思えません。

もっとも、日本を訪れる大半の中国人観光客は、彼らのことをとんでもないヤツだと、まるで人ごとのように罵ることでしょう。彼らの存在が中国の足を引っ張っていることは確かだからです。しかし、自分とはまったく関係ない存在とみなすだけで、自らの属する社会の問題とは考えたがらないのが、たいていの中国人です。

先日も、ある在日上海人が大学時代の友人が日本に遊びに来たので、車で岐阜県の白川郷を案内した話を聞かせてくれました。彼によれば「友人たちは富裕層。金はいくらでもある。1年に2~3回は日本に来る。好きなときにいつでも来られるのは、2015年1月以降、取得要件が緩和された個人マルチビザのおかげだ」と言います。

その話を聞きながら、ぼくは思いました。2009年、中国で大ヒットしたラブコメ映画『非誠匆擾』(邦題「狙った恋の落とし方」)の世界を、いまの上海の富裕層なら誰でも実現できるようになったのだなと。

この映画では、主人公の中年男性が北海道を彼女と訪ね、日本在住の中国人の友人に運転させた車で道東を中心に旅するストーリーでした。

その一方、不法就労目的でクルーズ客船に乗って訪日する輩もいる。全体からみれば、わずかな人たちとはいえ、中国ではこの種のことが必ず起きてしまい、それを誰も止めることはできないようです。
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by sanyo-kansatu | 2016-12-16 15:15 | 気まぐれインバウンドNews | Comments(0)


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